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第19話 また日常

 獲物を獲って帰って来た五人を見て、ああ、大所帯を実感したよ。

 ファルタリアが猪を二頭、両肩にかついで、軽々と、楽々と、悠々と、歩いて来ている。嫁になったからなのか、一段と凄いな。

 その後ろには、フェーニとルージュが足から棒に吊るした鹿を、横にして一頭を担いで運んできた。

 サリアとミケリは野菜を籠に入れて、両手で抱えて持って来ている。うん、やっぱりすぐに順応する才能はあるね。


「ラサキさーん、追加でーす。エヘヘ」

「また採れたがや」

「うん、ご苦労様。これだけあればしばらくは食いつなげるよ」


 フェーニ達が感激している。


「この森はとても豊かですね」

「いい森にゃ」

「獣が太っていると言う事は、レムルの森はそれだけ獣にとっても、いい森、なのですね」

「みんなもご苦労様。こういう生活が続くけど、嫌ならシャルテンの町で過ごしたり依頼を受けたりできるよ」

「嫌です」

「嫌にゃ」

「ボクは、ここに住みたいです」


 三人の意志は固そうだな。

 うーん、当初の通り、しばらく様子を見るしかないか。つまらなくて退屈で嫌になるかもしれないからな。

 こうして三人の仲間が増え、新たな生活が始まった。


 夕暮れ時は、居間のテーブルを囲み、フェーニ達のギナレスの町や樹海の話や、ファルタリアによる道中の昔話で談笑し、笑いや驚きが絶えないひと時だった。

 夕食時は、大人数になって勝手がわからないから、猪の肉を厚く切った生姜焼きに、キャベツの千切りを山盛りにした料理を作っていると、三人が調理している所を見に来て、まずフェーニが驚いていた。


「ラ、ラサキさんが作るのですか? すみません」

「いいのかニャ?」

「ラサキさんに作っていただけるなんて、夢のようです」

「余計な事はいいから、向こうで待っているように」


 気にしなくていいのにな。

 居間に戻る三人を確認する、そして――。


「ふう、出来上がりだ。出来たぞー! 各自取りにおいでー!」


 大所帯になったので、一人で持って行くのに一苦労するからね。

 思い思いに取りに来て、いつの間にか決まっていた席順で、テーブルを囲んだ位置に座る。

 そして食べだしたフェーニ達が嬉しそうだ。


「うわ、ラサキさん、美味しいです」

「お、美味しいニャ」

「ラサキさんは料理も得意なのですね。本当に美味しいです」


 三人の驚きに、ファルタリアとサリアが同調した。


「そうでしょう? ラサキさんの手料理を食べられることは幸せなんですよ」

「そうがやそうがや、ラサキの料理を食べるのはあたいたちだけがや」


 お前らは嫁の自覚があるのか? 恥ずかしいと思わないのか? いつも俺に作らせて。

 ……いいけどさ。


 その夜三人は、更に驚いていた。それは風呂だ。

 風呂のお湯を、サリアの魔法で出して貰ったら、まず先にフェーニ達三人に入ってもらった。それはそうだよ、長旅だった三人には早く入って欲しいと思ったから。

 でもこれで、ファルタリアとサリアが一緒に入ったら、お決まりのちんこ、が出るだろうと眼に見えている。

 なので一緒に入るのは止めさせておいた。何故か残念そうな表情の二人だったけど、無視だ。

 風呂でくつろぎ、旅の疲れを癒して温まって出てきた三人は、可愛い寝巻を着て出てきた。いつも着ているのだろう、三人とも似合っていて可愛いな。

 フェーニは黄色、ミケリは桃色、ルージュは髪に合わせたのかな、薄紫色だった。うん、そう、これが普通だよな。湯上りで寝る前の姿はこうでなくちゃいけないよ。

 フェーニ達が寝る前の挨拶をしてきた。


「では寝ます。ラサキさん、お休みなさい」

「おやすみなさいニャ」

「いいお湯加減でした。おやすみなさい」

「ああ、長旅で疲れているだろうから、ゆっくり休むといいよ」


 三人は、ファルタリア達にも挨拶して、各々の部屋に入った。

 一息して、和む居間でサリアが俺を見る。


「今日の番はあたいがや」


 眼をキラつかせて頭を左右に振りながら、透き通った綺麗な白髪を揺らしている笑顔のサリア。


「あ? ああ、そうだね」

「風呂に入るがや」

「では私も一緒に入ります」


 そう言って二人は風呂に入って行ったよ。これは俺のお勤めだし約束は守らないとな。あ、別に嫌々では無いよ。

 三人ともそれぞれ俺の理想だし、好みだからさ。今コーマは消えたままで、帰ってこないようだ。

 一息ついた時、風呂からファルタリアの大声が聞こえた。


「ラサキさーん! 来てくださーい!」


 おいおい、フェーニ達に聞こえるだろ。あいつらは全く気にし無しだな。はぁ、風呂も今まで通りのお勤めだし、入るか。

 そしていつもの如く、一緒に入った。サリアは仰向けになって、お湯に浮かんで、ちんこの歌を歌っている中で、ファルタリアの尻尾をモフッている俺。

 それはそれで楽しいから良しとしよう。

 三人で風呂を出たら、ん? 居間に三人の気配がした。

 さっさと体を拭いて、素っ裸で居間に出て行くファルタリアとサリアの姿を、旅の疲れがひどく、それとも俺たちの家に来て興奮して寝付けないのか、居間の椅子に座っていたフェーニ達が見ていた。


「ええぇ? ファルタリアさんとサリアさん? は、裸ですかぁ?」

「は、裸ニャ。全裸ニャ」

「は、恥ずかしくないのですか?」


 その言葉に反して、え? と言うハテナ顔で動じない、三人に向き直り、仁王立ちのファルタリアとサリア。


「え? 我が家ではこれが普通ですよ」

「そうがや普通がや」

「そ、そうなのですか? な、なるほど……わ、わかりました」


 その直後、会話を聞いて慌てた俺が、寝巻で出て行きフェーニたちに諭す。


「おいおい、これはファルタリアとサリアだけの行動だから真似しないようにね」


 何故か俺に、疑問の表情を向けた三人。何となく、フェーニ、ミケリ、ルージュは三者三様で納得していないようだ。

 頼むから同じ事は止めてくれよ。

 そして就寝。


 翌日早朝、ファルタリアたちは、俺が寝ている間に静かに起きてフェーニ、ミケリ、ルージュを引き連れ森に入った。

 はい、昨晩はサリアを、しっかり可愛がりましたよ。

 眼が覚めるとコーマが、いつも以上に密着して寝ていた。

 ――昨晩はサリアだったからかな。

 コーマも目覚める。


「ラサキおはよう」

「ああ、おはよう。まだ三人の前に現れないでいいのか?」

「もう大丈夫かな、いいわよ」


 フェーニ達を家族と認めてくれたコーマ。

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