第16話 ながい一日
シルビアや長老、マールスさんにも尋ねてみたがみんな『ステータス・ウインドウ』は知らないらしい。
初めて聞く言葉だと言っている。
個人のステータスを確認することはできるが、王都にある神器を使わないといけないらしい。
ってことは、ステータスウインドウは勇者特有のスキルかもしれないな。
なんだか、急に情報過多になったな。
そもそも、こう言うのってちゃんと説明しながらやるべきじゃないのか?
駄女神のせいだな。
今度会ったら、おしりペンペンしてやろう。
あの、超美少女のすらりと伸びた足、キュートなおしり、それをこう……
「それよりも、勇者殿はお疲れではないかの?」
「は?!」
俺がにやけながら、駄女神のお仕置きを妄想していたら長老に声をかけられた。
「俺ですか?」
何気ない体で答える。ちょっときょどってしまったがな……。
よく考えてみたら、俺が召喚されたのってついさっきのことだよな。
なんだか、めちゃくちゃ時間がたってるような気がするぞ。
そう思うと、急に体が……なんってったってHP10だしな。
「なんだか疲れてるみたいです。」
「じゃろうな。召喚自体、かなりの負担がかかることであろうて。シルビアよ。勇者殿に床の用意をして差し上げなさい。マールスよ。よいかな?」
「婆様に言われずとも端からそのつもりだ。」
マールスに目で促され、シルビアはヒデオの寝床の準備にとりかかる。
もう随分と時間が経ってる気がするけど、実際のところまだこっちに来てから数時間ってとこだよな。
誰もいないところに転移されて、一時はどうなることかと思ったけど、どうやらここに転移されたのも駄女神なりの考えがあってのことだったみたいだな。
駄女神だとは思うけど、少しは考えてくれてたみたいだし、許してやろうかな。
超美少女だしな……。スタイル良いしな。好みだしな……。
いかんいかん。また妄想領域に入ってしまっていた。
しかし、色々と確認しておきたいことがたくさんできたな。
そういやさっき、女神の声がちょっと聞こえたみたいだから、交信ができないって訳でもなさそうだよな。
とにかくやらないといけないことがありすぎるわ。
シルビアもシルビアパパたちも良さそうな感じの人たちだし、とりあえず今日はここにお世話になろう。
行動は明日になってからでもいいだろう。
別にノルマがあるわけでもあるまいし、女神も何も言ってなかったしな。
「ヒデオ様 お部屋の準備が整いました。こちらへどうぞ。」
俺はシルビアに連れられて、用意してもらった部屋へと向かう。
1階から梯子のような階段? を使って2階へと上がる。そこは2階というより屋根裏部屋と言った方が近い。
俺が立っていられるくらいではあるが、天井が結構低くて、梁とかも見えてる状態だ。
2つある部屋のうち、ひとつへ入る。
用意された部屋は4畳半くらいの広さで、木でできた机とベッドが置かれていた。
シンプルな部屋だ。ちょっと良い香りがする。
異世界って言っても、あっちの部屋とそうたいして変わんないんだな。
「狭いところでごめんなさい。普段私が使ってる部屋なんで、気兼ねなく使ってくださいね。」
シルビアが申し訳なさそうに言う。
「全然大丈夫! ってか、すごく良い感じ。突然なのにありがとう。シルビアちゃんはどうするの?」
「私は、お父さんの部屋を使うから大丈夫ですよ。」
「そっか。ありがとう。」
正直、野宿する可能性もあったわけだから屋根のある、しかも普段シルビアが使っているベッドで寝られるなんて、めっちゃ幸運じゃなかろうか。
いいに匂いするし。
スキル『幸運』なんてあるのかな。あればいいな。
「では、ごゆっくり。」
そう言いながら、シルビアは部屋を出て行った。
こうして俺の短くも長い一日が終わろうとしていた。
……グゥ〜〜〜〜〜〜キュルルルルルゥ〜〜……
「……」
あ〜! そういや俺、会社の昼休みにヘブン・イレブン行こうとしてた途中にこっち来たから、昼飯とかなんも食ってないじゃん!
もう夜なのに(あっちとこっちで時間の都合はどうなってるのかは知らないけど)。何も食べてないぞ〜〜〜〜〜〜!!
「あ〜。腹減った! コンビニとかってないよなぁ。」
どうやら、俺の長い一日はまだ終わらなさそうだ。
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