第17話 異世界の夜食
俺は1階にあるリビングに降りていく。
「あら? ヒデオ様 どうされましたか?」
「いやぁ。よく考えたらお昼から何も食べてなくてさ……。ちょっとお腹が……」
「あ、そうですよね。気がつかなくてすみません。何か食べますか? たいした物はできないですけど……。」
「なんでもいいよ。とにかく何かお腹に入れる物があれば。」
「わかりました。ちょっと待っててくださいね。」
そう言いながら、シルビアはキッチンの方へと向かう。
シルビアの家は1階+屋根裏部屋って感じの造りで1階はLDKって言うのかな。12畳ほどのLDにいわゆる対面型のキッチンが備わっている。
そのキッチンに入って、何やらガサガサと始めるシルビア。
暫くすると、仄かに良い香りがしてきた。
何が出てくるのか楽しみだな。
異世界に来て初めての食事だし。
暫くして、戻ってきたシルビアの手には、トレイに載ったパンと干し肉、そしてスープがあった。
「ごめんなさい。こんなのしかなくて。でも、夕食のスープが残っていて良かったわ。」
そう言いながら、シルビアが俺の前に料理を並べてくれる。
とても良い香りがする。
まずはスープから……。美味い!
「このスープおいしいよ! 空きっ腹に効くわ〜。」
「よかった。」
シルビアは安堵の表情を含めながら笑顔でそう言う。
「それにしても、あの短時間でスープを作ったの?」
「いいえぇ。まさか。私たちの夕食の残りを温めただけですよぉ。」
そういや、キッチンとかあるけどガスとか来てるのかな?勝手な妄想だけど、異世界には電気・ガス・水道はないと思ってたよ。
「どうやって温めたの?」
「あぁ。魔法で温めました。少しくらいならその方が早いし楽ですから。」
おぉ! 魔法きた〜!
「やっぱり魔法はあるんだ。」
「ヒデオ様の世界には、魔法はなかったんですか?」
「う〜ん。フィクションではあるけど、実際に魔法が使える人はいないな。」
「へ〜。それじゃあ色々不便ですね。」
「まあ。そこは科学の力で何とかしてるし、大丈夫だよ。」
「カガク?」
「う〜ん。説明が難しいからまた今度ゆっくりね。」
「はい。わかりました。さ、冷めないうちに召し上がってください。」
「あぁ。ありがとう。じゃ 『いだたきます。』」
魔法かぁ。俺も使えるようになるかな。
やっぱり異世界と言えば、魔法だもんな。でもMP0だったよな。このままじゃ、使いようがないかも……。ま、追々だな。
それにしてもおいしいな。
干し肉をあぶったのなんて、噛みしめるほどにうまみが出てきてすんごい美味い。
パンは、あっちのパンと比べると堅くて歯ごたえがありすぎる感は否めないけど、小麦かな? 素材の味がしっかり出ていてなかなか美味だ。スープに浸して食べるとさらに絶品!
考えてみれば、こっちには食品添加物とか保存料とかはないだろうから、素材の旨味がそのまま出るんだろうなぁ。そう考えると、めっちゃオーガニックじゃん。ロハスな食事ってやつだな。
「う〜ん。美味かった。満足満足。シルビアちゃんありがとう。すっごく美味しかったよ。」
「よかったです。ゆっくり寝られそうですか?」
「うん。これで大丈夫。身も心も温まったよ。やっぱり家庭料理ってのは良いね。」
「よろこんでいただけて私も嬉しいです。明日の朝も、美味しくできるように頑張りますね。」
いやぁ。異世界でのんびりロハスな生活ってのも悪くないかもね。そんなことを考えながら、俺は部屋に戻る。
「シルビアちゃんおやすみ。」
「おやすみなさい。」
部屋に戻ったおれは、ベッドに寝転びながら今日あったことを思い返す。
俺ってあっちの世界では死んだんだよな。
父さんや母さん、美虹も驚いてるだろうな。
ゴン太先輩とかどうしてるんだろうな。
こっちで暮らしてることを知らせることができるといいんだけど……
でも、知らせてどうなるわけでもないか。
色々と考えていると、なんだかちょっと寂しくなってくる。
「ま、なるようにしかならないしな! よし! 明日に備えて寝るぞ!」
俺はそう言いながら、布団をかぶるのだった。
こうして俺の異世界1日目の夜は過ぎていったのだった。
食事も楽しく書けると良いなって思ってます。
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長期出張から帰ってきたので、本日2話目アップしてみます。