第52話 旅のとも
俺はジェームズに馬がいるの所まで案内してもらう。そこには3頭の馬がいた。
「ヒデオ殿、この中から好きな馬を選んでくれ。」
「え? 選んでいいんですか? う〜ん。馬のことはよく分からないから悩むなぁ。」
すると、一頭の馬が俺に近づいてくる。その馬は灰色がかった色の馬で、耳をピンと立てて俺のことをじっと見ている。
「ん? こんな馬いたかな。」
ジェームズは首をかしげなら呟いていた。
俺は、馬の善し悪しは分からないのでスキル『鑑定識眼』を使ってその馬を見てみた。
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【馬 中間種】
牝 芦毛
なつき度 10
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なつき度10って。一体何段階の10だ? 10段階の10ならなつき度MAXだけど、100だとしたら……それにしても、
「中間種って何ですか?」
俺が聞くと、ジェームズが教えてくれた。
「あぁ、馬には軽種・中間種・重種の3種類があってな。スタミナは無いがスピードに特化した軽種、逆にスピードはないがスタミナがある重種、そしてその中間的な中間種だ。長旅には中間種が適しているからな。この馬も中間種だ。っていうか、良く分かったな。」
「えぇ、そう言うスキルがあるんです。」
「ほう。『鑑定識眼』を持っているのか。それはすごいな。」
「そうなんですか?」
「あぁ。そのスキルだけで食べてるいけるくらいだ。」
「へぇ。そうなんですね。でも意外と役に立たないですよ。」
「それはまだレベルが低いからじゃないか。レベルは初級か?」
「そうです。初級ですね。」
「仕事に使えるようになるのは中級からだな。それにしても、そのスキルを持っていることはあまり人には言わない方が良いぞ。」
「どうしてですか?」
「今は見えるのが物や動物、魔物くらいだろうけど、上級になると人も鑑定できるようになるからな。それを嫌がる人もいるって事だよ。」
「条件を満たした為
スキル『鑑定識眼』が Lv.3になりました。」
うん。何となくレベルが上がる気がしてたよ。
「さぁ。ヒデオ殿、どの馬にする?」
他の馬も見てみたが、よく分からないな。分かったことは、他の馬のなつき度がそれぞれ90とMAXだったってこと。ということは100がMAXで間違いないだろう。それじゃあ、なつき度10って全然ダメだったんじゃないか。
でも、なつき度が10なのにすり寄ってくるなんて、やっぱこの馬が気になるかな。
「この馬にします。」
「そうか。この馬のことは実は私はよく知らないんだが、ヒデオ殿が選ぶのならそれなりの理由があるんだろうな。」
「これと言った理由はないのですが、何となく気になったんで。」
「そうか。この馬はもうヒデオ殿の馬だ。好きな名前をつければいいぞ。」
「え? いいんですか。」
俺は馬をなでながら、ジェームズに聞く。
「今まで名前はないんですか?」
「あぁ。個人の専属になったり所有する馬になって初めて名付けをするんだ。それにな、名付けをした馬は強くなるぞ。」
さっきから選んだ馬をなでてるけど気持ちよさそうに大人しくしている。
「ん〜何にしようかな。」
もう一度、レベルアップした『鑑定識眼』で見てみる。
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【馬 中間種】
牝 芦毛
ランク:中級
なつき度 40
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お!? 撫でてただけなのに、なつき度が40になってるよ。ランクは中級か。芦毛の馬ってことは……俺は、馬の目を見ながら色々名前を言ってみる。
「オルコック?」
「……」
ダメか。
「オグリ?」
「……」
無反応だな。
「じゃぁ。ドンキー」
「フッ……」
その鼻で笑う感じ、ひょっとして馬鹿にした?
「ヒデサンブラック。」
首を振られてしまった……。
「ん〜、あ。ソフィアは?」
「ブルルルルルッ。」
お、喜んでる?
「うむ。ソフィアか。良い名だな。では、ソフィアをよろしく頼むぞ。」
ジェームズが言う。ジェームズにも喜んでいるのが分かったんだろう。
馬の名前はソフィアに決まった。深い意味は無い、頭にふと浮かんできたのだ。確か、好きだった昔の歌のタイトルにソフィアって付いてたよな。
「そうだ。ヒデオ殿。それとな、これも持って行け。」
ジェームズが小さな布の袋を渡す。
「なんですか? これ。」
「それはな、『収納袋』だ。」
「収納袋?」
「あぁ、魔法がかかったアイテムだよ。いろんな物がこの中に入れられるよ。」
「えぇ! そんな物貰えませんよ。だって高価でしょ?」
それは、まさに例の便利アイテムだ。しかし、このアイテムって手に入りづらい物なんじゃないのかな。
「ははは。確かに多少値が張るが、この大きさならそんなに珍しい物でもないしな。」
「そうなんですか?」
「あぁ。ちょっとした商人なら持ってても不思議じゃないよ。それにな、これは必ず必要になるぞ。馬をつれて歩くと言うことは餌や水も運ぶ必要があると言うことだ。それをいつも持ち歩いて旅をすることはまず無理だろう。きっと、これが役に立つはずだ。」
「あぁ、そうか。いやでも、ちょっと待てよ。……ジェームズさんちょっとこれ使ってみても良いですか?」
「あぁ。もちろんだ。」
俺は、自分の持っている荷物をアイテム『収納袋』に入れてみた。すると、入らないはずの大きさなのにすっと入っていく。一体どんな仕掛けなんだ? と思っていると。
「条件を満たした為
スキル『収納倉庫』を取得しました。」
あぁ、やっぱり。
「ジェームズさんありがとうございます。この『収納袋』俺はなくて大丈夫です。」
収納袋から、自分の荷物を取り出しながらジェームズにそう言う。
「どうしてだ? 無いと困るぞ?」
論より証拠だな。俺は『収納倉庫』をイメージする。すると、目の前にボヤッとした物が現れた気がしたのでそこに荷物を入れてみた。
すると、俺の荷物はすっと消えた。
「な、なに!? 収納のスキルか?」
「はい。さっき手に入れました。」
「さっき? そうか。参ったな。さすがは勇者、底がしれないな。しかし、それも人前で使うのは避けた方が良いぞ。」
「え? これもですか?」
「あぁ、そんなスキル持ってる事が分かると、何があるか分からんからな。よからぬ事を考えるヤツはどこにでもいるもんさ。」
「そうですか……。」
俺は肩を落として残念がる。
「そう気を落とすな。人前ではこの収納袋にひとまず入れるようにしたら良いんじゃないか? 」
「なるほど! それは良い考えですね。じゃあ、その『収納袋』も頂いておきます。すみません。」
「いや。気にするな。もともと、君の物だしな。ともかく、気をつけて行ってきてくれよ。」
「はい。ありがとうございます。」
こうして俺は、ジェームズからソフィアを譲り受けた。ソフィアの首の辺りを撫でてやる。鼻を伸ばしてなんだか喜んでくれているみたいだ。
「ソフィア。これからよろしくな。」
ソフィアもこちらこそって言ってる感じがする。
名前を付けたら強くなるって言ってたよな。 もう一度、レベルアップした『鑑定識眼』で見てみる。
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【名前持ちの馬 中間種】
名前:ソフィア
牝 芦毛
ランク:上級
なつき度 50
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おぉ。『鑑定識眼』がレベルアップしたお陰かちゃんと名前が見えるぞ。
いい旅の供、いや旅の友もできたし、これで、やっとアガルテを出発することが出来そうだ。
俺はソフィアを撫でながら、ソリスの里に思いを向けていた。




