表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

56/164

第56話 依頼を受けた

 翌日の港

 依頼の漁船に案内され、四人で乗り込んだ。言わなくとも、コーマは問題なく乗船している。俺たちが立っている甲板は思ったより広いな。

 サリアが、はしゃいで走り回っていたら、漁師に怒られていたよ。

 奴隷だけど、直接言ってくれ、と前もって言っておいたから問題ない。俺が言うより効き目がありそうだからね。

 そのうち漁師も乗り込んで来て一〇数人になった。

 全員筋肉質で浅黒く、素手なら強いな。その中で、更に茶髪で強そうな強面の船長が出てきた。


「俺はこの船の船長の、バルガンだ。依頼を受けてくれてありがとうよ。要領はその都度教えるから、それまでは見学でもしてゆっくりしてくれや」

「一ついいかな。他の冒険者は、何でこの依頼を受けないのか? 試験を受けたけど簡単すぎだよ」


 少し困った顔のバルガンさん。


「それも後で教えるよ。それとも、身を持ってすぐに知るかな」


 まだ日も昇らない港を出港する。堤防を出れば、すぐに外洋だ。波もあり大型船だけど揺れ始める。

 大海原の波は大きく強いから、船も大きく波のうねりに合わせ、そこそこ揺れた。あ、わかったよ、他の冒険者達が受けないのは船酔いだ。

 大きく揺れる中、慣れた歩き方で船長のバルガンさんが来る。


「ラサキ、体の調子はどうだ? やれそうか?」

「ああ、全く問題ないよ。全員大丈夫だ」


 コーマとファルタリアは、並んで海を見ながら談笑しているし、サリアは揺れが楽しいのか、はしゃぎまわってまた漁師に怒られているし、それだけ元気だった。

 厳つい船長も、当たりをひいたように嬉しそうだ。


「今回は期待していいようだな。ラサキ、よろしく頼む」


 操舵室に戻って行くバルガンさん。色々大変なんだな、俺達も依頼された事はしっかりやろう。

 出向して一時間ほどが経った。進むのを止めて全員が周囲を探るように見まわしている。漁場に着いたようだね。

 魚影を探している一人の漁師から、すぐに声が上がった。


「いたぞー! 前方右舷に魚影だ!」


 船長の指示で、静かに魚の群れの中に入る。その魚群を逃がさないように、まき餌を投げ始めると海面に魚の群れが集まる。

 漁師達が釣竿を海に出し釣り始めると、すぐに様々な魚が釣れ始めた。釣り針は、小魚に似せた物が付いていて、投げ込むとすぐに釣れていた。

 体長五〇センチ程から一mを越える程の魚。力強い引きにも負けず、一本一本釣り上げられてくる。その様は、豪快そのものだった。

 釣り上げた魚が後ろの甲板に乗ると、勝手に釣り針から魚が外れる。そしてまた投げる、の繰り返しだよ、すぐ疲れるな。

 これじゃ、コーマ達が釣り出来るレベルじゃないだろ。引き込まれて危ないよ、と見回したらいない。

 あ、コーマはすでに漁師に混じって釣り始めているし、いとも簡単に釣り上げているし、とても楽しそうに釣り上げているし、次から次へと釣り上げているし。

 ファルタリアは兎も角、サリアも豪快に釣り上げていた。


「サリア、大丈夫か? 引き込まれるなよ」

「アハハー、ラサキ。簡単に釣れるがやー。アハハー、楽しいがやー」


 ファルタリアは、漁師と同じように力任せに釣り上げている。


「どっせーいっ! ラサキさーん、魚釣りって楽しいですねー。ウリャーッ!」


 はいはい、楽しんでください。俺は見ていますよ。後でサリアに聞いたら、重力魔法を使って魚の引きと重さを軽くしていた、との事。便利なものだな。

 しばらく楽しく釣っていたけど、疲れないのかね。三人とも笑顔のままだ。

 コーマとサリアは息切れしていない、けど、ファルタリアは疲れが出てきたようだね、息切れしているし。でも止めなかった。それだけ楽しいのかな。

 甲板が魚で山のように埋め尽くされる頃、釣れなくなり終了。

 さて、これからが俺の仕事だ。

 仕分けを始めた漁師達。俺は船の外を見ていれば、何本もの触手が海から生えるように出現してきて船べりに近づく。

 息を整えたファルタリアも、焦ることなく、探るように船べりから入って来る触手を切り伏せ始める。

 三本ほど切り倒すと、触手は海に戻り、また別の魔物の触手が出て来て切り伏せる。その繰り返しが続いた。

 魚だけじゃなく、魔物も多いようだね。

 仕分けを終えた漁師が、切った後も、動いている触手を仕分け始める。


「その触手はどうするんだ?」

「これも食材だよ。魔物だけど、美味いぞ。高級食材だから市場では流通していないけどな」

「何処に運ばれるんだ?」

「帝国だよ、アルドレン帝国。獲れたてを馬車で、その日のうちに運べば幾つもの高級店に回り、即日完売になるらしいよ」


 それを聞いたら食べたくなるな。丁度いい具合に甲板に料理長と料理人の男が、鍋や寸胴を運んで出てきた。


「飯が出来たぞー!」


 その声に漁師達が並び始める。俺達にも、並べ、と言われて四人で並んで順番を待つ。お、船上の皿食だよ、楽しみだな。

 各自、思い思いの甲板で座って食べ始めている。俺達も四人囲んで食べ始める。何だ? 美味いぞ? あ、これは魔物の触手だ。

 輪切りにして油と香辛料で炒めてあり、塩をまぶしてあるな。高級食材と言われるだけあるし、美味いよ。

 三人も美味しそうに頬張っている。ん? お代わりも出来るようで、料理長が並び直した漁師達に順次配っている。と思っていた矢先に、コーマが並んでいるし、残る二人もお代わりするだろうね。

 高級、と言っていたから今日は俺もお代わりしたよ。魔物の料理に舌鼓を打った。どこかの店で食べられないのかな。

 食べている漁師に聞いてみる。


「シーガイの町では、食べられないのか?」

「無いな。市場に出ずに、アルドレン帝国ご用達の商人に渡るからな」


 帝国に行かないと食べられないのか。行きたくはないけど……。

 そこに、会話を聞いていたのか船長のバルガンさんが来た。


「ラサキ、家に来るか? いつも何本か持って帰るから、食べたいなら来ればいい、今回の礼だ」


 聞き耳を立てていたコーマが来る。


「ラサキ、食べたい」

「ラサキさーん、私も食べたいですぅ」

「あたいも食べたいがや」

「四人だけどいいかな」

「ガッハッハ、いいぞ。沢山食べそうだし今回は多めに持って帰る事としよう」


 魔物の触手は漁師の特権で、大漁の時は数本持って帰れるらしい。良かったな、これで町に帰ったら食べられるね。

 一段落ついたら三人が漁師に囲まれているよ。あ、面倒臭がりなコーマが消えて二人が囲まれている。 どうしたのか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ