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第30話 仕上がった

 今日はガランドの武器屋に行く。コーマは皿食を食べて満足して消えている。面倒臭いのだろう。

 店に先に入るファルタリア。


「こんにちはー、ガランドさんいますかー」


 奥から現れた、ドワーフのガランドさん。


「来たか、仕上がっているよ」


 俺達は借りていた剣をテーブルに置き、ガランドさんは棚からバトルアックスを手に取ってファルタリアに渡す。


「うわー、綺麗に光っています。凄いです」

「重量級の武器はあまりないが、使い込んでいる事はわかった。刃先に気をつけろよ、念入りに仕上げたから鋭いぞ。念の為に、皮の鞘を着けておいた。刃先部分だけだから、咄嗟の時も簡単に脱着できる」


 そう言って、ファルタリアに脱着方法を教えていた。何度か試しすぐに慣れたようだね。

 ファルタリアは、ガランドさんに手入れ方法を質問し、怒りもせずに親切に教えてくれた。

 真剣に聞いているファルタリアは偉いな。

 次に、俺の剣を出して来た。ファルタリアの時と違い、ガランドさんの顔が険しくなっている。


「刃先は研ぎ澄ましたよ。切れ味は保障する。ただ……」

「ただ?」

「粘りは十分あるのに、桁違いに硬すぎる。研磨する砥石が通常の一〇倍かかったよ。魔剣でもなさそうだし、何なんだこの剣は」


 神に鍛えてもらったなんて言えないしな、どうしたものか。


「そう言われても、俺も困りますよ。出所は言えませんけど、二〇〇年前に作られた剣だそうです」

「そんな昔の剣なのか。だとしたら、錬成方法が伝わっていてもおかしくないのだが、聞いた事も無いし、余計にわからなくなってきた」

「気にしていなかったんで……」

「ラサキに言っても仕方がないか。しかし、凄い剣だよ、下手したら国宝級かも知れないな」

「それは勘弁してほしいな。見て国宝級だとわかりますかね」

「いや、見た目はアイアンソードだから大丈夫だ。今まで何も無かったろ? ただ、他の奴には持たせるなよ。事が知れたら大騒ぎになる」

「気にしてもらっているんですか」

「そういう訳じゃない。国宝にでもなったら、俺達が手にする事も出来なくなる。黙っていれば、こうして手に取り作業が出来るからな」

「根っからの武器商人なんですね」

「それが生きがいだからな。おっと忘れるところだった」


 手入れの料金は、バトルアックスが金貨二枚、俺の剣は、金貨一五枚だったので、その場で支払った。

 職人気質の良心的な店だったな。

 バトルアックスを背負うファルタリア。やっぱりその方が様になっているね、似合っているよ。言うと調子づくから黙っておこう。

 仕上げて貰ったら、切れ味を試したくなるのは冒険者の常。どうしようかと思っていると、ファルタリアが俺の前に立ちはだかる。


「ラサキさん、ダンジョンに行きましょう。切れ味試しませんか?」


 眼が輝いているよ。ファルタリアも試したいのか。


「行かないよ、面倒だ」

「ええぇ? 行きましょうよ、ラサキさん。二人で攻略しましょうよ」

「何日かかるのか?」

「えーと、えーと……わかりません。エヘヘ」


 二〇〇年前のダンジョンと同じなら一ヶ月は掛かるな。旅行の途中で一ヶ月も費やすのは嫌だな。


「やっぱりダメだよ」

「そうですか、残念ですけど諦めます。旅行中ですものね。エヘヘ」


 悲しい顔のファルタリア。我慢している事がバレバレだよ。


「ファルタリア。攻略はしなくても一日だけダンジョンに入ってみるか? 試し切りだけなら十分だろ」


 明るい表情に変わって俺に抱きついて来る。


「本当ですか? 行きましょう、行きましょう、楽しみです」


 その夜、コーマにダンジョン行きを話した


「ラサキがそうしたいのなら、私は構わないよ」

「ありがとう、コーマ。悪いな」

「いいのよ……ん」


 コーマが顔を寄せ、唇が重なる。ファルタリアは、疲れていたのか話の途中から、いつの間にか寝息を立てて寝ていた。



 今、順番を待ち、ダンジョンの入口にファルタリアと並んでいる。

 今朝がたギルドで登録し、攻略について説明があった。五十階層だかなんだか言っていたけど聞き流した。

 階層守護者は五階層毎にいるらしい。一日で行ける階層は、いいとこ二階層だった。試し切りだからそれで十分だよ。

 ギルドからダンジョン入口までは二〇〇m程ある。

 その際には、いくつもの露店が立ち並んでいた。地図や携帯食、ポーションの他運び屋の手配斡旋など、凄い賑わいだった。

 順番が来て中に入る。足取りも軽く、歩いて行くうちに辺りは薄暗くなるけど、俺もファルタリアも見えるから問題なし。

 ファルタリアは、すでにバトルアックスを手に持ち歩く。一階層は何も出なかったので二階層に向かった。

 ここまで来ると他の冒険者と合わないし見当たらない。

 さっそくゴブリン二体とオーガ一体が現れた。浅い階層ならこんなもんかな。

 俺はゴブリンと立ち合い、ファルタリアはオーガと向かい合った。

 ゴブリン二体の同時攻撃を避け、一体の隙をついて袈裟懸けに切り倒す。

 凄いな、切れる感覚があまりしない上、初めてゴブリンが真っ二つになった。満足な切れ味だ、さすが武器屋、伊達じゃなかった。

 怯んだもう一体のゴブリンも横一線薙ぎ払うように切り、上半身が血しぶきをまき散らしながら落ちる。

 ファルタリアも、オーガの振り降ろされた棍棒を、バトルアックスで受けて弾き、手の上がったオーガを横から振り切れば、簡単に上半身と下半身が分離した。


「ラサキさん、凄い切れ味です。今までと全く違う感覚です。とても楽ですよ」

「俺も同感だ」


 さらに進む。ファルタリアは歩きながら、剣技を始める。重量級のバトルアックスを両手で高回転で回しながら、上、左、右、後といとも簡単にやってのける。


「楽しいですね、このまま攻略しませんか?」

「試し切りだけの約束だ」

「冗談ですよ。エヘヘ」


 話しながらも剣技をしている。手を離すなよ、それが高回転しながら飛んできたらとんでもない事になりそうだ。


「――あっ」


 バトルアックスが勢いよく前方に飛んで行った。やっちゃったよ、岩にでも当たって刃こぼれしたら大変だぞ。

 焦って取りに行くファルタリアはすぐに戻って来た。

 ファルタリアの持っているバトルアックスに、ゴブリンが突き刺さっている。


「ラサキさーん。運よくゴブリンに当たってましたぁ。刃こぼれしないで良かったですぅ。エヘヘ」


 ファルタリアは馬鹿力だとは思っていたけど、重量級のバトルアックスの刃先に、ゴブリンを突き刺したまま片手で持って歩いて来るやつ始めて見たよ。

 あ、振り切って簡単にゴブリンを飛ばしているし。

 ――気にしないでおこう。

 その後も順調に切れ味を試して、俺もファルタリアも納得し帰路につく。オーガやゴブリンじゃ報酬も無いに等しいからそのまま放置した。

 そろそろヴェンタの町も終わりかな。

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