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第16話 また日常

 俺はベッドで横たわっているコーマを、上から両手を広げて抱き寄せる。


「ううん? いいのよ。好きよ、可愛がってね、ラサキ」


 その夜、ご要望通り目一杯可愛がったことは、言うまでもない。

 だがしかし、俺のお勤め、はこれで終わらなかった。

 いつもなら満足して、スウスウ、と眠るコーマが、いたずらっ子の笑みを浮かべ、嬉しそうに起きている。

 そしてベッドを降り立ちあがる。

 ――なんだ?

 扉に手を掛け、開けるコーマ。


「いいわよ、私は可愛がってもらったから」


 な、なんだ? 入口の扉が静かに開く。


「はい……失礼します」


 肌着一枚羽織ったファルタリアが、背中を丸めオズオズ、と部屋に入って来て、ベッドにいる俺の横に収まる。

 興奮しているのか、毛並みの良い金色の尻尾が、いつもの倍に膨らんでいるぞ。

 そんなことより、なんだ? どうした? なんなんだ? どうしてこうなっている?


「な、何しているのかな?」


 赤ら顔のファルタリアは、うずくまって恥ずかしそうに俺を見ていない。


「え? は、はい。コーマさんの承諾を貰いまして……あの。お風呂で……特別だと……」

「はい? 何それ」

「見られていても、私は一向に構いませんよ。エヘヘ」


 コーマが不敵な笑顔になる。


「私が見たいの。消えているから大丈夫よ。しっかり可愛がってあげて」

「そんな事、コーマならいつでも消えて見られるだろ。何で今更」

「ダメ。今夜、今がいいの。ウフフ」


 俺はそう言う趣味は無いんだけど、こいつらは話がまとまっているようで止めない気だよ。

 ――って事は。


「次はサリアが待機しているのか?」

「あ、はい、隣の部屋で待っていますよ。エヘヘ」

「エヘヘ、じゃない」


 笑顔で手を振りながら消えて行くコーマ。

 はぁぁ……頑張ろう、俺。

 で、結局コーマの思惑通りファルタリアを可愛がり、事が終わって満足した妖艶なファルタリア。


「フゥ、ありがとうございました。これでよく眠れます、おやすみなさい」


 余韻に浸りながら尻尾を揺らし、部屋を出て行った。交代でサリアが、待ってました、と、にこやかに入って来たので、同じように可愛がりましたよ。

 そして……。


「嬉しいがや、おやすみがや」


 サリアも、ほぅ、と赤ら顔で余韻に浸りながら、小柄ながらも色っぽく艶っぽく、白く透き通った長い髪を揺らしながら、満足して部屋に戻って行った。

 だー、さすがに疲れた。ベッドに仰向けになって寝転がった。

 すぐに現れて、隣に引っ付くコーマに聞いたら、横から上から下から前から後ろから、楽しく観察していたらしい。神なのに結構助平なんだな。

 ――夜も更けて行く。

 一段と強い疲れもあって、深い眠りに着いた。


 翌朝は眼ざめも遅く、窓から日差しが差し込む。眩しさに眼が覚め、薄眼で天井を見ている。

 コーマは隣で、足を俺の足に絡めて安心した表情で寝ている。

 昨晩は色々とあったけど、俺への愛情表現としておくよ。三人とも三者三様で綺麗だし可愛いから許そう。

 ゆっくり起き上がるとコーマも目覚める。


「おはようラサキ」

「おはよう」

「私は幸せよ。ウフフ」

「だからギュウギュウ押し付けて密着しなくていいから。もう嫁なんだからさ」

「ウフフ。うん、そうだけど、これはラサキにしか出来ないから。ウフフ」

「それを言われたら元も子もないけどさ」


 そう言ってコーマを、そっと放して起き上がりベッドを降りる。起こそうと、隣の部屋に行ったら、ベッドにはもう二人はいなかった。

 早朝から狩りに言っているようだね、有言実行で偉いな。部屋に戻って、まだ横になっているコーマの隣に寝転がり話す。


「二人は狩りに出たようで居ないよ」

「うん、まだ薄暗いうちに出かけて行ったわよ」

「さすが俺の嫁たちだな。昨日言った事を有言実行して守っているし」

「ゴメンね、私は何も出来ないから……」

「コーマは神なんだから楽しんでよ。でも、昨晩の事はもうやめてほしいな」

「ありがと。うん、わかった……ん」


 狩りに出ている二人を待ちながら、朝食の用意をしよう。食器を取り出し並べていれば、二人が帰って来た。

 扉を開き入って来る、英気を養ったような元気? なファルタリアとサリア。


「ただいま帰りましたー」

「帰ったがやー」

「おう、おかえり。どうだった?」

「はい、外を見てください」

「見るがや。アハハー」


 連れられて外に出て見れば、鹿が二頭、猪が三頭、横たわっていた。


「おお、凄い収穫だな。これで暫くは食料に困らないよ。よくやったね」

「エヘヘ。獣がいつもより多くいましたよ」


 サリアも同調する。


「森の果物や野菜も、多く大きく実ってたがや。あ、ラサキの畑も……」


 急に話しを濁すサリア。 え? 森で何か起こっているのか?

 畑に行って見ると、耕して種をまき、収穫までしばらく期間があると思っていたら、畑一面野菜がたわわにびっしり実っていた。


「何だぁ? こんなに早く育たないんだけどな」


 そこに精霊の、唯一話のできるリズレアーナさんが飛んで来た。


「こんにちは。ラサキさんが出かけている間に手伝っておきました」

「あ、ああ、そうだったのか、ありがとう。でも、成長が早くないか?」

「えー、はい。私達精霊が住むと森の木々が活性化するのです。そして、ラサキさんの畑には、私達の力を注いだので土壌も良くなり、成長が早くなり豊作になっています」

「それはありがたいな。改めて礼を言おう」

「いいのですよ、これ位訳ないです。ラサキさんの御手を煩わせず、実ったら収穫してください」


 これからの畑の仕事は、お言葉に甘え、精霊達に任せる事にしよう。

 家に戻ると、サリア達がフォークとナイフを両手に持って、立ててテーブルの椅子に座っていた。

 何だか可愛い光景だな。


「ラサキー、お腹が空いたがや。待っていたがや」

「ラサキさん、獣の肉は一頭を仕分けておきました」

「お腹減った。早く食べたい」

「ああ、今作るよ、待ってな」


 ファルタリアに仕分けてもらった肉と、サリアに採って来てもらった野菜で、香辛料を効かせた煮込み料理を作ってテーブルに出す。


「はいよ、お待たせ。熱いからゆっくり食べなよ」


 さっそく、フーフーしながら食べ始めた。


「ハフハフ、ラハキはん、おいひいでふ」

「ラハキ、おいひいがや」

「フーフー、美味しいね。あむ」

「まだあるからどうぞ」


 三人が食べているうちに、別の鍋でお代わりを作っておいた。勿論三人は順番にお代わりをして完食していたよ。

 俺? 俺は妖精の果物を食べて終了した。三人と違って生身の人族だし、酒も飲むし、太るのが嫌だからね。

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