第44話 滞在した3
その日に知った事だけど、フェーニとミケリは、一三歳になっていた。ファルタリアも一七歳だ。
時が経つのも速いな。と言う事は、コーマは、七〇一歳になったのか? いや、可愛そうだから聞くのは止めておく。
見た目で一七歳とした方がいいだろう。――コーマは消えていた。大丈夫だよ、気にしないよ。
こうして一夜明け、ギナレスの町に戻る。
行きと帰りは、他の冒険者達もいるのでちょっとした大隊だ。帰る途中は、至る所から話し声が聞こえる。
今回の魔物の討伐数を自慢している者や、犠牲者が出た話をしている者もいる。
ファルタリアには、変な事を言わないように注意していたから、今回の魔物の事など中心に話していたようだ。
ギナレスのギルドに戻ったら、あの、汗臭くむせ返る混みあった時間を我慢して並び、登録を完了した。
今日帰った冒険者の討伐数は、予想通りフェーニ達が群を抜いて一位だった。主張するように、腕を上げて握り拳を作っているフェーニとミケリ。
それに釣られてファルタリアも喜んでいる。これでまた名が広まるな。
ファルタリアも、あの体でバトルアックスを背負っているから注目されていたよ。
そして、別部屋で褒賞を受け取るのに必要な魔物の一部が入った袋を出した。
褒賞金額は、一位だけあって金貨二〇〇枚程になって受け取っていた。
周囲の冒険者達から、どよめきが聞こえて来ている。
後でシャンティに聞いたところ、相当凄い事なのだと言っていた。話を聞いていたギルドマスターも驚いていたよ。
身内が褒められるのは、何とも言えずいい気分だな。
フェーニは、金貨を受け取りテーブル席に着く。そのテーブルを囲んで俺達三人も座る。
「今回の一位は、ラサキさんとファルタリアさんが参加していただいたから達成できました。恩返しも含めて受け取ってください」
「くださいニャ」
「いや、受け取れないよ、フェーニ。俺とファルタリアは、教えてもらいながら同行しただけだから、これはフェーニとミケリの褒賞だよ」
強い口調で帰してくる二人。
「ラサキさん。それでは私達の気が納まりません」
「おさまりませんニャ」
何だか俺が怒られている状態になっている? 仕方ないな。
「ならこうしよう。俺とファルタリアで金貨五〇枚づついただくよ。残りはフェーニとミケリで分けてくれ。これでいいよね」
「仕方がありません。少し不本意ですが、了承します」
それから毎回、フェーニ達と討伐に付き合った。と言うより、ファルタリアが率先して楽しんでいた。
――それから討伐にして数回。一ヶ月が過ぎようとしている。
ファルタリアは、充実した毎日を過ごしているからか、生き生きとしている。フェーニとミケリも楽しそうだね。
コーマは俺の為に、我慢しているのか何も言わないけど、可愛そうだな。
それに、ルージュの事もあるから、ファルタリアに話をして三人で討伐に行くようにしてもらった。
別行動でもいい、とファルタリアは喜んで二人と討伐に参加する。
数日して、フェーニ、ミケリ、ファルタリアの三人は討伐依頼を受けて樹海に出かけて行った。
今回からは三日間では無く、鍛錬を兼ねて数日かけて行って来ると言う。
存分に楽しんでくれよ。
今日は、コーマと皿食を食べたり、腕を組んで町中を散策したり、コーマに楽しんでもらったよ。
嬉しそうに一緒に歩くコーマ。
「ラサキ、楽しいね。ウフフ」
「天気もいいし、穏やかだな」
「そうそう、ラサキ。見つけたよ」
「そうか、さすがだね」
「ウフフ……ん」
今回はいつになく、密着度が高かったな。それだけ楽しかったのだろう。
その後、ルージュに会いに行く。いつもの場所で本を読んでいるルージュ。
「やあ、ルージュ。体の調子はどうかな」
可愛い満面の笑顔で迎えてくれた。
「あ、ラサキさんこんにちは。体はもう何ともないです」
「それは良かった」
「この本も読んでいて楽しいです。飽きません」
「魔法を理解したのかな」
「この本に載っている事は理解しました。それに、詠唱も二つだけだったので覚えました」
「ルージュに言っておくけど、攻撃魔法は詠唱してはいけないよ。先日みたいに大変な事になるからね」
「はい」
「これからどうすればいいのですか?」
「魔力の使い方を練習しようか」
コーマが言っていた通りに、光の玉を小さく分ける練習をルージュに伝える。
ルージュも本を熟読して理解したのか、自分なりに練習していたみたいで、光の玉に触れるようになっていた。
「ラサキさん。まだ、掴む事は出来ませんが、こうして手の平に乗るようになりました」
手の平に乗せて、転がしたり跳ねたりさせている。俺も触ってみようとしたけど、光が逃げてダメだった。
ルージュは、手の平に載っている光の玉をもう片方の手で、ソッと立てに割ってみる。光の玉は逃げずに割れた。その半分も割ってみると素直に割れた。
何かを感じるルージュ。
「あ、ああ。感じが掴めそうです。光の玉から思い描かれた事が伝わってきます」
何度も切って小さくなる玉が浮いている。ルージュは手を広げ、光を集めるとまた一つの玉になる。
「凄いです。光の玉が教えてくれました。見ていてください」
ルージュは手を出さずに、思い描くだけで光の玉を分裂させて見せた。けど、それ以上はまだ無理みたいだね。
「その練習を毎日してみようか」
ルージュの頭を撫でてあげたら、はにかんで喜んでいる。
「はい、頑張ります。エヘヘ」
それからの毎日は、昼までコーマと一緒に過ごし、午後はルージュと練習に付き合った。
ルージュは呑み込みが早く、一週間で細かく分裂させる事が出来るようになったよ。
さらに一週間が過ぎた頃、光の玉を掴めるようになり、さらに一週間が過ぎた頃、光の玉を自由に変形させることが出来た。
「ラサキさん、理解できました。この光の玉はもう必要ありません。心の中で思い描けます」
ルージュに言われ、お役御免になったように光の玉が消えて行った。
「ルージュは呑み込みがいいね、頭がいい証拠だよ」
「ラサキさんが一緒にいてくれたからです。エヘヘ」
「それで、あの光から何が伝わって来たのかな」
ルージュ曰く、心の中で光の玉を小さく分けて魔法に乗せると、それが大きさに比例する。
小さいだけならすぐに元の大きさになるけど、一度に半分使うと半日は戻らない。枯渇したら二日必要になる。
残る問題は、どのくらいの魔力を使えば適正なのか。それと詠唱の長さだ。
ルージュと別れた後に、古物商に行って、他の魔法に関する書物が探したけど見つからなかった。
翌日、ベッドにはコーマが密着している。
見慣れたとは言え、素晴らしいプロポーションだし、綺麗な寝顔をしている。気が付いたのか、眼を開けるコーマ。
「おはよう、ラサキ」
「おはよう」
「もっと見る? いいよ。ウフフ」
「コ、コーマの寝顔を見ていたんだよ」
「……んー」
いつもと違い、愛情の籠もった長い口づけだったよ。ゆっくりと起きて皿食を食べ、いつものようにルージュに会いに行く。
ルージュは、知っていたかのように家から出てきた。
「俺が来る事を知っていたのか?」
「何となくですけど、察知しました」
これも魔法に関係あるのかな。
これからの、ルージュの立ち位置を考えよう。




