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第72話 限界値

「サラ! 大丈夫か?」

 俺は本隊と戦うサラの傍につく。


「ヒデオ。もう向こうは良いのか?」

 そう言いながら、サラは素早く剣を振り下ろし、襲ってきたゴブリンを2匹両断する。


「あぁ、何とか倒したぞ。」

 俺も後ろから襲ってきたゴブリンを横薙ぎに切る。


『経験値を30pt獲得しました。』


「そうか。あの爆発はおまえの仕業か?」


「魔法をちょっとね……。」


「ちょっとじゃなかった気がするがな。」


 サラが戦っているところまで俺が来たときには、既に100匹くらいサラが倒していた。辺りにはゴブリンの死屍が累々と転がっている。


「ゴブリンばかりか?」


「どうやら、ゴブリンロードが率いる軍勢のようだ。」

 そう言ってサラは本隊の奥に目をやる。


 目線の先には、杖を持ったゴブリンに守られるように、一際躰の大きなゴブリンがいた。


「ゴブリンロードに、あれはゴブリンシャーマンか? 2人でこれだけの数をやるのは結構骨が折れるな。」


「できなくはないが、時間がかかりそうだな。」

 会話をしていてもゴブリンは構わず襲いかかってくる。俺とサラは、それを剣で薙ぎ払いながら話を続ける。


『経験値を60pt獲得しました。』


 次の瞬間、サラの闘気が増大したかと思うと大きく剣を横薙ぎに払う。


「ハッッ!!」


 すると、その衝撃波は風の刃となり(くう)を駆け抜けると、目の前にいたゴブリンたちが一気に両断される。その数ざっと数えても10匹はくだらない。


「すげえな、それ。」

 サラと出会った時もこの技を出していたな。間近で見ると凄い迫力だ。と言うより凄まじい威力だな。


「ヒデオもこれぐらいはできるだろ?」


「いや流石にそれはまだ無理だわ。」


「私は右半分を倒す。ヒデオは左を頼む。」

 そう言うとサラは右の方へ駆けだし、迫り来るゴブリンを軒並み斬り付けながら行ってしまった。


 これだけの数がいたら、俺の場合1人じゃ難しいよ。2人で共闘するって考えはないのかね、あの人には。そう考えている間もゴブリンは襲いかかってくる。

 俺は、各個に対応しながら剣を振るう。


『経験値を90pt獲得しました。』

 3匹倒したが、直ぐに次のゴブリンが襲いかかってくる。


『経験値を30pt獲得しました。』


「くそっ! やっぱり1人じゃあ、埒があかないじゃないか!」


 サラみたいに何とか一遍に倒す方法はないのかな。そんなことを考えながら目の前のゴブリンに対応していると、後ろから斬りかかってくる気配がした。


 俺は目の前にいるゴブリンを逆袈裟懸けに斬り上げた後、そのまま振り返りざまにゴブリンの手首を掴み転がそうと動く。やばい、間に合わない! そう感じた刹那、俺の手から30cm位の火球が放たれた。


 その火球は、目の前に迫っていたゴブリンを巻き込みながら爆発する。その爆発でゴブリンは爆ぜる。しかし、爆発の勢いはお構いなしに俺をも巻き込む。


俺は必死に後ろに飛び退こうとしたが間に合わず、そのまま後ろに吹き飛ばされた。


『経験値を60pt獲得しました。』


『条件を満たした為

 スキル『火炎耐性』を取得しました。』


『条件を満たした為

 スキル『苦痛耐性』が Lv.4になりました。』


『条件を満たした為

 スキル『傷病回復』が Lv.4になりました。』


『条件を満たした為

 スキル『体力回復』が Lv.4になりました。』


 マジか。自分のファイヤーボールに巻き込まれるなんて格好悪いな。

 にしても、今のは出すつもりもなかったのに勝手に出たぞ。


 まぁ、そもそも無詠唱で魔法は出せるところを、何となく勢いを付けるために技の名前を言ってただけだから、無意識で出たとしても不思議ではないんだけどな。


 それにしても、こんな僅かの間で魔法を発動できるんだったら、イメージを高めるための時間を稼がなくても大丈夫そうだな。自分が巻き込まれない程度の距離は取らないとだけど……。


 それからの俺はファイヤーボールと剣術を併用しながらゴブリンを倒していく。


 まずはファイヤーボールで先制する。


『経験値を210pt獲得しました。』


 その後、爆発が収まる前に縮地で残っているゴブリンに迫ると剣を使ってゴブリンを切り裂く。


『経験値を90pt獲得しました。』


『条件を満たした為

 スキル『電光石火』が Lv.4になりました。』


 悪くない戦法だな。適度に間合いもとれるし、爆発が煙幕代わりになってゴブリンも戦いづらそうだ。


「この調子でガンガンいこうか!」


 ファイヤーボールを打ち込む!

『経験値を240pt獲得しました。』


 間合いを詰めて、斬る! 斬る! 斬る!

『経験値を90pt獲得しました。』


 何かノッテきたぞ! 今ならなんだか行けそうな気がする〜。

 俺は、サラをまねて闘気を纏うと、気を剣に込めて斬擊を放つ。


「ハァーーー!!」


 躰を回転させながら横薙ぎに剣を振るう。青龍の剣は碧く輝き、その刀身から衝撃波を生む。

 衝撃波がゴブリンたちに激しく襲いかかる。


「Gobuuuuuu!!」

 ゴブリンたちは、なぎ倒されると後ろに吹き飛び、地面に打ちつけられる。


「衝撃波は出るけど、切れるほどではないか。まだまだって事だな。」

 衝撃波でゴブリンをなぎ倒すことはできたが、サラのようにゴブリンを両断することはできなかった。


「ファイヤーボール!」

 俺は、倒れているゴブリンたちめがけてファイヤーボールを打ち込む。


『経験値を300pt獲得しました。』


『レベル8になりました。』


 起き上がる前に止めを刺しておかないとな。


 結構倒したかな? 周りを見てみると、ゴブリンがかなり少なくなっていた。


 サラの方を見ると、もうほとんどのゴブリンを倒している。流石だな。こっちはまだ半分くらい残ってるって言うのに。


 残りはゴブリンロードの周りに集まっている奴らがほとんどか。残り約50匹。ダメ元でやってみるか。俺は先程試した魔法を、ここでも試してみることにした。


 青龍の剣を腰に戻すと、炎の矢をイメージする。あんまり無駄球は打ちたくないな。できれば一撃必中が望ましい。狙いを上手くつけられないかな。

 俺は、今一度ゴブリンたちを見やる。


『条件を満たした為

 スキル『空間把握』が Lv.2になりました。』

 

 都合良く、スキル『空間把握』のレベルが上がる。ゴブリンの位置をもっと良く分かる方法……。


「地図?」

 頭の中に言葉が閃く。そうか……地図検索が使えるかもだな。俺は地図を開きゴブリンを検索してみる。すると、地図上に赤い点があった。きっとこれがゴブリンだな。マーカーって使えるのかな。


『条件を満たした為

 スキル『地図探索』が Lv.2になりました。』


 これまた、都合良くレベルが上がる。流石は女神様お墨付きのアゲアゲ設定だな。

 イメージするとゴブリンの赤い点にマーカーが次々と打たれていく。きっとこれで命中率が上がるだろう。確信はないがそんな気がする。


 俺は地図を閉じると、顕れる矢のイメージを強くする。今回は火力よりも速さを意識しよう。

 すると、頭上10mくらいに炎の矢が顕現された。数は念のため50本より多めに創った……つもりだ。ゴブリンたちはまだ頭上の矢には気付いていない。


「よし。ファイヤーアロー!」

 俺は、腕を振り下ろしながら叫ぶ。


 矢が次々とゴブリンたちに降り注ぐ。 


 シュバッ! シュバッ!! シュバッ!!! シュバッ!!!!

 スガン! スガン!! ズガン!!! ズガガーン!!!!

 

 前回よりも火力は少なめだが、その分スピードが速い。火炎の矢はゴブリンたちを貫き爆発を起こしていく。


『経験値を1290pt獲得しました。』


『レベル9になりました。』


『レベル10になりました。』


『Dランクになりました。』


「我ながら凄いな!」

 その様子を見ながら思わずそう呟いた。周りにいたゴブリンたちはほぼ全滅だ。


 奥にいたゴブリンシャーマンは、どうやら防御魔法を張ったようだ。防御魔法に守られていたゴブリンシャーマンとゴブリンロード。あと、何匹か討ち漏らした奴らがいるが、この程度なら容易く倒せるだろう。

 右を見ると、サラもこちらに向かってきている。


「よし。今なら行けるな!」


 俺は、剣を抜くと一気に間を詰めるべく奴らの所に向けて瞬間的に移動する。


『条件を満たした為

 スキル『瞬間移動』が Lv.3になりました。』


「ハアアアアアッ!!」


 ゴブリンシャーマンの前に出た俺は、まだ剣先が届かない距離にも拘わらず渾身の気を込めて横なぎに剣を払う。


 シュパツッ!!


 青龍の剣が一際碧く輝くと、衝撃波が風の刃となり空を駆ける。


 ズシャーッ!!


 風の刃は、そのまままっすぐに飛び、防御魔法ごとゴブリンシャーマンと、その周りにいたゴブリンたちを両断する。


『経験値を210pt獲得しました。』


『条件を満たした為

 スキル『疾風迅雷』が Lv.4になりました。』


『条件を満たした為

 スキル『勇者聖剣』が Lv.2になりました。』


「よし! 行ける!」

 そう思って、ゴブリンロードに向かおうとしたその時、急に目の前が真っ暗になった。


《あれ? なんだこれ。目の前がくら……》


 俺は、一歩足を踏み出したところで剣を持ったまま倒れてしまった。


『条件を満たした為

 スキル『魔力回復』を取得しました。』


 意識が遠のく中、スキル獲得の天声が聞こえる。俺は、何となく()()()()()()()が分かったような気がした。


「ヒデオ!!」

 そう叫びながら、サラがヒデオの傍に駆け寄ろうとしていた。

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