表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/164

第25話 強くなった

 コーマは、後方から付いて来て俺を見ている。

 コーマの、周囲感知もあるけど、それじゃあ意味が無いから止めてもらった。

 木々が濃く、薄暗い樹海。見上げれば樹木が遮り空が見えない。如何にも魔物が出そうな空間だ。

 さっそく、オーガが二体現れた。ゆっくりと向かって行けば、オーガもすぐに気が付く。棍棒で襲って来たけど、オーガの動きが手に取るように見える。

 振り降ろされた棍棒を、当たる直前で半歩下がり避ける。オーガは、叩きつけた棍棒と俺を交互に見ている。

 オーガにしてみれば、当たったと確信していたのに当たっていなかった、と言う感じかな。

 もう一体のオーガが横から棍棒を振り降ろしている。剣で受け止めたけど、オーガの巨体から振り下ろされた棍棒に、反動も無く受け止める。

 強く、というより、頑丈で素早く動ける馬鹿力になった、と言う印象だ。機会があったらファルタリアと力比べでもしてみようかな。

 何度か攻撃を受け、隙を見て一体を振り切るように切り倒す。もう一体は、逃げて行くが追わなかった。

 それは、倒した一体の、オーガの血の匂い誘われて、他の魔物がやってくるからだ。

 言った通り、オーガとゴブリンが、パーティでも組んでいるのか何度も現れた。

 その都度戦って、力を確かめるように倒す。生き抜く知恵なのか、半数を倒せば樹海の奥へ逃げて行く。

 辺り一面血の海になって、その匂いが凄いのか続々と現れて来た。数十体のゴブリンとオーガが向かって来る。

 普通ならこれはやばいな。俺が死んだ時を思い出させる光景だった。

 でも今は違う。向かって来る魔物に、俺も踏み出し攻防しながら一体一体を確実に切り倒した。

 コーマと会ってから、少数の魔物はあったけど、初めてまとまった魔物と戦った。

 人とは違う事も、十分理解しているけど、強く硬く獰猛だと再認識させられた。

 単体なら、簡単に倒せるゴブリンでさえ、徒党を組んで襲いかかってくれば、ちょっとした事で形勢が変わる。

 その中で戦ってはっきりわかった。

 運動神経、動体視力、瞬発力、それに体力、どれも人間離れしたように理不尽に強くなっている。

 俺に向けられた殺気も感じる。ゴブリンから放たれた矢も、避けるだけでなく素手で掴めるくらいだ。

 残っている魔物達は、生きる事が大事なんだろう。半数を倒した辺りで樹海の奥へ逃げて行った。

 その後は魔物も現れなくなったので終了しよう。

 樹海を後にして歩き出すと、コーマが飛びつくように腕を組んでくる。


「お疲れ様、強くなっていたでしょ。感覚はどうだった?」

「ああ、コーマのお陰で強くなった事は再認識で来たよ。最強って言ってた事も頷けた」

「もっと強くする? 出来るよ」

「いや、このままでいいよ。十分理不尽な強さだ」

「本当にいいの?」

「ありがとう、コーマ」


 強くなったからなのか、欲を言えば少しだけ不満があった。

 それは剣だ。

 コーマに頑丈にしてもらったけど切れ味が良くない。いや、切れる、切れるけど俺の力で切り倒した時の感覚と言うか切れ味が、感覚より少し浅い気がしたんだ。

 気にしても仕方がないか。どこかの町の武器屋にでも出して鍛えてもらおう。

 ガゴの樹海から、コーマと腕を組んで楽しむように一路レンナ村に帰った。

 それから数週間、数日に一度樹海で鍛錬して他の日は、ファルタリアには悪いけどコーマと過ごした。

 レムルの家で過ごしていた時に戻ったように喜んでいたよ。

 数週間後、厳しく鍛錬されたのか、フェーニとミケリは確実に強くなっていた。

 一緒に付き合っているファルタリアも、相乗効果で強くなっているけど、二人の連携攻撃には舌を巻くほどまでになっていたよ。


「二人共強くなったね、これで二人で生きてい来るだろ」


 悲しい顔をするフェーニとミケリ。


「やっぱりダメなのですね」


 鍛錬して情が移ったファルタリアも同情する。


「ラサキさん、みんなで一緒に行きましょうよ。私も頑張りますから」


 俺も素の一八歳だったら、情も移って同行を認めただろうけど、四〇年生きている経験を元に言っているんだよ。

 人数が増えれば楽しい事もあるけど、手に追えない事も当然ある。

 この先には、戦争が絡んでいる町にも行くだろう。まき沿いを食う事もある。

 その時、助けられず誰かが犠牲になる。

 二人の都合なら兎も角、俺が付いているのに、二人を死なせるなんて事はしたくはない。いや、俺のせいで死んでほしくないんだ。わかってくれないかな。


「ダメだと言ったら、ダメだよ。一緒に来たいならファルタリアが行けばいいさ」

「ええぇ? そんなぁ、ラサキさん、冷たいです」


 泣き出すフェーニとミケリ。釣られてファルタリアも泣き出した。嫌いで拒否しているわけでは無いんだけど……言っても面倒だ。


「よし、こうしよう。俺は今旅行をしている。どのくらいかかるか分からないけど。シャルテンの町の南にレムルの森がある。そこに俺の住んでいる家が建っているよ。旅が終わったら戻るから、その時にまだ同行したいと言う思いがあれば来なよ。その時は認めよう」


 泣き止み、顔を上げる三人。

 フェーニが、真顔になる。


「ラサキさん、今の話は本当ですか?」

「嘘は言わないよ」

「わかりました。冒険者として強くなります。そして、ラサキさんの家に行きます」

「いきますニャ」

「念のために言っておくけど、直行はするなよ。冒険者らしく依頼を受け、鍛錬も兼ねて行く事」

「はい」「はいニャ」


 フェーニに合鍵と当面の資金を渡す。先に着いて、俺達がいなかったら家を使っていいよ、と伝えた。あと、魔物も出る事も。

 フェーニとミケリも強く生きる事を決心したようだね。

 良かったよ、無下にしている訳では無いんだけど、自分で強くなってほしい。

 俺は、コーマとの約束もあるから同行するのはファルタリアだけで十分だ。

 翌日、宿屋の前で旅支度を終えたフェーニとミケリを見送る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ