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第26話 表明

 家に入れば装備を外し、仕込んでいた食材で料理を作る。お腹を空かせた、みんなが帰って来るまでに作らないとね。

 ――そして夕食時。

 談笑しながらの、夕食の楽しい時間だけど、食べながら一つ聞いてみた。


「フェーニ、ちょっと聞きたいのだけれど」

「はい、何でしょうか」

「フェーニ達の冒険者登録している、レムルの森なんたら乙女団、って何かな」


 急な話で驚くかと思ったけど……違った。嬉しそうに笑顔で話すフェーニ達。


「ラサキさん知っていたのですか? 私とミケリ、ルージュで考えたのですよ。いい名ですよね」

「いい名前だニャ。もう有名ニャ」

「ボクもいいと思います。気に入っていますし」


 うん、何も言えません。


「あ、そう。いや、いいんだ。そうかそうか」


 いや、しかし。


「思ったんだけど、俺の名前だけでも消して、改名したほうが……」

「嫌です!」「嫌ニャ!」「絶対にダメです!」


 間髪入れず返答が帰って来た。


「あ、え、う、うん、いいよ、うん、いいね」


 聞くつもりはなかったけど、フェーニが命名した経緯を語ってくれた。

 フェーニ曰く、命名するのに数日を費やした。

 俺の名を入れるのは三人絶対事項で、他に何を入れるか検討した結果、好きな花の名を付け加える事になって、フェーニがスミレ、ミケリがバラ、ルージュがユリ、それで生まれた名前が、レムルの森にスミレ咲くバラが咲くユリが咲くラサキを慕う乙女団。


 うわーっ、やっぱり恥ずかしー、ちょー恥ずかしいー、何回聞いても恥ずかしー。

 レムルの森はいいとしても、俺の名は外してほしかったなー。などと思いながら嫁の二人を見る。

 ファルタリア達は知っていたようで、何の反応も無く大口開けて食べまくっている。仕方がない、名が世間に広まっているのだから諦めよう。

 何だか疲れた。

 あ、今日はサリアとお勤めの日だ。事はしっかりやるけど、早く寝たい気分だよ。


 数日経つけど、相変わらずファルタリアとサリアは、三人を引き連れて鍛錬している。もう化物級だし出鱈目な強さになっているのに、向上心が留まる事を知らないのかな。


 そろそろヴェルデル王国に行かないといけない頃合いだな。

 全員で行くより少数精鋭の俺、ファルタリア、サリアだけでいいだろう。コーマも言うように強いからさ。

 その日の夕食を食べ終えた後、風呂に入る前に、デザートの果物を食べて切る時に話を切り出した。


「全員集まっている所で話がある」


 皆が談笑を止め俺に向く。


「実は戦争が始まるらしい」


 俺は、先日使者が来たこと、ヴェルデル王国側に付くように言われたけど断った事。

 特に、フェーニ、ミケリ、ルージュの場合は、パーティを名指しで召集されることも含めて話した。

 ただ、それを肯定させるため王国に出向く。同行はファルタリアとサリア。フェーニ達はこの家で待機する事。

 話し終わったら、フェーニから提案があった。


「ラサキさん、私とミケリは行こうと思っています。有名になって王国に呼ばれたのであれば答えないと」

「私も行くニャ」


 二人は戦争に参加する意思を向けて来た。


「ボ、ボクは、この力はラサキさんの為だけに使いたいです」


 フェーニは予測していたように、笑顔で肯定する。


「いいよ、ルージュは以前から言っていたからね。これは私とミケリの判断だからさ」

「ゴメン」

「気にする事無いよ。と言う訳で、私とミケリは参戦してきます」

「行くニャ」


 笑顔で答える二人を前に聞き返す。


「いいのか? 戦争だぞ? いいように使われるぞ? 二人は強くなったから死ぬなんて事はだいだろうけど。万が一、があるからな」


 フェーニ曰く、昔俺に助けられてギナレスの町に来た頃、ギルドで、近い将来戦争が起こる事を知った。

 なら参加して強さを見せつけ、やめさせることが出来たらいい、と考えた。だから厳しく鍛錬してもっともっと強くなろう。

 周囲より強くなって結果を残し、勲章を貰えるくらいになれば、戦争を中止させることが言える立場になれる、とミケリと話し合った。


「いい事無いぞ、それでも行くのか? それにどれだけ強くなろうとも、いくら戦果をあげようとも、一介の冒険者が王国に意見なんて聞き入れてもらえないぞ?」

「はい、それでも二人で決めていた事なので……ご迷惑おかけします」

「すみませんニャ」


 ファルタリア達も賛成している訳では無いけど、強く言われたのだろう。いつもとトーンが違った、静かな声で話す。


「ラサキさん、二人の強い意志は変わらないようです。強くなったので参戦してもいいのではないでしょうか」

「師匠のファルタリアが言うのなら、俺がとやかく言わないよ。二人共気を付けるんだぞ」

「はい、ありがとうございます」

「ありがとうございます。ニャ」


 色々話もしたいけど、決意の固まった二人だし、後の事はファルタリアに任せよう。

 俺に気を利かせたのか、誘いも無く順番に風呂に入った。今日はお勤めも無いので、外庭のテーブルでゆっくりと一人晩酌する。

 少しして、三人の影が映る。寝巻を来た湯上りのフェーニ、ミケリ、ルージュがテーブルまで来た。

温まって頬が薄赤いフェーニ。


「隣に座っていいですか?」

「遠慮しないで座りなよ」


 俺の隣にフェーニとミケリ。正面にルージュが座った。

 俺は蒸留酒をあおり、グラスを置くと、すぐに両脇から腕を組んで、頭をグリグリさせて来る二人。その間ルージュは黙って見ているだけだ。


「ど、どうしたのかな二人共」


 フェーニが上目使いで俺を見てくる。うお、か、可愛いぞ。


「お願いがあります。ラサキさんのお許しがもらえるなら、今夜、一緒に寝たいです」


 逆隣のミケリも、上目使いで、綺麗な尻尾をブンブン振ってくる。


「一緒に、寝たいですニャ」


 勢いに圧倒されたよ。


「あ、い、いいけど、ファルタリア達は……」

「了解は貰っています」

「そ、そうか。なら一緒に寝ようか」

「はい! やったー」

「やったニャー!」


 腕を組んだまま喜ぶ二人。まあ、寝るくらいはいいかな。ん? ルージュは動揺も見せずに、冷静な目で見据えている。


「ルージュも一緒でいいのか?」


 頭を横に振り、笑顔で話すルージュ。


「いえ、ボク今回は遠慮します。戦争に行かないので次回に期待します」

「いいのか?」

「はい。今夜はフェーニとミケリ譲ります」

「あ、いやいや、何もしないよ。一緒に寝るだけだからさ」

「それでもお願いします」

「ああ、なら了解した」


 その夜、コーマはいないし、ファルタリアとサリアも隣の部屋、ルージュは自分の部屋で就寝。

 そして今、俺の両隣にフェーニとミケリがくっ付いて、密着して絡まっている。


「寝ないのか?」


 深呼吸しながら、顔をうずめるように胸に付けているフェーニ。


「勿体ないです」


 ミケリも同様に、匂いを嗅ぐように深呼吸している。


「いい匂いニャ、幸せニャ」


 興奮している二人の間に挟まれた俺も、なかなか寝付けなかった。

 でも、二人の背中を手の平で、軽く、ゆっくり、優しく、叩いていたらやがて、スウスウ、と寝息を立てて眠りに落ちて行った。

 おやすみ。

 俺も落ち着きを取り戻し、いつの間にか眠りに着いた。

 夜も静かに更けて行く。

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