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第40話 助けられた

「昨日の事だが、ラサキに因縁を付けられ暴力を受けた、と言っているのだが本当か?」

「嘘ですよ、他に見ていた冒険者に聞いてください」

「それが、誰も何も言わないのだ。見ていないから知らない、とな」

「私じゃ、ダメですか?」

「ファルタリアは、その場に関わっているし、ラサキの仲間だから無理だ」

「じゃ、どうなるんですか?」

「証人がいないと、簡易裁判になる」

「面倒ですね」

「昨晩から掲示板に、証人になる者を出頭するように要請はしているのだが、時間の無駄、と思っているのか誰も手を上げないのが現状だ」

「相手はリガンデでしょう? 向こうには証人がいるのですか?」

「一応仲間だが、別の場所からムンガが見ていたらしいから、今の所向こうに分がある」


 誰か証人が現れないと俺が悪者になるのか、正直者は馬鹿を見るとは正しくこの事だな。

 参ったな、面倒だから始末するか。しかし、お尋ね者も嫌だしどうしたものか。

 思い切ってギルドごと破壊して、どさくさに紛れて二人を始末して、魔物がやった事にすればいいか。

 いや、それも無理があるな。今回ばかりはお手上げか。強くなっていい気になった罰かな。

 またいい勉強させられたよ。しゃくだけど、ここは素直に捕まるしかないのか。

 そこに、シャンティが入って来てギルドマスターに耳打ちをする。俺達を残して部屋を出て行った。


「ラサキさん、どうしますか?」

「どうしようもないだろ、お手上げだ」

「私、協力しますよ。今すぐにでも、悪人の二人をぶった切って来ましょうか」

「いいよ、ファルタリア一人で冒険して来れば?」

「ええぇ? 嫌ですぅ。ラサキさんと一緒がいいですぅ」


 急に両手を頬に当てて、顔を赤らめるファルタリア。


「ラサキさんと、まだ合体もしていません。合体ですよ! 合体! がっ、むぐっ」


 話しを遮り、手で口を押さえつけた。


「合体合体、うるさいよ。ギルドで話す事じゃないだろ」

「ですけど……ううぅ」


 あれ? 何で泣くかな。泣きたいのは俺だよ。こんな事している場合か? 手も足も出ないとはこの事だな。

 もう諦めるしか手は無いか、厄介な事に巻き込まれたもんだ。

 暫くしてトレナコが戻って来た。


「ラサキ、証人が二人出てきて事実を話し、無実を証明した。よってラサキが無罪だ」

「ムンガとリガンデは?」

「偽証罪で捕縛して、牢屋に投獄した。二ヶ月の禁固だ」


 もう投獄? そんな簡単に投獄するんだ。やばかったな。助けてくれた証人にお礼を言わないと。

 部屋を出て、受付に行くと、シャンティが証人に指差す。


「あのテーブル席に座っている二人が、証人となって事実を話していただきました」


 俺に気づき、振り返って立ち上がる二人。

 一人は身長一二〇cm程で長い緑色の髪、緑色の眼の可愛い女の子で耳が尖っている。

 もう一人は、身長一一〇cm程で茶色の髪が肩まで伸び、黒い眼。頭には髪の間から三角の耳があり、細い尻尾がある可愛い獣人。

 走り寄り、抱きついて来る二人。俺は二人の頭を大雑把に撫でると、嬉しそうにはにかんでいる。


「おお、フェーニとミケリ。久しぶりだな」

「ラサキさんお久しぶりです」

「おひさしぶりですニャ」


 次にファルタリアに抱きつく二人。


「ファルタリアさんもお元気そうで何よりです」

「なによりです」

「会いたかったよー。二人とも元気にしてた?」

「「 はい! 」」


 再会し、テーブルを囲んで椅子に座る。

 フェーニとミケリは別れた後、魔物の討伐の町を知り、一路ギナレスの町を目指した。

 来た道は俺達と同じだったけど、他の町は滞在しなかったので一〇日程でギナレスの町に到着した。

 滞在を決めて、すぐに安い借家を借り、魔物の討伐依頼を受けた。毎回受けているので、ギルドで知られてきた。

 強さも、他の冒険者から一目置かれる存在になっている。

 さらに功績を上げ、今では討伐数も上位に位置しているので、町でも知られている。

 その二人が証人になったのだから、すぐに無実が証明された。


「凄いな、フェーニとミケリは町の有名人か」

「これもラサキさんとファルタリアさんのお陰です」

「おかげですニャ」


 その後、二人の話や俺達の道中の話、ファルタリアも、二人に聞きたい事が山ほどあって話に華が咲いた。

 久しぶりに会えて三人とも笑顔が絶えなかったよ。

 俺がもめ事を起こした時は、偶然受付を待っていた時だったので、登録が済んでから会いに行こうとしたら事が終わっていて、居なくなっていた。

 ここに住んでしばらく経つので、もめ事を何度も見ている。多分こうなるだろうと来て見たら予想通りになっていた。

 二人に何かお礼をしないとな……同行以外で。

 またすぐに会いに行くから、と一緒に討伐を受ける約束をして一度別れた。


 何だかんだと忙しなく、昼を過ぎようとしている。コーマが楽しそうに腕を組んで来た。


「ラサキ、皿食食べようよ」

「コーマさんに賛成です、行きましょう」


 両手に花状態で皿食屋に行った。

 今回は二番目に人の出入りが多かった店だ。

 注文して持って来た皿食は、肉を細切れに潰し、こねて丸めて平べったくして焼いてある。

 手の平サイズで大き目だな。タレもたっぷり掛かっていて食欲が湧く。添えつけの野菜も盛って有り豪快だな。

 一口食べれば思った通り美味かった。コーマとファルタリアは、あつあつ、言いながら食べ、競うようにお代わりしに行った。

 一皿で十分だと思うけど、嬉しそうだし好きにさせておこう。

 仲良く町を散策したけど、今日は早めに宿に帰ろう。

 ベッドの上で素っ裸になって、気持ち良さそうにくつろいでいる二人。水浴したのはいいけど、すぐに服着ろよ。


「いいじゃない、毎朝見ているんだから。ウフフ」

「え? 何がですか? 裸ですか? 私はいつでもいいですよ。エヘヘ」

「そんな事しなければ、いい女なのに」

「減らないからいいの。もっと見る? ウフフ」

「私も見せましょうか? エヘヘ」

「残念な部分を見ている気がするよ」


 落ち着いた頃に、ベッドでくつろぐコーマに聞いてみる。


「コーマ。ルージュの光の事なんだけど」

「ああ、あれね。あれは魔法の光。それも初期の元素」

「じゃあ、ルージュは魔法が使えるのか?」

「それはまだ先の事ね。鍛錬しないと魔法は使えない」


 魔法は知っているけど、実際俺は魔法なんて見たことが無い。四〇年生きていて一度もだ。

 魔法は詠唱がとても長く、大きい規模の攻撃魔法は戦闘が終わる頃に出来上がるくらいかかるらしい。

 だから世の中魔法使いはほとんどいない。

 ただ、王宮には、詠唱もかなり短く唱えられる魔道士がいるらしいが、戦争でも起こらない限り表には出てこないだろう。

 それと、英雄や勇者辺りの魔法使いは、凄い攻撃魔法や回復魔法が唱えられるらしい。

 生まれながらに授かった、限られた極一部の人だけがなれる。

 コーマに聞いたところ、ルージュの光は魔力では無く、魔力になる元であり詠唱を覚えながら光の球を魔力に変えて大きくしていく。

 厳しい鍛錬をしても、良くて三つ、普通なら一つの魔法が精一杯と言っていた。

 ただし、例外もあるらしい。

 ルージュには、光の原因をそっと教えておこう。

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