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第33話 食べて散策した

 ギルドを出て、キャンティに聞いたお勧めの皿食屋に向かう。

 ファルタリアと歩いていると、後ろから俺を呼ぶ声が聞こえる。あれ? さっきの奴隷が追いかけて来たよ。なんで?


「ハァハァ、あ、あの、ハァハァ、奴隷を解放して頂いてありがとうございました。ハァハァ、それに支援までしていただいて」

「気にしないでいいよ」

「で、でも、宜しければ、ラサキ様のメイドとして、無償でお役にたちたいのですが」

「ハァ? いや、いらないよ。俺は旅行の途中だから、君達の好きにしなよ」


 脅かしたのに、俺の演技は下手糞なのかな。折角自由の身になれたんだから好きにしてほしいな。


「俺に近づくと、弄んで最後はどうなっても知らないよ」

「ラサキ様はそのような事はしません。ギルドでの事も、私達の為に演技をした、と思いました」

「でもメイドは嬉しいけど、気持ちだけ貰っておく。いらないよ」


 食い下がる女性。


「で、では、私達、ラサキ様の慰み者でも構いません。ご奉仕します」


 ああ、もう、また肉奴隷とか言い出しそうだよ、今の時代は、肉奴隷が流行っているのか?

 ファルタリアも、この状況が呑み込めずに口に手をあてて驚いているし。でも、冒険者じゃないから大丈夫かな。


「じゃあこうしよう。奴隷は解放したけど、一つだけ条件を付ける。しばらくはこの町で働く事。そして、生活にゆとりが出来ても、その意志が変わらなければ、冒険者でも雇って俺の住んでいるレムルの森にある家まで来ればいい。その時はメイドとして働いてもらうよ」


 付け加えて、それまでの間に好きな人が出来たら結婚してもいいし、束縛もしない。

 勝手に俺を忘れてもいい、と命令のような約束をした。二人とも可愛いから、相手もすぐに見つかるだろう。

 その方がいいよ、犠牲になった一人の女性の分も生きてほしいな。

 腰まである髪の青い子が、ネルネ。地面に付きそうな金髪の子が、リリーニャと言っていたけど、それまで覚えていられるかな。

 そして別れる時に、二人は何度もお辞儀をしていたよ。あー疲れた。

 その後、ファルタリアが、眼を輝かせて、さっきの事の経緯を聞きたがっていたけど無視した。

 フゥ、やっと皿食屋に着けた。

 現れているコーマとファルタリアは、さっそく注文しに行っている。

 この店のお勧めは、一口の大きさに切った肉を甘辛のタレで煮込んである料理だった。皿には、肉の他青野菜も入っていて栄養バランスも良さそうだ。

 コーマとファルタリアは、この味が余程気に入ったのか、お代わりに向けて激しく食べている。


「ラサキ、この皿食も美味しいよ。ウフフ、嬉しいな」


 ファルタリアは、両頬が膨らんでいるし。


「ラハキはん、おいひいでふよ」

「食べてから話そうな、口の中が丸見えではしたないよ」

「ひ、ひくれいひまひか」


 俺も美味しく食べて談笑し宿に行った。宿もキャンティのお勧めだ。けど、悪くは無い。

 期待した分、可も無く不可も無く、普通の宿だった。

 忙しない数日が終了し、俺もファルタリアも、この数日の疲労が溜まっていたからベッドに倒れるように就寝。


 ララギの町に着いた翌日。

 日も上がり、ゆっくりと目覚めた。んー、ファルタリアも、昨日まで頑張っていたし、言うのは止めよう。コーマもね。

 下眼使いに見て、そっと二人の手を俺の股間からどけた。

 天井を見ながら考える。四〇歳を過ぎた俺が、二〇〇年の時を隔て一九歳になって今になる。

 これからどうなるのかわからないけど、コーマには感謝して気ままに楽しもう。ファルタリアには……ファルタリアには……うん、可愛いし強いね。

 日も高くなって、ギルドに行けば誰もいない。

 つまらなそうにキャンティが、受付のカウンターに頬杖をついている。

 依頼を受けた冒険者は朝早くから居なくなるのは理解するけど、受けていない他の連中は何しているのかな。

 キャンティに聞いたら、朝から開店している酒場で飲んだくれているらしい。

 ああ、思い出した。俺もそうだったよ。安酒喰らっていたあの頃が懐かしいな。二〇歳になったら酒でも飲んで見るか。

 またキャンティに話しかける。


「ラクナデ湖は、どう行けばいいのかな」

「はい。ラクナデ湖は、ギルドの前の道をまっすぐに西に行けば検問所があり、その向こうに見えますよ。釣りが有名です」

「じゃあ、行って見るよ。ありがとう」

「行ってらっしゃいませ」


 町の中を、コーマとファルタリアに両脇から腕を組まれ歩いている。コーマは表向き、奴隷だから俺の命令で腕を組んでいる、と言う事で問題ない。

 ファルタリアはどうなんだ? 背中にバトルアックスを背負って腕を組んでいる様子は、周りの人から見たらどう見えるのかな。

 恋人同士ってところか。

 西に向かって歩いていたら検問所があり、その向こうにはラクナデ湖の一部が見えている。

 検問所を通過して湖畔に行けば、透き通った青い水をした、広大なラクナデ湖を一望出来て爽快だった。

 岸辺には釣り人が沢山並んでいたよ。観光名所だし流行っているのだろうね。

 見ていると、チラホラと魚が釣れていた。至る所で賑わっていて、なんだか楽しそうだ。

 周囲は森になっている上、町の外になるから魔物も出るらしい。

 でも、釣りが出来る範囲の外側に、見張りが数人立っていて、魔物が出ればすぐに避難勧告がだせるので安全らしい。


「釣りしてみるか?」

「やりたいな」

「やります、やります、楽しみです」


 湖畔には、釣り道具を売っている店もあった。しっかりしているね。簡単な釣り具一式を購入して釣りを始める。

 釣り始めは、何が釣れるのか期待があったけど……釣れない。全くアタリも無く釣れる気配さえ無い。

 夕方まで頑張ったけど釣れなかったよ。自然を相手にしているのだから仕方がないのかな。

 でも、コーマとファルタリアは楽しいと言ってくれた。


「ラサキと一緒じゃなければ出来ないし。貴重な体験よ。ウフフ」

「釣竿持って、お魚を待っているのも、のんびりしていい気分ですよ。エヘヘ」


 文句ひとつ言わないで、改めて惚れ直したよ。二人とも、ありがとう。

 夕食を、楽しく釣りの話で談笑しながら食べ、水浴をしてベッドで寝転がりながら明日のことなどを話した。

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