第18話 再会
会話が届く辺りまで来た、ファルタリアを含む四人。
「おお、来たのか。道中苦労しなかったか? ご苦労様だったね」
「「「はい!」」」
「元気か?」
先頭にいたリーダー格? のフェーニが答えた。
「はい、お陰様で三人とも無事元気です」
荷物もあるし、取り急ぎ三人に、家に招き入れ部屋に案内した。
「私だけの部屋ですか? 使っていいのですか? 嬉しいです」
「う、嬉しいニャ」
「ええぇ? いいのですか? ボ、ボクの部屋……う、嬉しいです、感激です」
「三人の為に造っておいたから自由に使っていいよ。荷物の整理が終わって落ち着いたら来るように」
三人は思い思いに、決められた自分の部屋に入って行った。
うーん、一気に大所帯になったな。食事に関しては、大量に食べる三人がいるから大した事じゃない。
問題は食料の在庫の確保だ。これからは三人の今後を、ファルタリアとサリアに分担して着いてもらおう。
レムルの森での生活は、何事も覚えないとね。
樹海に入って討伐しているから、レムルの森での生活は、大した負担ではないだろう。
そして、三人が部屋から出てきて居間のテーブルに並べた椅子に座る。
テーブルを囲んで椅子に座る俺達三人。コーマはまだ、様子を見てから現れる、と言って消えていた。 神ともなると、色々と大変なんだな。
じっくりと室内を見回していた三人だったけど、フェーニが話を切り出す。
「凄いお家ですね。私も住めるなんて夢のようです」
可愛い笑顔のミケリは、尻尾を大きく揺らす。
「部屋もあるニャ。初めてニャ」
ダイナマイトだけど、恐縮しているルージュ。
「ボ、ボクも自分の部屋なんて、夢にも思っていなかったから、何と言っていいのやら……ありがとうございます」
話しを聞いている、嬉しそうなファルタリアは終始笑顔だ。
「いいのよ、自分の家だと思ってね」
「お前が言うな。ファルタリアも押しかけて来た組だろ」
意志に反して驚くファルタリア。
「ええぇ? あの時はラサキさんが一緒に住もうって」
「言わない、言っていない。これっぽっちも言ってない。ファルタリアが勘違いして、勝手に家を売り払ってここへ押しかけて来たんだろ、だから仕方なしに了承したんだよ」
「あ、え、エヘヘ」
「エヘヘ、じゃない」
続けてサリアが話をする。
「ギナレスの町から、どうやってここまで来たかや?」
代表してフェーニが、しっかり前を向いて話す。
「はい。数週間前に樹海の討伐からギナレスの町に帰って来て、ギルドで褒賞を貰った後テーブルを囲み、そろそろレムルの森に出立しようかと話し合ったら、二人共賛同したので準備をしました」
フェーニ曰く、ギナレスの町あるギルドだけで収まらず、町の外でも有名になった三人。
蓄えも十分すぎる程貯まったので、レムルの森に行く計画を立てた。フェーニとミケリは孤児なので、束縛もされず何の問題も無い。
ただ、ルージュは両親がいるので了解を得るために話をしに行ったら拍子抜けだった。すでに、ラサキさんと話は付いているので、是非行きなさい、と急かすように賛成してもらった。
そして準備をした三人は、ギナレスの町を出立した。
工程は、俺達の行った同じ方向に進まず、戻る形でララギの町からヴェンタの町を経由して、リベラ山からマハリクの町を通り過ぎ、レムルの森までやって来た。
道中は魔物も現れたが、三人とも強くなっているので、街道に現れるくらいの魔物は苦も無く簡単に倒した。
「でも、ギナレスの町で有名になって稼ぎも良くなったんだから、そのまま町に残っても良かったんじゃないのか? それに三人ともこれだけ綺麗になったのだから、言い寄る男もいただろ」
「はい、確かにそう言う事はありましたけど、蹴散らしました」
「え? 蹴散らした?」
「冒険者を始め、領主の息子と名乗る輩が何人も来ましたが、ラサキさんと比べても、への役にも立たないような、へたればかりだったので……」
フェーニ曰く、言い寄る男どもと試合をして、勝ったら受け入れる事を話して、ことごとくコテンパンに打ち負かした。町にも話が広まり、最終的には誰も来なくなった。
「誰かいい男もいたんじゃないのか? 勿体ない」
否定的な俺に、口を尖らせ怒った表情で話すフェーニ。
「それでは目標が無くなってしまいます。私達はラサキさんの……に、肉奴隷になるのが夢ですから」
二人共同調して返事をする。
「「はいっ」」
はい? あれって今も真に受けていたのか? どうしたものか考えようとしたら、ファルタリアが笑顔で割って話す。
「大丈夫よ。ラサキさんは肉奴隷になんかしないわよ。私もサリアさんも、今ではラサキさんのお嫁さんになっているの。エヘヘ」
驚き顔を見合わせた三人は、振り返りファルタリアを見つめた。
「ええぇ? お嫁さんですかぁ? な、何て羨ましい」
「う、羨ましいニャ」
「ボ、ボクも……」
こいつらは何を言い出すんだ。
「い、いや、ま、待て待て。お前達はまだ若いんだから自由にしろ。この家に住んでいいから、ゆっくりと、じっくりと、しっかりとよく考えて、考えて、考え抜いてから決める事。いいね」
「「「はい」」」
「わかりました」
「わかったニャ」
「決して変わる事はありませんが、一応、承諾します」
変な方向に行きそうだったけど、その後はファルタリアとサリアに頼んで、三人を連れて狩りに出かけて行ってもらった。
見送っていたら、後ろから抱きついて来たのはコーマだった。
「ラサキも大変ね。ウフフ」
「おいおい、他人事じゃないだろ。この先どうするんだよ」
「ラサキの好きなようにすればいいのよ。私は構わないからね」
「のんびりしたいんだけどな。俺もしばらくあの三人の様子を見る事にしするよ」
「フーン。ウフフ」
コーマも含み笑いをしているし、全く。
さて、気にしても仕方がないから夕食の準備をしようか。おっ、とその前に倉庫から大きいテーブルを運んでこないとね。
部屋を増やしている時に思い出したのがテーブルだった。今まで四人用だったけど、念のために用意しておいたのが功を奏したかな。
一〇人は座れる木製の長方形のテーブルを居間に運び入れた。強化された腕力があるっていいことだな、簡単に一人で持ち運べるしさ。
今までのテーブルは外に出し、元々あるテーブルの隣に置いた。全員で外に出たら座る席が無くなるからさ。二つに分かれる事は、致し方ないだろう。
――そして、日も傾き暮れて来た。




