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第37話 道中だ

 朝から順調に歩いて行く。体力が心配だった子供達もしっかり歩いている。元気だね、これなら大丈夫だな。

 何度か休憩して昼が過ぎた。住人達は、手持ちの干し肉を食べ、俺とファルタリアは携帯食を食べる。 うーん、しかし美味いな。ネルネ達は、これで食って行けるんじゃないのか? 携帯食屋なんていいかもな。

 休んでいる時に、気になる子がいた。艶っぽい紫の髪が肩まであり、つぶらな青い眼が可愛い一二歳くらい女の子。

 両親とも妹とも髪の色が似ていない。両親に聞いたらこの集落の家族はこれが普通だそうだ。

 遺伝なども関係なく、髪の色どころか、瞳の色や肌の色が違う事もあるらしい。

 そう言われれば、肌の色が違う家族を見かけたな。

 そんな遺伝なんて二〇〇年前は無かったけど、今のこの世界は変わったのだろう。

 そんな中、気になったのは女の子が手をかざすと光の球が出てくる。それを楽しそうに浮かべて遊んでいる。

 光の事は言わないでその子の事を両親と妹にきいたら、変わった子で妹とも遊ばず、一人で踊るように手遊びをする事が楽しいらしい。

 小声でファルタリアに聞いてみるが、何も見えないと言う。

 しばらく観察したけど、家族にも誰にも見えないようだ。あの子には後で直接聞いてみよう。

 その後も、魔物も現れず順調に歩いた。

 住人の大人達は、俺が魔物を寄せ付けないように、何かしているのだろうと結論付けていた。言い訳するのも面倒だからそれでいいや。

 夜になり、前日と同じように野宿をした。


 翌日、辺りは薄暗いけど、今日中に辿り着きたいから出立した。

 歩き始めて数刻、かなり先の方で何やら人が集まっている。

 いや、よく見ると、座って集まっている人の回りを馬に乗った盗賊に囲まれていた。

 あれは先に出た集落の人と冒険者じゃないのか? なんであんな所にいるんだ? もっと先を進んでもおかしくないのだが何かあったのかな。

 急いで行きたいけど、こっちは子供もいるから歩いて行くしかない。

 それに、他の人は気が付いていないし。今さら言っても慌てるだけだから言わないで歩こう。


「ファルタリア。先にいる集団に行って、俺が行くまで動くなと言っておけ。刃向ってきたら切っていい」

「あー、あれですね。はーい、では行って来まーす」


 バトルアックスを手に取り、一気に加速して走り出した。速いな、もう着くよ。転ぶなよ。

 あ、手前で派手に転んだ。あー、転がっているし、勢いがついているから何回転転がるんだ? あ、通り過ぎた所で立ち上がった。

 普通に歩いているし頑丈だから大丈夫だろう。さっそく話を始めたようだ。

 上手く引き延ばせよ、ファルタリア。ん? 一斉に皆がこっちを見ている。あれ? あの盗賊は以前も見たことがあるな。

 盗賊達は武器を収めて俺を待っているようだ。

 一緒に歩いている住人達には、事前に説明して慌てないように指示した。

 盗賊のいる場所までもう少しだけど声は届く。俺を見る盗賊の長が嫌な顔をしている。


「おいっ! 疫病神! 何でラサキがここにいる!」

「いやー、久しぶりだね。偶然、護衛を頼まれたんだ」


 ファルタリアは、立ち上がって鼻血を出しながらも盗賊に、俺が来るまで待たないと暴れる、と言っていたらしい。

 当然ファルタリアの事も知っているから強さも知っている。盗賊は、言われたまま項垂れて、仕方が無く俺を待っていたらしい。

 護衛の冒険者は、盗賊より弱いのか? 縛られている冒険者をよく見る。あれ? 少ないな、八人しかいないよ、そのうち二人は怪我しているし。


「盗賊が冒険者を倒したのか?」

「いや、抵抗しなかったから縛り上げただけだ。初めから八人だったよ」

「ならいいさ、もう調べたんだろ。じゃ、先日と同じように俺が仕切るよ。座っている住人達の持ち物はそのままで貰い受ける。冒険者の持ち物はご自由にどうぞ」

「またそれか、仕方がないな。獣人が暴れて、こっちに怪我人が出ても割に合わないからそれでいい」


 盗賊は、素直に冒険者の持ち物を全て取り外し、布の服以外は袋にまとめた。


「もうお前と獣人には、金輪際会いたくないぞ、この疫病神め。野郎ども! 行くぞ!」


 去って行く盗賊達。ファルタリアが鼻血を出しながら寄ってくる。


「皆さん無事で良かったですね」

「ああ、ファルタリアのお陰だ、よくやった」

「エヘヘ」

「鼻血を拭こうな……固まっているけど」


 縛り上げられている冒険者の縄を解く住人。座らされていた住人に話を聞いた。

 今から遡る事、前日の夕方。突然、魔物が多数現れ襲われた。撃退したけど四人の冒険者が犠牲になり、一六人いた冒険者が一二人になった。

 暗くなったので野宿する事になった。朝方、また魔物に襲われ冒険者は八人に減って、今度は住人も三人犠牲になった。

 持っていたポーションも、使い切ってしまった上に冒険者二人が負傷しているので、手当てをしてから出立し歩き始めたら、盗賊が現れて抵抗できずに捕まった。

 ああ、なるほどね、だから追いついたのか。散々だな、冒険者の中に、誰か運の悪い人でもいるのかな。

 そこに、冒険者の代表が食って掛かって来た。


「オイッ! お前。何で俺達の身ぐるみを剥いだんだ」

「捕縛されていたんだろ、文句言うなよ。体だけでも無事だったんだからいいじゃないか」

「あの盗賊を知っていたな。お前達、盗賊とグルなんだろ。だから集落で混ざって来たのか?」

「それは違うよ。以前もあの盗賊から人を助けた事があったんで、覚えていたんだよ。もし俺がそんな事を考えたら、面倒な事はしないよ。直接君達を、叩き潰せば済む事だしね」

「な、何だと? 俺達全員を相手にするより強いと言うのか?」

「ああ、そうだよ。連れのファルタリアも同じくらい強いよ。だから、さっきの盗賊達も、素直に言う事を聞いていただろ」

「う、ぐっ、だからと言って俺達の装備を全部渡す事など無いだろ。全員倒せばいいじゃないか」

「俺は依頼されていないから余計な事はしない。盗賊も、見返りが無ければ言う事聞かないからこうした。更に言えば、この場に俺達が来なければ、金品全部巻き上げられた後は、皆殺しになっていた事はわかるだろ。無償で助けたんだ、感謝して欲しいくらいだよ」


 その言葉に、何も言えなくなって項垂れていた。フゥ、納得してくれた様だね。

 しかし、大所帯になったな。町まであと少しだし行くしかないな。

 四〇人以上いるので、四列縦隊になった。先頭がファルタリアで後方が俺。その後ろに身ぐるみ剥がされた冒険者八人。

 可愛そうなので、負傷している冒険者に合わせて歩いたよ。数回の休憩をしながら進み、日も沈みかけた頃、町の塀が見えた。

 ギナレスの町。

 重厚な高い塀が町を取り囲んでいる。

 検問所に行って、住人と身ぐるみ剥がされた冒険者達は、依頼と経緯を話してギルドに向かった。

 住人達は、俺とファルタリアに、何度も振り返ってお辞儀をしていたよ、いいのにな。

 俺とファルタリアも、一緒だったけど依頼は受けていないので何事も無く通過した。

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