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第 9話 日常 9

 ファルタリアは嫁になった余裕なのか、普通に後からついて来ている。

 ハイテンションなサリアは、握っていた手を離すと、長い艶やかな白髪をなびかせ、小走りで森の奥に進んで行く。

 俺が指示した方向に先に行って、妖精がいる場所に着いていた。

 青い羽根を持った妖精がウンディーネ。

 透明な羽を持った妖精がシルフ。

 薄茶色の羽がノーム。

 緑色の羽がドライアド。

 水、風、地、木を司る妖精たちが見えていた。

 サリアはさっそく妖精たちと再会を喜び、簡単なあいさつをして和やかに話を始める。

 その間、俺とファルタリアは暇を持て余しているので。


「ファルタリア、久しぶりに手合せするか?」


 笑顔になるファルタリアが大きな尻尾を嬉しそうに揺らす。


「いいですね、鈍っていたところです、やりましょう」


 サリアたちの邪魔にならないように、場所を移動しようとしたら、腕を組んで来るファルタリア。


「エヘヘ、楽しみです」


 いつになく嬉しそうなので、好きにさせておいた。デートの気分なのかな。

 比較的広い場所に出たので、対峙し構える。


「ラサキさん、行きまーす。フンッ!」


 言った先からすぐに、素早い踏み込みでバトルアックスを中段から横一線、薙ぎ払ってくる。俺はそれを剣でまともに受けた。

 大きな鈍い金属音と共にバトルアックスを止め、微動だにしない俺に驚くファルタリア。


「え?」

「行くよ」


 すかさず剣を切り替え、ファルタリアの頭上から剣を下す。が、そこは強くなったファルタリア。

 瞬時に反応して切り返し、いとも簡単にバトルアックスで受け流し、今度はその流れを利用し反転して腰を落とし逆袈裟懸けで下から攻撃してくる。

 速いな、その一撃も剣で受け一度後方に飛ぶ。この間一秒足らず。

 さらに強くなったな、こうも簡単に素早くバトルアックスを振り回せるなら、もうファルタリアと対等に戦える冒険者はいないんじゃないのか? しかもカッコいいぞ。

 これはお世辞では無く、戦士としての姿が本当に様になっていた。

 昔、ファルタリアと出会った頃、ギルドの受付嬢レニに言われたっけ。


「フォックスピープルとキャットピープルは、強くなれないから需要が無いのです」


 うん、それはデマだな。今ではファルタリアはこの通り、何処に出してもおかしくない最強だし、ミケリもあれから今も鍛錬しているだろうから、相当強くなっているんじゃないのかな。

 そう思ったら嬉しくなった。

 その後も手を合わせて攻防し、ファルタリアの疲労が出始めたので、きりの良い所で剣を収めた。


「ハァハァ、ラサキさん、ハァハァ、ありがとうございました。ハァハァ」

「お疲れ様、強くなったよ」

「フゥフゥ、そうですか? ラサキさんと手合せすると、強くなった気がしないのですが。フゥ」

「一応コーマに世界最強? にしてもらっているからね。この剣さばきに付いてこられるだけでファルタリアも上位の強さを誇っていいよ」

「フゥ、そうですか? 嬉しいです、まだまだ鍛錬します。エヘヘ」


 ファルタリアは腰を落とし息を整えている。

 一息ついて、今の攻防の反省点をファルタリアに教えていたら、サリアが妖精と一緒にやって来た。

 サリアが言うには妖精たちの希望は特に無く、気にする事も無い、好き勝手に生活するだけだから住める場所があれば言い、それだけだった。

 その恩恵として中位より下の魔物はいなくなる。元々この森には上位の魔物はいないから丁度いいね。

 そして、野菜や果物も早く大きく豊富に育つ。更に妖精がいないと育たない果物も、次期に芽生え育つ。妖精の持つ力は地味に凄いよ。

 いい森になるのであれば歓迎するよ。


 妖精達がやってきて数日。

 今日も打合せ、と称して妖精のいる場所へ、遊びに行って来たサリアが言うには、言い忘れていたけど、後発で森の精霊も一緒にやって来たとの事。


「別にいいよ、今さら気にする事じゃないからさ、どうぞご自由に、と伝えておいて」

「あたいもラサキが優しい事を知ってるがや、だからもう言っておいたがや」


 やりたいように好きに住んでください。せっかく来てくれたんだ、変に干渉しても悪いしね。

 それからも普通な日常を過ごしているけど、森の一画では、至る場所で妖精や精霊が、楽しそうに飛び回っているのを見ると賑やかだな、と感じた。

 それに合わせ森の木々や植物の緑が濃く、生き生きとしてくるように見え始めている。

 ただファルタリアだけが、妖精や精霊を見ることが出来ないけど、気にしている様子は無かった。


「私はラサキさんがいればいいです。エヘヘ」


 最近なんというか嫁になってからという物の、余裕な態度をしているファルタリアの、自信に満ち溢れた姿が凄いと思った。

 更に毛並みも艶やかに、大きい尻尾も揺れ、容姿、体型共に美しく変貌しているし。


 精霊達のいる日常に慣れた頃、コーマが痺れを切らしたので皿食を食べにシャルテンの町に行った。

 いつものようにギルドの横で肉を売っていた時、受付嬢のレニが俺に用があるらしく中から小走りにやってくる。


「あ、いたいたラサキさん」

「ん? レニか、どうかしたのかな?」

「以前に話をしたマハリクの町と、つい先日連絡がとれました。今では問題なく町に入れますよ」


 レニ曰く、王国寄りのマハリクの町は、いい噂が無く、悪い方向に向かっていた。

 俺達が初めての旅行に出立した当初、確かにマハリクの町とヴェルデル王国は繋がりがあった。

 でもそれは他の周囲の町と同じ物資などが大半で、唯一違うのが魔法が使える人、つまり魔法使いを斡旋していた事があったからだ。

 その話は噂で各町や村に広まって行った。ほんの少しの魔法でも使えれば王国に召集され、生活も約束されたらしい。

 ただ、試験や鍛錬で戦力にならなければすぐに弾かれると言う厳しさもあった。

 なるほどね、懲りずにまた戦争か。閉鎖的だったから噂に尾ひれがついて悪い方に向かって行った。そう言う事か。

 王国の戦争、と言う影響もあったのかもしれないけど、今では町の中は、もうそんな事も無く大丈夫との事。

 なら、折角だから一度行って見ようか。


 その夜、三人とテーブルを囲み楽しく食事をして一息ついた時に話をする。


「なあ、以前の旅行で行かなかったマハリクの町に、行って見ようと思っているんだけど、どうかな」

「うん、行く」

「いいですね、行きましょう。楽しみです」

「おお、新しい町かや? 行くがや、行くがやー」


 訳も聞かずに即答だった。ああ、わかったよ、気にする事は微塵も無いのね。

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