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第 4話 日常 4 手合せ

 丁度いい地合いだから、俺も休憩と称して四人と仲良く木陰に入って、座りこんで話をする。俺の疑問に話を切り出すコーマ。


「二人のそれは子孫を残し、そして繁栄を願うこと意味するのよ、頑張ってね。ウフフ」


 コーマの発言に驚いた。


「え? そ、そうなのか?」


 確かにファルタリアはハーフと言っていたから、出来たらクォーターになるのかな。

 サリアも魔女だけど人族になるのか?

 そうか、なら受け入れようか。子供が出来ないコーマには悪い気がするけど、出来たら出来たで楽しくなりそうだしね。


「でもラサキ。獣人と魔女の子供はなかなか出来ないのよ」

「そうなのか?」


 知らない事ばかりだな。コーマ様様だよ。


「それが昔から言われている事なの。でも沢山すれば確率は上がるけどね。ウフフ」

「コーマが喜ぶことじゃないだろ」

「私は構わないわよ」


 もう何でもいいや、笑うだけだよ、笑顔で答えた。


「わかったよ、ハハハ、運に任せよう」


 そこで一つの疑問が出た。

 俺の嫁は、神と獣人と魔女だ。


「……人の嫁がいないんだよな」


 あ、思わず声に出てしまった。焦った俺を余所に笑顔のファルタリアは、気にもせず、変な事を言い出す。


「大丈夫ですよ、ネルネさんとリリーニャさんがいますよ」


 サリアも笑顔だ。


「安心するがや、ルージュもいるがや、ピチピチがや。アハハー」

「おいおい、二人とも止めとけよ。ルージュはともかく二人は来るか来ないかわからないだろ。それにルージュもサリア直伝だから、魔女に近いんじゃないのか?」


 そもそも俺の嫁にはならないだろ。相手の気持ちを察してやれよ。

 そこに、いたずらっ子の笑みを見せるコーマ。


「ウフフ、それは知らないわ。ラサキ次第じゃないの? ウフフ」

「俺次第ってなんだよ」

「さあ、頑張ってね。ウフフ」

「おい、コーマ、何をがんばるんだよ」


 滅多に無い反論する俺に対し含み笑いを残し、お勤めがある、と消えて行ったコーマ。

 本当か? 多分嘘だな。逃げたよ全く。最近コーマも嫁になって、性格が変わったのか?

 ま、気にする事ではないだろ。二人も冗談半分で言ってみただけだろうし、俺も三人の嫁で十分幸せだし充実しているからさ。

さて、三人と別れ、作業再開だ。


 畑の作業も一段落して、果物や野菜が実るのを待つばかりになった。健やかに成長してくれよ。数か月後が楽しみだな。

 時間もあるので、久しぶりに鍬から剣に持ちかえ、一人剣技を踏まえた鍛錬していると、狩りに言っていたファルタリアとサリアが帰って来た。

 ファルタリアは獲った大きな鹿を軽々と肩に担ぎ、サリアは採った果物をかご沢山に入れて持っている。


「ラサキさーん、今日も獲れましたー」

「ラサキ、果物はこれくらいでいいかや?」

「うん、さすがだね、十分上出来だよ」


 俺の持っている剣を見るファルタリア。


「鍛錬していたのですか?」

「あ、ああ。鈍っても良くないし時間もあるからね」


 嬉しそうに食いついてくるファルタリア。


「そうなんです。私もそう思っていました。先日もサリアさんと話して同じ意見でした」

「じゃ、一緒にするか?」

「はい、その前に荷物を置いてきますね」


 二人は獲物とかごを家に置きに行き、ファルタリアだけが嬉しそうに、艶やかな金色の尻尾を揺らしながら走って戻って来た。

 サリアは家の中でお茶を飲んでいると言う。ここでの鍛錬は手狭なので少し広い場所に移動して鍛錬を始める事にした。

 両者構え、手合せを始める。

 ファルタリアの相手をしていると感じた。バトルアックスを自分の手のように軽やかに、俊敏に、正確に打ってくる。

 高速で攻撃して来る様は、以前より相当強くなっているよ。コーマに強化してもらわなかったら完全に負けているな。

 多分樹海の討伐で鍛錬したのが良かったのだろう。


「ハァハァ、久しぶりに思い切り鍛錬できていい感じです。ハァハァ」

「ファルタリアは強くなっているよ」

「フゥ、鈍っていませんか? なら良かったです。フゥ」


 暫くして装備したサリアが剣を持ってやってきた。え? サリアもやるのか?

 自分の体に合った長さで、刃渡り四〇センチ弱の片手剣のミスリルソード。そんな物何処に持っていたんだ? 魔法か何かかな――何でも有りだし、聞かないでおこう。


「サリアも鍛錬するのか?」

「少しだけがや」

「剣も使えるのか?」

「問題ないがや。あたいは剣も使えるがや」


 すると剣舞を始めるサリア。おお、機敏で結構速いな。それに、剣さばきはフェーニに近いよ。ファルタリア程ではないけど、実力はあるね。


「フゥ、こんな感じがや。どうかや?」

「いいね、結構強いだろ」

「それは知らんがや。久しぶりがや」

「サリアさん、凄いですよ」

「そうかや? アハハー」


 ファルタリアは、胸辺りで両手を叩くと思い立ったように話し出す。


「ラサキさん、激しい鍛錬も必要ですけど私、サリアさんと模擬戦がしたい、と思いました」

「あたいとかや? もちろんいいがや、やるかや?」


 魔法と剣でやるのか? ファルタリアが不利じゃないかな。

 そう言いだした二人は、やる気満々なので許可しましたよ。広めの場所に移動して準備をする二人。


「言っておくけど一対一の模擬戦と言う事を考えるようにな、特にサリア」

「わかっているがや、大きい範囲魔法は使わないがや」


 そして対峙する二人。

 中段でバトルアックスを構えるファルタリアはわかるけど、サリアが片手剣を構える姿は初めて見た。

 あのミスリルソードは片手でも振り回せる軽さなのかな。サリアにしっくりした構えで片手で剣を持ち、もう一つの片手の平をファルタリアに向ける。

 サリアはバトルアックスの一撃に耐えられるのか? でも始まったからには様子を見ていよう。

 軽い怪我くらいなら致し方が無いし、もう何も言わなかった。


「サリアさん行きますよ」

「来るがや」

「ハッ」


 まずファルタリアが速い一歩を踏み出し、重量級のバトルアックスを軽々とソードのようにサリアに振りかぶって薙ぎ払う。

 対するサリアは片手剣を両手に持ち替え、その重く速い一撃を受け止めた。反動で吹き飛ばされる、と思ったら大間違い。

 サリアは一歩も動かず、踏ん張ってファルタリアの一撃をうけ、自分で後方に飛んで構え直す。あの体制で受けきるなんて、これもまた理不尽な光景だな。

 そんな事を知っていたかのようにファルタリアも止まってはいない。そのままサリアの後を追うように踏み込んで連続で薙ぎ払う。

 そしてバトルアックスの重さを無視した変速攻撃がサリアを襲う。その攻撃も全て受けきったサリアが、また後方に飛んだ。


「あたいはこれでも世界最強の魔女がや」

「クッ、これではダメですか」


 反応してすぐに、ファルタリアも構え直す。

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