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第 4話 町を散策して家に帰った

よろしくお願いします。

 何処から散策しようか。

 その前に、俺達には金が全く無いので、受付で聞いた買取りの換金所に行く。

 言われた通りに行けば、入口も開放的な一軒の建物があった。


「換金所というより、ギルドだな」


 中に入れば、ギルドだった。

 奥のカウンターに受付嬢が座っている。長い赤髪、綺麗な赤目の細身の女性。


「こんにちは、ご依頼ですか?」

「魔石の換金を頼みたいのだが」

「はい、では隣の部屋でお願いします」


 隣の部屋に入る俺とコーマ。カウンターに女性がいたけど、さっきの女性とそっくりだな。唯一違うのは、髪の長さが肩までだ。

 双子のようだな。


「いらっしゃいませ、買取りですか?」

「ああ、この魔石だ」

「はい、少しお待ちください」


 鑑定なのか、奥に持って行く女性。すぐに戻って来た。


「この魔石の買取りは、金貨五枚ですがよろしいでしょうか」

「それで頼む」


 女性が、観察するように俺を見つめる。


「お若いのに随分と大人びた話し方をするのですね、貴族の出ですか?」

「あ、いや、いえ。違いますよ。ハハハ」


 あー、つい以前の話し方になっていたよ。若くなったんだから直さないといけないな。

 金貨五枚を受け取り、足早にギルドを出る。当面の資金が出来たので、町の繁華街を腕を組んできたコーマと歩く。

 口調ね、口調。もっと若々しい口調にしないといけないな。気をつけよう。


「ラサキ、あそこに食べ物売っているよ。入りたいな」

「そうだな、一休み……しようか」

「ん? どうしたの?」

「いや、なんでもないよ。ハハハ」


 皿食屋と書いている看板がある。テーブル席に座り、他の食べている人を見れば、一食には、十分な料理が皿に盛られている。奥のカウンターで購入してくるようだ。

 二皿を頼み、テーブル席で食べる嬉しそうなコーマ。


「美味しいね」

「ああ、肉炒め料理だな。野菜も入っていて美味いな。今度作るか」

「ラサキは料理出来るからいいな。いいお嫁さんになるね」

「それは逆だろ。コーマが作れば?」

「ええぇ? 私に料理を作れと言うの? 無理。無理よ」

「いい嫁になれないね」

「ううぅ、いじめないで。冷たいよ、ラサキ」

「ハハハ、いいよ、俺が作る」



 そう言いながらも談笑して食べた。他のテーブルも賑やかで楽しそうだ。

 腹も満たされたので、町を散策する。料理道具や食器などは、コーマが用意していたので助かった。商店で塩、砂糖や油、それと香辛料を購入した。

 俺達はギルドに戻り、依頼を見てみる。二〇〇年前と違いがあるのか確かめるためだ。

 昼も過ぎていたので、中は閑散としているね。やはり、早朝と夕方からが忙しいのだろう。

 壁に貼られている依頼を見ているが、変わりはないな。以前と違った事は、同行依頼が多い。魔物か盗賊が、昔より多く出没するのだろう。


「何か興味のある依頼あった?」

「特に無いよ、帰ろうか」


 受付嬢に聞いたところ、今のギルドでは、条件さえ揃えば一〇歳から冒険者になれる。武装装備一式を揃え、試験に合格すればすぐになれるらしい。

 他には特に興味のひく依頼も無いので、家に帰る事にした。

 日が傾きかけた頃、家に着いて一息入れているとコーマが外を見る。


「森の奥で誰かが戦っているみたい」


 俺には見えないが、察知したのだろう。


「魔物退治か? 猪狩りか? ちょっと見て来るよ」


 武装して森に入る。

 コーマに言われた方向に歩いて進むと、すぐに戦っている音が聞こえた。

 ゴブリン三体とオーガ二体が見えた。よく見れば、他に二体のゴブリンが倒されている。戦っているのは一人だけだな。

 また一体のゴブリンを倒したけど、ジリ貧で押されている。俺は助けに入ろうと走り寄ろうとした時、その冒険者がオーガの棍棒で弾き飛ばされた。

 木に激突してしまって起き上がらず、身動き一つしない。死んだか? さらに襲ってくるオーガに、俺は切りかかった。

 コーマに力を貰い、経験を積んでいる上に若くなった俺は、簡単に一体を切り飛ばす。

 剣を構え、残りのゴブリンとオーガを睨むと、相手が変わって狼狽えたのか森の奥に逃げて行った。

 すぐに倒れている冒険者に近寄る。あれだけ酷く飛ばされたのだから、多分、内臓破裂は免れないだろう。おそらく死んでしまったか。

 倒れている冒険者を見る。キツネ? 金色の毛が生えている狐の獣人? 始めて見た。

 身長一六〇センチ程で金色の髪、容姿は人間と変わりない、とても可愛い女性だった。獣になっている部分は、皮の胸当てなどで武装しているが見た限りだと頭の上に三角の耳が生え、毛並みの揃った大きい尻尾があるだけだ。

 その女性を抱き起せば、まだ息がある。いや、怪我もなく気を失っているだけのようだ。あれだけ激しくぶつかったのに、頑丈な体だな。

 暗くなってきたので、俺は彼女を抱えて家に戻った。


 翌日、予備の部屋にあるベッドに寝かせていた獣人の女性が目を覚ました。部屋から出てくる獣人は、少し怯えながら居間にいる俺を見る。


「目が覚めたか?」

「あ、あの、ここは何処でしょうか。魔物と戦っていたところまでは覚えているのですけど……」

「ああ、オーガに吹き飛ばされて、気絶してたから俺達の家に運んだ」

「助けていただいたのですね。あ、ありがとうございます。なんとお礼をすれば」

「別にいいよ。こっちに来て座りなよ。それにしても頑丈な体だね」


 椅子に座る獣人。


「はい、それだけが取り柄です。崖から落ちても平気なくらい……」

「それは凄いな。で、君は冒険者なのか?」

「はい、先日登録したばかりです。ゴールドフォックスのフォックスピープルですけど、ハーフです。名前はファルタリアです。年は先日一六歳になりました。独身です。相手もいません。欲しいです」

「いや、そこまで聞いていないよ」

「あ、すみません。それで、ここは何処なのでしょう」

「だから、俺たちの家だよ」

「森の中に家が? この森は魔物が出る森ですよね」

「そうなのか? 確かにファルタリアが魔物と戦っている時に初めて見たけど。気にしていないよ」

「助けていただいて、ありがとうございました。では、日を改めてお礼に伺います」

「いや、いいよ、それこそ気にしないでくれ」


 席を立ち、お辞儀をして家を出て行くファルタリア。方向も知っているのか、小走りに帰って行った。 見送っていたら、途中で激しく転んでいたよ。すぐ起き上がり、何ともなかったようにまた走って行った。


「獣人か。ちょっとそそっかしいみたいだけど、楽しい子だったな」


 気配を消していたのか、やっと話をするコーマ。


「あの子、ラサキに好意があるようね」

「まさか。初めて会っただけだぞ」

「私の時と同じ。助けて貰った事を知って嬉しかったのでしょうね」

「気のせいだろ、俺達の名前も聞かなかったんだからさ」

「私は構わないわよ、つがいになってくれればいいのだから」

「そこは構うだろっ」

「あ、赤くなった。ウフフ」


 その日は、魚を獲ったり、コーマに抱きつかれて昼寝をしたり、緩い一日を送った。

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