第39話 お買い物デート
教会に行った翌朝、軽い朝食をとった後、俺はひとり、要塞城に用意された部屋でステータス・ウインドウの設定をいじっていた。昨日アストレアに聞いた事を思い出しながら色々やってみる。
「なんか、いるのかいらないのかよく分からない項目がいっぱいあるよな。特に、このBGMとかって、いつ使うんだ?」
俺は試しにBGMの音量を3にしてみた。
……
おいおい。何にも鳴らないじゃないかよ。壊れてんのか? と、思っていたら。
ピポ♪
「音源が取得できていないためこの操作はできません。 」
メッセージが流れる。
「まじか。何だよ音源って。それどこで取得するんだ?」
あと、気になるのが【地図】だ。これから王都に向かうに当たって、絶対必要になる機能だよな。ちょっと試してみよう。
ピポ♪
「情報が取得できていないためこの操作はできません。 」
「使えね~!」
「なんだかやればやるほど、疑問が増えるな。」
俺は、取りあえず効果音の音量を0にして、ステータス・ウインドウを閉じた。
今日は、リナと買い物に行く約束をしている。にしても、待ち合わせの場所も時間も決めてなかったよな。もう暫くして来なかったら迎えに行こうかな。そう考えていると、
コン・コン……ドアをノックする音が聞こえた。
「どうぞ。」
俺が声をかけると、部屋付きのメイドが現れた。
「カトリーナ・オルドイーニ 様がお見えになりました。」
「じゃぁ、ここに通して。」
「はい。畏まりました。」
流石はリナ、ちゃんと来てくれるんだな。
入れ違いに出て行くメイドを見ながらリナが入ってきた。
「あら。部屋付きのメイドさん? 出世したわね。」
「そうでもないだろ。体裁を整えてくれてるだけだよ。それと、監視の意味合いもあるんじゃないの? それよりも来てくれてありがとう。」
「約束したもの。当然でしょ。ところで、ヒデオは何か食べた?」
「朝にスープを飲んでからは何も。」
「そう。じゃあ、出かけた先でお昼に何か食べましょう。」
「OK。じゃぁ、早速出かけるとするか。」
☆
ここは、城の楼門の前にあるアスガルタ広場。この広場は市民の憩いの場であると共に、沢山の露店が出ていて市場のようにもなっている。そこを俺はリナと並んで歩く。
「昨日の教会はどうだったの?」
「あぁ、なんとか駄女神」とも、話せたよ。」
「そう。良かったわね。女神様はアストレア様って言うのね。」
「そうだよ。あれ? 言ってなかったっけ?」
「うん。初めて聞いた。で? 目的は果たせたの?」
「う〜ん。どうなんだろ。半々かな。」
「なにそれ。」
「聞きたいことはだいたい聞けたけど、新たな疑問も出てきたりでさ。」
「そうなの。あれは? 通力のことは聞けた?」
「……それがね。聞き忘れた。」
「あら。残念。私もちょっと楽しみにしてたのに。」
「それはごめんよ。また、今度聞いとくよ。」
「いいわよ。それより何食べる?」
リナが腕を組んでくる。そんなにくっついたら胸が……。
俺はドキドキしているのを気取られないように普通に喋る。
「う〜ん。何って言われても異世界のことなんて、俺、全然わかんないよ。」
「だよね。とりあえずこの辺りの露店で試しに何か食べてみる?」
「いいね。お! あそこにあるのは焼き鳥屋か?」
俺はリナの手を取ると、少し先にあった焼き鳥屋風の露店に小走りで向かう。
露店の前に立つと直ぐに威勢の良いかけ声がかけられる。
「へい。いらっしゃい! にーちゃんなんにする?」
焼き鳥屋かと思ったが、どうやら色々な肉の串焼きを売っているようだ。それにしても良い匂いがしている。何を食べたら良いのか迷ってしまうな。リナに聞いてもいいんだが、こういうときは、お店の人にお勧めを聞くのが一番だな。
「おっちゃん。この店の一番のお勧め商品ってなんだ?」
「ウチのお勧めなぁ、そうだな。やっぱりこれだろ!」
といって、1本の串焼きを手に持って俺にみせる。
「肉の串焼きか。それって、何の肉なの?」
「これかい? これは、オークの肉だよ。」
「え〜?! オークってあの魔物のオーク? おいしいの? ってか、食べられるのか?」
「何言ってんだい。美味いに決まってるじゃないか。てか、にーちゃんオークの肉食ったことないのかよ。どこの田舎から出てきたんだ?」
「かな〜り遠いとこです。オーク肉は初めてです。」
「まぁ、騙されたと思って食ってみなよ。流石にイノブタや牛と比べると味は落ちるけどさ。あっちは高級食材だからよ。美味くて当然だろ? そこそこ安くて美味いのがオーク肉の良いところよ。といっても庶民にとっちゃあオーク肉もお高いんだけどよ。」
う〜、この間散々魔物を殺したからなぁ。同じ魔物だと思うと何だかなぁ〜。リナを見るがニヤニヤしながらこちらを見ているだけだ。なんだか試されているような気がする。しかし、匂いは美味そうなんだよなぁ。郷に入れば郷に従えって言うしな。よし。
「じゃぁ、おっちゃんそのオーク肉の串焼き1本ちょうだい。」
「あいよ。……へい。おまち。」
「おぉ。良い匂いだな。」
俺はもらった串焼きを一口ほおばる。
「おぉ! 意外と美味い!」
ちょっと弾力があるが、噛みしめる度に肉のうまみが口に広がっていく。
「だろ? 人気の商品だからな。」
リナを見るとひとりウンウンと嬉しそうに頷いている。どうやら、過去にリナも同じ経験をしてたんだろう。
「あ、そうだ。 おっちゃんいくらだ?」
「おぅ! 小銀貨1枚だよ。」
「小銀貨? あ、1000アウルムか。じゃぁ。これ。はい。」
俺は、今日もらったばかりの金貨を袋から取り出して露店のおっちゃんに渡す。
「おいおい。にーちゃん何の冗談だよ。」
「え?」
「え? じゃねえよ。こりゃ金貨じゃねぇか。どこに串焼き1本買うのに金貨出すヤツがいるんだよ。」
「え? ダメ?」
「ダメっていうかよ。そんなおつり用意してねえよ。」
それを聞いていたリナも会話に入ってくる。
「あんた1000アウルムに金貨で払うって何考えてるの?」
「え? でも、俺これしか持ってないし。」
「そんな台詞を言うのは、どこかの馬鹿御曹司くらいのものよ。 って言うか、お金持ってることの方が驚きだわ。しかも金貨。どうしたの? それ。」
「あぁ、言ってなかったっけ? この間の報奨金って事でもらったんだよ。」
「なるほどね。それにしても意地が悪いわね。金貨で1枚だけ渡すなんて。ここは私が払っとくから。」
「あぁ、すまない。」
俺はちょっとしょんぼりとして俯いた。
「はいはい。もう、しょうがないわね。おじさん、それじゃぁこれ、代金ね。」
そう言いながら、リナが店のおっちゃんに小銀貨1枚を渡す。
「あいよ。まいどあり。」
「それにしても、このままだとヒデオも困るでしょ? その金貨、両替しに行きましょう。」
「おぉ、そっか両替か。そうだな。じゃあ、そこにつれてってくれ。」
まぁ、そりゃそうだよな。1000円の商品買うのに50万円出されたら、なんだこいつってなるよな普通。露店にそんなおつりなんて用意していないだろうしな。
しかし、リナと一緒で良かった。1人だったら両替なんてのも気がつかなかったかもしれないしな。
リナが串焼き屋のおっちゃんに料金を支払った後、俺とリナは両替商に行くため広場から街の中へと歩き始めた。
両替商は、アスガルタ広場から5分ほど歩いたところにあった。銀行のような大きな店構えを期待していたのだが、意外とこぢんまりした店である。ちょっとした商店といったところだ。
「ここは、両替商と言っても銭両替って言ってね、小さな商店と両替商が一緒になったようなものなのよ。本格的な本両替は流石に王都にしかないけど、庶民にはここで十分なのよ。」
俺の心を読んだかのようなリナの言葉である。リナってマジで心が読めるんじゃなかろうかと思うときがある。これじゃあリナに嘘はつけないかもね。
俺は、金貨1枚を両替商のカウンターに預ける。戻ってきたのは小金貨4枚、大銀貨8枚、銀貨2枚、小銀貨5枚だった。手数料として5000アウルムも取られてしまった。両替商ぼろもうけだな。
リナが言うには、ここはまだ手数料が安いらしい、田舎で両替すると手数料が5倍くらい取られることもあるみたい。
そう考えると、リナが言ってた金貨1枚で報奨金を渡すのは意地悪と言えば意地悪なのかもしれないな。
とにかく両替ができたので、これで心置きなく買い物ができそうだ。
長くなったので2話に分けました。
次話のアップは本日18時を予定しています。
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