第15話 そこはテンプレ
突然目映い光に包まれるヒデオ。
一様に目が眩むほどの光を遮るよう、手を上げて顔を覆う。
時間にして数秒だろうか。だんだんと光が収まっていく。
「ヒデオ様 大丈夫ですか?!」
シルビアがヒデオに駆け寄る。
狐に抓まれたような顔でシルビアを見るヒデオ。
「ヒデオ様 それ。」
何かに気づいたシルビアがヒデオの手を指す。
見るとヒデオは手に何かを持っていた。
「なんだこれ?」
そう訝しげに自問するヒデオにシルビアが声をかける。
「碧い石……ペンダントですかね?」
ヒデオは手にしている深い碧色をしたペンダントを不思議そうに眺める。
「ちょっと見せてくれんかの。」
そう声をかけながら、長老はヒデオからペンダントを受け取る。
「ほぉ。これは『勇者の証』じゃな。ほれ、この紋章が何よりの証拠じゃ。」
「長老様! ではヒデオ様は……」
「勇者に相応しいと神に認められたということじゃろうな。」
シルビアの言葉に長老が続けた。
「やった!! これでヒデオ様は正真正銘の勇者様なのですね! ヒデオ様 おめでとうございます!!!」
シルビアは満面の笑みでヒデオに飛びついた。
こうして俺は、なんとも都合の良いタイミングで『勇者の証』を手に入れることとなった。
それにしても、さっきのピロピロはなんだ?
あれ、きっと残念女神の仕業だろうな。
「間に合った。」とか言ってたよな。
きっと、スキル付け忘れてたんだ。
てか、やっぱ、残念女神じゃないか。判ってたけど。
それにしてもなんか、いっぱい言ってたけどいちいち覚えてないぞ?
ゲームとかラノベだと、ステータスウインドウとか便利な機能があるんだけどなぁ。
……テンプレだとここであれだな。
「ステータス・オープン。」
ピロン♪
「あ、本当にでた。」
試しに軽い気持ちで言っただけなのに、本当にステータス・ウインドウが開いた。
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タダノ ヒデオ
♂ 17才
種族:人族
職業:勇者
ランク:E
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レベル:1
HP 10/10
MP 0/ 0
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加護:超美少女女神アストレア
称号:異世界人・召喚勇者
属性:なし
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【スキル】【アイテム】
【設定】
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まさにテンプレだな。
それにしても、突っ込みどころが満載なんだが……
何で17才だ? 俺は27才だったはずだが?
それにランクEってどゆこと?
女神はSクラス勇者って言ってなかったっけ?……
あれ? ランクとクラスって違うのか?
しかも、レベル1って低すぎないか?
HP10……弱くね?
おいおい、チートはどこに行った?
MP0/0だし……魔法使えないのか?
ってか加護が超美少女女神って……
あ、下に【スキル】ってあるな、これどうやって開くんだろ?
と、【スキル】に目をやると
ピロン♪
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【スキル】
『言語解析』
○日本語
●ベルグランデ語
『視覚強化』Lv.1
『聴覚強化』Lv.1
『嗅覚強化』Lv.1
『身体強化』Lv.1
『気配察知』Lv.1
『危険察知』Lv.1
『魔力探知』Lv.1
エキストラスキル
『思考加速』Lv.1
ユニークスキル
『限界突破』Lv.1
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見るだけで開くのか。便利だな。
う~ん。スキルはいっぱいあるなぁ。
これがさっきのピロン♪ ピロン♪のやつか。
……
「ヒデオ様! ……勇者様!!」
シルビアの声で我に返る。
思わず夢中になってて状況忘れてたわ……。
俺は、シルビアを見る。
「近っ」
シルビアちゃん近いよ。
シルビアは、心配顔で上目遣いに俺の顔をのぞき込んでいた。
「ヒデオ様 どうされましたか? 先程からボーっとしたまま固まってましたよ。」
こうして見るとシルビアちゃんかわいいな……。
「あぁ、さっき頭の中で声がいっぱいして、やたらとスキルが付与されたみたいでさ。
それでステータス・ウインドウに集中しちゃってた。すまん。」
「じゃあ、『勇者の証』を得た上にスキルもたくさんもらえたんですね。流石は勇者様です! 声はきっと天声ですね。」
シルビアはまるで自分事の様に喜んでいる。
「てんせい?」
「はい。レベルが上がってスキルを得たり、スキルのレベルが上がったときに神様が教えてくださるんです。それを私たちは天声と呼んでいます。」
「そっか、神の声……天声か」
神の声ってことは残念女神の声って事か?
でもちょっと違ってた気もするな。
「で、ヒデオ様? ステイタス・ウインドー? ってなんですか?」
「え? ステータス・ウインドウだよ? よくあるテンプレの……目の前に ピロン♪ ってでるやつ。」
「???」
シルビアは長老に方に目をやる。
「儂もそれはようわからんな……初めて聞く言葉じゃ。」
なんと、天声は聞こえてもステータス・ウインドウは出ないのか?
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まだ長期出張中のため、1日1話ペースで投稿します。
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