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第21話 手合せ 2

 疲れている二人には休んでもらって、今度はルージュと手合せしよう。その前に、俺との手合わせを見ていたルージュは、眼を輝かせて感動していた。


「凄いです。フェーニとミケリは強いから、手合せは拮抗すると思っていました。けど、まるで先が見えているようなラサキさんのいなし方が素晴らしかったです。ボクもその領域に辿り着きたいです」


 いつの間にか近寄って、その横でしたたかな顔で話すサリア。


「大丈夫がや、ルージュは強くなったがや。あたいの鍛錬に着いてこれたから勝てるがや」

「ボ、ボク一人でですか? む、無理です。フェーニ達でも手も足も出ないのに……」

「自分を信じれば勝てるがや。あたいの言った通りに手合せするがや」

「は、はいっ!」


 俺と対峙するルージュ。新たなルージュに、興味津々のフェーニとミケリが見守っている。


「行きまーす」


 ルージュが、フェーニ達と培ってきた剣で切りかかってくる。お、フェーニ達と負けず劣らず速いな。 あれから相当鍛錬したのか、天性なのか分からないけど向上している事は確かだ。

 一人攻撃なのに、上段中段下段と縦横無尽に攻撃して来た。多分サリアの攻撃方法を学んだ上で、連携では無く一人だから、思う存分に力一杯攻撃出来るのだろう。

 ルージュの攻撃を受ける事少し。ルージュが両手で上段から渾身の一撃を放って来た。俺は連続攻撃を受けた直後なので、正面から真面に剣で受けた。

 それを待っていたかのようにルージュの左手が、流れるように握っていた剣から離れ、手の平が俺の間近に向いた。

 ゼロ距離からの魔法攻撃。


「アイスランス!」


 直後に俺に氷の矢が襲いかかった。狙っていたようなゼロ距離からの魔法攻撃を考えていたのか、サリアの作戦だな。

 うん、これを避けられる奴はいないよ。

 だがしかし、ここはコーマに貰った力だ。矢を直前ギリギリで避けた。

 またすぐに、氷の魔法攻撃が来たけど掴んで払い落とし、一度後ろに跳び離れる。さて、どうするか、ルージュも俺の出方を伺っているから、俺から行こう。


「行くよ、ルージュ」


 俺の言葉に構え直すルージュ。

 俺は低い姿勢から、力を込めた一歩でルージュに一足飛びに近寄り、上段から剣を振り降ろす。

 ルージュには少し酷かな、と思ったけど全く問題なく俺の動きに付いて来る。さらにしっかり剣で受け流されて、すぐさま左手を俺にかざす。


「フレイム!」


 後方に飛んだ俺を読んだのか、大きな炎の塊が俺に直撃し、包まれる。


「やった!」


 ルージュは勝った、と油断した時、炎の中から瞬時に飛び出て、ルージュの持っている剣を叩き落として終了した。

 あっけにとられるルージュだったけど、すぐに理解したようだ。


「ゼェゼェ、勝てたと思ったのですが、その上を行かれるのですね。ゼェゼェ」

「ルージュも強くなったね、心強いよ」

「ハァハァ、ありがとうございました。ハァハァ」


 一息入れ、休んでから立ち上がる三人は少し離れ、何やら連携攻撃の打ち合わせを念入りに始めた。

 なので、最後は三人の連携攻撃だ。内容が決まったのか、俺に振り向いた三人を見ておもむろに立ち上る。


「いいかな」

「「「はい」」」


 フェーニ達が、眼で合図を送り合うと手合せは始まった。

 例の残像攻撃が、二人から三人による、息の合った波状攻撃で更に威力倍増だな。うん、これは尋常じゃない攻撃だ。

 この三人の連携攻撃に勝てる奴、いや、一団、もとい、一隊は皆無だろう。これはこれで世界最強じゃないのか? 三人の残像攻撃はそれだけ凄すぎだった。

 何度かは避けたり剣で受け流したり出来ても、こう何度も息つく暇さえ与えられずに急所目がけて攻撃してくる。

 隙をついて反撃しても、しっかり防御してくるから厄介だ。攻防一体の理想的な戦い方だよ。

 ――でも楽しいな。

 手合せもそうだけど、こうして強くなった三人を見ていると嬉しくなった。

 しばらく続いたけど、そろそろ幕引きかな。

 三人の動きは見極めていたので、瞬時にして剣で三人の剣を叩き落とし、頭を小突いて終了。


「キャッ」

「ンニャッ」

「いたっ」


 黙って離れて見ていたファルタリアとサリアは、残念そうだったけど、俺だって負けられないからね。


 手合せ終了後、何故だかファルタリアとサリアが、怪訝な顔をしながら寄ってきて、納得できない、と言いだし、今行われた手合せの、おさらい、をしようと提案したら、フェーニ達三人もすぐに同調した。 君達はどれだけ鍛錬が好きなのか? それだけ強いのに……まあ好きにさせておこう。

 なので、俺は一足先に家に帰り夕食の準備を始める。

 今晩は何を作ろうかと、食料庫から出した猪と鹿の肉を眺めていたら、コーマが現れ、後ろから抱きついて来る。

 振り返ると、肩越しから、綺麗な真紅の瞳が可愛い笑顔のコーマが顔を出した。


「お勤めが終わったのか? ご苦労様」

「今日のお勤めは無いの。じっくり三人を観察していたのよ」


 背中に抱きついたまま、今度は頭を俺の首辺りにグリグリさせてるコーマ。


「あ、そうなのか。で、どうかな、いい子達だと思うけど」

「うん、いいわ。後はラサキに任せる」

「ありがとうな、俺のわがままに付き合ってくれてさ」

「ウフフ、いいのよ。ラサキにかかわる事だけは私も楽しいから」


 そう言って満足したのか離れ、居間のテーブル席に座って、置いてあった俺の葡萄酒を飲み始めた。

ん? 大丈夫だよな。ヤケ酒じゃないよな。

 心配そうな俺を余所に、俺を、じっ、と見るコーマ。そして眼を逸らし外を見る。


「何の心配も無いわ。今日は毒耐性しているから酔わないしね。ウフフ」

「何だよ心配させんなよ、全く」

「でも美味しい。ウフフ」


 コーマを気にしつつ、料理を作り出すと、飲みかけの葡萄酒のグラスはそのままに、一度消えるコーマ。一人でつまらないのかな、後でまた現れるだろう。

 今晩の料理は串焼きにした。塩焼きでは無くタレ焼きだ。猪と鹿を一口サイズに切ってぶつ切りにした野菜と交互に差し、並べて焼く。

 ひっくり返すたびに甘辛のタレを一塗りして焼く事数回。いい匂いがしてきた所で出来上がりだ。

 みんな食べ盛りだから、一連の作業を繰り返すこと十数回。大皿数枚に盛りつけてテーブルに持って行き並べた。

 付け合せは、いつもながらのジャガイモの塩茹でだ。


「よし、出来た」


 そこに、丁度鍛錬し終えてみんなが帰って来た。


「ただいま帰りましたー」

「ただいまがやー」

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