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第34話 釣りをした

 翌日も釣りをしよう、と二人が言ってくれたので釣りをする事にした。

 そしてラクナデ湖に来た。今日こそは釣れますように。

 三人並んで釣り始める。ファルタリアとコーマは、前日と打って変わって釣れたよ、釣れた。

 三〇センチ程のレイクフィッシュと言う魚が楽しいくらいに釣れた。レイクフィッシュは食用で、体高もあり肉厚で美味しいらしい。

 コーマも、かなり楽しそうだ。


「よく釣れるね、あ、また釣れた。楽しいな」

「楽しいです。後で食べましょう。あ、また釣れた」


 二人は、レイクフィッシュの引きなど気にしないで引っこ抜くように、一本釣りのように釣っている。

 それはちょっと違うんじゃないのか? 普通は魚との駆け引きを楽しむものだよ。と言いたかったけど、楽しく釣っているので止めておこう。

 個人個人の楽しみ方があるからな。周囲で釣りをしている人達も、異常な釣れ具合に驚いているし。

 そうだろうな。これだけ大漁に釣れているのは二人だけだからさ。

 俺も釣れたよ。釣れたけど三匹だけで終わり。

 仕方がないよ、二人の釣り針に餌を付けてあげて、釣れた魚を外してあげて大忙しだからさ。

 今回は、二人に楽しんで貰おうと裏方に徹しました。

 しかし、二人だけが釣れるのは、何が違うのかな。

 コーマは神だから、何かの加護とかで釣れても納得がいくけど、なんでファルタリアも同じくらい釣れているんだ? 

 天性の感? フォックスピープルの、獣人の特技? それとも遺伝? とにかく釣れている。

 ファルタリアに聞いてみたけど、本人もよく分からないらしい。

 初めてファルタリアに負けた気がしたよ――参りました、降参です。

 昼になり、釣ったレイクフィッシュを料理してもらえる店に入る。食べる以外の魚は、店で一匹、銅貨四〇枚で買い取ってもらえた。

 二人の釣ったレイクフィッシュは、食べる分を別にしても二〇〇匹を超えていたので、金貨一枚で交渉成立した。

 テーブル席で、料理を楽しみに待っている。少しして、出てきた料理は塩焼きと煮つけ、それに刺身だった。

 どの料理も美味しそうだよ。

 コーマとファルタリアは、各三匹ずつの計九匹。相変わらずよく食べるね。俺は一匹ずつでも多すぎるくらいだ。

 さっそく二人は食べ始めた。刺身は白身で、釣りたてだから新鮮で美味い。

 煮つけも、甘辛く煮込んであり柔らかくて美味い。塩焼きは、香ばしく絶妙の塩加減で、これも美味しかった。

 ファルタリアは、塩焼きがお気に入りのようで、夢中で食べている。


「ラサキさん、私は塩焼きが一番です。とても美味しいです。明日から塩焼きだけにします」


 そう言いながら、レイクフィッシュの頭から骨ごと豪快に食べている。

 骨の砕ける音が聞こえているけど、美味しそうな音に聞こえるから不思議だね。さすが獣人だよ。


「私はどれも美味しいし好きよ。魚釣りも楽しいし、ラサキと一緒で幸せ。ウフフ」


 明日も釣りをしようと言ってきたけど、しばらく滞在する予定だし、毎日釣りをしたら飽きが来るよ、と言って、翌日はもう一つの観光名所、花畑を見に行く事にした。

 ギルドに戻ってキャンティに聞いたら、道を北に行けばすぐに見えると教えてくれた。


 翌日、話の通りに三人並んで北に向かって歩いて行くと、甘い匂いがしてきた。

 匂いの先を見れば町の建物が、途中から無くなっている。

 その向こう側には、丘のようにせり上がっていて、広い範囲で色とりどりの花が辺り一面咲いていた。

 入口らしき場所に門があり、入場料を払うのに数人が並んでいる。俺達三人は入場料銀貨三枚を支払い中に入る。

 近くで見る花は素晴らしく綺麗だ。甘い匂いはさらに強くなって、俺にはちょっときついかな。

 観光客も多く、花畑を眺め楽しんでいるし、癒されるなぁ。

 コーマとファルタリアは、普通に見て歩いているけど楽しいのかな。


「綺麗だけど、見るだけならいつでもいいし、釣りがいいな」

「私も見るより食べ物です。塩焼きが食べたいです」


 すみません、癒されたのは四〇過ぎの俺だけでした。明日はご希望通り、釣りに行きます。

 帰りがけに案内所で聞いた事だけど、この花畑の花は、購入する事も、希望する町まで運搬する事も商売としている。

 これだけ綺麗な花なんだから、富裕層が大枚叩いて運ぶのだろう。

 その他、登録制だけど、精製すれば、睡眠薬や麻酔薬などにも使用されるらしい。ララギの町は、商人の町なのか活気があるのもうなずける。

 だから、ヴェンタの町の宿と、負けず劣らず釣りと花畑の観光で、宿泊者も多かった。

 翌日からは釣り三昧だった。毎日、毎日、数一〇〇匹釣りあげるコーマとファルタリア。

 何かに目覚めてしまったのか、早朝から昼まで飽きることなく釣っている。

 今やラクナデ湖では、有名人になっているバトルアックスを背負っている獣人と奴隷。無我夢中とはこの事だろう。

 でもコーマは大丈夫なのか? 手を出せないと言っているのにこんなに魚を釣っても問題ないのか? 

 俺に顔を向けたコーマは、悪戯な笑顔になりながら舌を出している。あー、本来はダメなのかもしれないな。

 それとも、魚くらいはいいと思っているのか、後で問題になっても知らないよ。俺は何も言わないけど、程々にね。

 こうして毎日過ごしていれば、青髪のネルネと金髪のリリーニャとは、偶然だけど、町中で数回は顔を会わした。


「ラサキ様。お陰様で、私とリリーニャは町の商店で働き口が見つかりました」

「それは良かったね。頑張れよ」

「ありがとうございます。私達は、ラサキ様の支援で町外れにある賃貸の家に住めるようになりました。狭い場所ですが、お立ち寄りいただければ、精一杯ご奉仕したいのですが」

「いいから、それはいいから。二人仲良くやってくれれば、それでいいよ」

「何とお優しいお言葉。では、お宿にお伺いしてご奉仕をした方が宜しいのでしょうか?」

「だから! 俺の事はしばらく忘れて働く事! それが今、ネルネ達のやる事だよ」

「はい。残念ですが畏まりました。ただ、お約束して頂きたいのですが、ララギの町を出立するときはお教えください」

「それは約束するよ」


 納得してもらって別れた。また疲れが出たよ。

 こうして楽しく一ヶ月も過ぎた頃。ラクナデ湖で釣りをすると、二人の回りには、すぐに人だかりが出来る。

 声を掛けても無視しているから、釣り方を盗もうと必死に見ている人がほとんどだった。

 有頂天になっている二人は、満面の笑みで釣っている。

 一つ気になったのは、コーマよりファルタリアだ。前にも思ったけど、背中にバトルアックスを背負ったまま釣りをしている。

 誰も何も言わないけど、違和感全開だったよ。

 でも、これで釣りも終わり、次の町に行く予定だ。

 数日前、ネルネ達には働いている商店に行って出立日を教えておいた。

 出立当日。検問所には、ネルネとリリーニャが俺達を待っていた。

 ネルネが前に出る。


「ラサキ様、私達はまだ何も出来ませんが、これが精一杯の贈り物です。お受け取りください」


 ネルネの横にいる、リリーニャが渡してくれたのは、三個の携帯食だった。不思議と、コーマの分もちゃんとあった。


「肉と野菜を味付けし、数日煮込んで作りました。食べやすい味に仕上がっています。お口にあえば嬉しいです」

「手間暇かけさせて悪いな、ありがたく頂くよ。大事に食べよう」

「ラサキ様もお元気で。ファルタリア様もご自愛ください」


 携帯食を貰ってから、手を振るネルネ達と別れ、検問所をくぐった。

 これでララギの町とも、お別れだ。やっと旅行らしくなったよ。二人も喜んでいたし楽しかったな。

 次に向かうは、さらに南の町。足取りも軽やかに、三人並んで出立した。

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