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第 3話 日常 3

翌朝は、早朝から家からすぐの場所にある畑を、鍬を両手に持ち、せっせ、と耕している。旅行から帰ってからは畑を少しずつ耕し、風呂を作っている時も時間があれば範囲を広げ耕していたんだ。

 以前と違い、毎日四人分の野菜と果物になれば、いくら森には豊富にあると言っても近場では採れなくなるからさ。

 もしかしたら、あの町の彼女達が来るであろうから、今後は少なくならないように始めておこうと考えた。

 まだ実ってはいないけど、森で採れた苗や球根、果物の種など植えた。この森ならすぐに実が生るだろう。

 こうした作業も嫌いじゃないし、むしろ楽しいと感じている。

 ファルタリアとサリアも、獣を獲りに行った帰りに、野菜や果物を採って来てくれたりする。そう感謝している時に、丁度二人が帰って来た。


「ラサキさーん、今日も猪が獲れましたー」

「ラサキー、野菜と珍しい果物がやー。アハハー」


 獲ってきた猪の下処理は、ファルタリアに指導したので今では普通にできている。上達していて上手いものだよ。

 苗や果物の種、野菜の管理は、樹海で生活し妖精や精霊に、植物の事を教えてもらったサリアには打って付けだった。


 今もレムルの森に建つ俺たちの家の魔物除けはコーマの力で寄ってこない。

 ただサリアも、魔物除けの魔法を使うと言い出した。


「あたいも魔法を使うがやー。魔力もほとんど減らないから安心がやー。アハハー」


 樹海では、自宅の周囲と身の回りに毎日使っていたらしいから、力が有り余っているのかな。

 まあ、今後はフェーニ達が合流するかもしれないから、コーマの力に頼れなくなる場合が出そうだし、これはサリアに頼ろう。

 ん? ファルタリアが涙目になって項垂れているよ、尻尾もしぼんでいるし。


「私は何も出来ないですぅ。すみませんラサキさん」

「そんな事はいいよ。ファルタリアには獣を獲ってもらって十分役に立っているよ。サリアは魔法が使えるからさ、気にするな」

「うう、でもぉ」

「ファルタリアは強くなったんだから、この先フェーニやミケリ、ルージュが来るかもしれないから、その時は彼女達を守ってくれればそれで十分だよ」


 納得したファルタリアは、明るい表情になった。


「はい、そうですね、そうします。ラサキさんは私が嫁になっても優しいですから更に、好き好き、ですね、もっとデレてもいいのですよ。今晩は私の番ですし、しっかり受け止めますよ。エヘヘ」


 嬉しそうなファルタリアを余所に、今日はいつもより多めに飲んでおこうかな、そんな気がする。夜も長いしそうしよう。

 虫の音が流れる中、夜も更けて行く。


 天高く雲一つ無い、突き抜けるような青空のいい天気。レムルの森を穏やかに吹き抜ける風が心地いい。適度な気温で、体を動かせば少しの汗がにじみ出る。

 屋根の上で俺は、セッセ、と家の増築工事に精を出す。森の中の丸太小屋だけど、コーマがくれたしっかりした造りの家だ。

 現状の間取りは、俺達の寝室ともう一室の二部屋、それに広い居間がある。その居間の端の壁をくり抜き三部屋を増築している。

 丁度俺達の部屋の反対側に位置している場所。ファルタリアとサリアの部屋も検討したけど。


「私はいりませんよラサキさん」

「ラサキ、あたいもいらないがや」


 と、ぬかしている二人は、俺の寝室から出て行こうとしない。ま、寝るだけなんだけどさ、しかたがないから許してあげよう。

 これは約束だし、決まっていた事だからいいけど、一応この家に向かって来るであろう彼女達の為に造っている。多分、突然やって来るだろうからさ。

 森の中から歩いて来る、大きな丸太を肩に担ぎ上げたファルタリアと束ねた縄を持ったサリア。


「ラサキさーん、丸太持ってきましたよー」

「ラサキ、蔓で編んだ縄はこれくらいでいいかや?」

「ああ、二人ともありがとう」

「何言っているのですか、私は嫁ですよ、嫁。これくらい簡単です、お安いご用です。エヘヘ」

「いいがやいいがや、嫁だから当たり前がや。何でも言うがいいがや。アハハー」


 この二人は、嫁になった途端「あなた―」とか「旦那様―」とか言ってきたけど、やんわり却下した。

 だって恥ずかしいだろ、複数の嫁からそう呼ばれるなんて、普通はそう思わないか? 

コーマからの呼び名は変わらなかったから、二人にも今まで通りにするように言って、渋々了承してもらったけど、あの二人の考えは何かが、いや、何処かが加速して行くような気がする。

 変な方向に行かなければいいのだけれど……。

 それでも幸せな暮らしをしている事は言うまでも無い。

 二人は家に入り、手分けして掃除や洗濯をしている。俺も家づくりを再開して暫らく。


「フゥ、こんな感じでどうかな。今日はこのくらいにしておくか」


 昔の世界で手伝った家づくりが、今になって功を奏した。当時は家づくりの依頼も多かったから、受けておいて良かったよ。


 コツコツ、と一か月ほどかけて、この度、六畳くらいの広さがある三部屋が完成した。何とかなったな。

 この三室は、フェーニ、ミケリ、ルージュの部屋だ。

 もしも、もしかしてだけど、ネルネ、リリーニャが来たら、部屋は、今空いている部屋だな。

 一室足りないけど、来ないかもしれないからこれで十分だろ。余計に造っても勿体ないしさ。

 本当にもしかして、全員が来たのなら、それから考えればいいし事だ。ベッドなど必要な家具は、追々揃えるとしよう。

 三人が嫁になったとはいえ、相変わらずな毎日だ。コーマは自由だし、ファルタリアとサリアは、ちんこの歌で盛り上がって掃除洗濯とかしているし、何も変わらないよ。

 みんな三者三様で楽しそうだから良しとしよう。


 今度は鍬を担ぎ移動して、畑を耕している時に、ファルタリアとサリアが話しながら歩いて来た。


「ラサキさんのちんこは、私達三人のものですよ。エヘヘ」

「そうがや、三人のものがや幸せがや。アハハー」

「ああ、ラサキさんのでっかいちんこっていいですねぇ」

「うん、そうがや。いいがやラサキのちんこ」

「おい、いい加減そこまでにしておけ」


 手を止めて二人を見る。

 二人とも大丈夫か? 少し変だとは思っていたけど、変が加速して本格的におかしくなったのか?

 そんな心配を余所に笑顔の二人。


「ラサキさーん、三人を相手にちんこは大丈夫ですかぁ?」

「あたいも心配がや。ちんこは元気かや?」

「お前達に心配されなくても元気だよ、全く」


 何で釣られて答えてんだ? 俺も同類になっているのか? しかも、俺の体よりちんこが気になるのか?


「だって心配ですよぉ」

「ラサキ、心配がや」


 嫁になった事で執着しているのか? そこに特化しているのか? 何も言えないでいると、そこにコーマが現れて嬉しそうに腕を組んで来る。

 今度は何が起こるのか? ――心配だな。

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