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第10話 小旅行

 まだ日も昇る気配も無い、暗い中、眼を覚ます。

 まずは、右胸に乗せている、コーマの頭を静かに枕に下ろす。今日は本気で寝ているようだ。

 次に、左側でファルタリアが、脇胸とベッドの間に顔をうずめて爆睡しているので上半身を起こし、俺の腹から足に掛けてホールドしている手足を、少し強引に外す。これは本気で寝入っているな。

 最後は、サリアが乗せている頭を、俺の股間からどかす。寝辛くないのか?

 三人を起こさないようにベッドから降り、部屋を出て着替える。一つ伸びをして台所で一仕込みする。

 早くから出立するので、簡単な朝食を作ると、その匂いに誘われたのか仲良く起きて来た。


「おはよう、食べたら準備して行くよ」


 まだ薄暗い中、家に鍵を掛けたら、レムルの森を降り街道に出る。行き慣れた右に行く道とは反対歩き出す。

 一度も行かなかったマハリクの町につながる道。

 道のりはシャルテンの町より遠いので、歩いて行くと町で一泊する事になる。こうなると久しぶりの旅行気分だね、三人とも三者三様で楽しそうだ。

 途中、左に曲がる街道があった。ヴェルデル王国に向かっている道だ。勿論行かないし、今後も行く事は無いだろうから通り過ぎた。

 俺の横を後ろ手に、頭と銀髪を揺らし笑顔で歩くコーマ。


「早く皿食食べたいね。ウフフ」


 そのすぐ後ろをサリアと並んで歩いて、また、ちんこの話をしていたファルタリア。


「どんな町ですかねー、楽しみです。エヘヘ」

「あたいも早く見たいがやー。アハハー」


 日も昇り始め、爽やかな風がそよいでいる。所々に浮いている綿のような雲が、左から右にゆっくりと流れ空も青い。

 サリアやファルタリアの綺麗な髪や、大きい尻尾が風にたなびいている。コーマの銀髪も綺麗に流れている。

 こうして見れば、見た目は違うけど綺麗でスタイルのいい三人なんだよな、俺の嫁になるなんて結構物好きなのかもしれない、何て一人感じていた。

 道中気持ちも良く、他愛もない話しに一喜一憂しながら歩いてマハリクの町に向かう。

 ただ途中、一つ疑問が生じてコーマに聞いてみた。


「コーマは神なんだから、マハリクの町がどういう町か知っているんじゃないのか?」


 予想に反して疑問の表情になるコーマ。


「ううん、知らない。どうして?」

「お勤めがてらに町や国を見て回れるだろ? だからさ」

「ラサキと一緒に行く場所には行っていないし、それに先に知りたくないから行かない」

「ん? なんで?」

「だってラサキとの生活がつまらなくなるでしょ。折角のつがいなんだから楽しまないとね。ウフフ」

「仕事しなくていいのか? そういうお勤めもあるだろ?」

「いいのよ。ウフフ」

「そうか、コーマがそう言うならいいさ、楽しもう」


 そして四人、ワイワイ、とまたも楽しく他愛もない話しを、談笑しながら歩いた。


 そろそろ日も真上になりそうで、日差しが強くなる。

 昼も近くなったので、街道脇で四人が囲んで座れそうな木陰に入り昼食にする。

 自宅から直接出立したので携帯食では無い。マハリクの町まで、あと半日ほどだし保存もいらないから俺が作った弁当だ。

 まだ寝ている朝、暗いうちから四人分の弁当を作ったよ。料理を大きい葉に包んで、各自に朝渡しておいた弁当を、腰袋から出して思い思いに広げる。

 中から出てきたのは、鹿肉を一口サイズに揚げた、から揚げと茹でたイモ。手短に簡単で多く作れる料理だからね。

 さっそく三人とも、から揚げを頬張って食べていた。


「ラサキ、美味しいよ」

「ラサキさん、いつもお手数おかけします。美味しいです」

「ラサキはいい主夫になるがや。アハハー、あむ」

「今日はゆっくり食べようね」


 三人の弁当には、俺の量の倍近くを作って入れてあるから問題ないだろう。

 食べている間も、マハリクの町はどう行った所か、など談笑しながらゆっくりと食べた。

 でも、お前達の為に早起きして作ったんだし、少しくらいは感謝して欲しかったな。ま、いいんだけどさ。

 食後はすぐに出立せず、柔らかい木漏れ日の中が心地よく、睡魔が襲ってきたので一眠りする。

 ユッタリと広いのに、三人はいつもの定位置で、スウスウ、と寝ている。何事も起こらずに気持ちよく目が覚め、すっきりした気分だ。

 街道脇なのに、俺も含め無防備に寝ていてた四人なのに、何も起きなかった。コーマは兎も角、二人とも強いからさ、問題ないだろ。

 俺の胸に頭を乗せているコーマが眼覚める。


「気持ちいいね」


 ファルタリアは眠そうに上半身を起こし、片手を口に当てて欠伸をする。


「ファァー、おはようございます」


 同じ様に両手で伸びをするサリア。


「うーん、よく寝たがや、まだ元気がや」

「よし行くか」


 全員が起きて、街道も木漏れ日の差す、柔らかい緑の景色の中を歩き続けた。


 日も傾き夕暮れが迫って来る頃、前方に高い塀が木の陰から見えている。あれがマハリクの町だな。

 歩くことしばし、検問所に到着した。町の入口は他の町と変わらないけど少し重々しい、いや、寒々しい、と言ったほうがいいのかな。

 コーマが、後でね、と消えて行った。

 待っている人も少なく、何事も無く、苦も無くすぐに通され町の中に入れた。街並みは石積みの家が立ち並んでいたけど、特に何があると言う訳でもなく、ごく普通の町だった。

 人通りも少ないが、店は開いているようだ。何とも暗い町だな。

 そう言う町だからなのか、俺達は浮いていた。

 コーマは消えればいいけど、隣に立っている金色の髪と尻尾が艶やかで、ピンとした耳が凛々しく、美しくスタイルも良い獣人ファルタリアが、不自然にバトルアックスを背負っている。

 反対側の隣に立っている、背も低く幼くもスレンダーで、透き通った綺麗な白髪の可愛いサリア。

 周囲の人々が、興味本位に俺達を視感していた。やはり変な町なのか。

 俺が周囲から、好奇の眼で見ている、住人らしき人たちに眼を向ければ眼を逸らし、なに食わぬ顔で離れて行った。

 ま、危害も無いから気にするのはよそう、変な誤解で捕まっても嫌だしさ。

 ――とりあえず宿を探そうか。

 三人で街並みを見ながら歩き、検問所で聞いた宿屋街に行ったら、数軒の宿屋が軒を連ねている。

 人の出入りはどこも少なく、いいか悪いか判断に迷うな。

 仕方がないので、立ち並ぶ宿屋の前を通りながら中の様子を眺めた。


「どうする? いい宿屋かわからないな」

「私はラサキさんにお任せします」

「あたいも任せるがやー」


 あ、そこは俺任せか、結構投槍なんだな。そう思いながら宿屋が無くなって、来た道を戻る。

 もう一度宿の中を眺めていたら、廻りの宿屋に見えないように入口の脇から、女の子が恐る恐る手招きしている。

 騙すつもりもなさそうだからその宿に入った。

 招き入れた女の子は、身長一四〇センチくらいか、一六歳ほどの赤髪が肩まである痩せ細った子だった。

 もっと福与かになれば美人になるのにな。と言うくらい痩せていた。

 その女の子が、オドオドして話し出す。


「ああ、ありがとうございます、やや、雇われ店主のクリケと言います。ここ、この宿はいい宿です。どど、どうでしょうか」

「いいよ、ここに決めるよ。四人部屋はあるかな」

「すす、すみません、二人部屋だけです」


 入ってしまったし、文句を言っても仕方がない。


「しかたないな二人部屋を二つ頼もうか」


 そこに一歩前に出た、ファルタリアが口を挿んだ。

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