第24話 鍛錬に付き合った
翌日早めに起きて、フェーニ達と時間差で皿食を食べた。お代わりしたコーマは満足している。
部屋に戻り、コーマは口づけをしながら消えて行った。見ていたファルタリアは、指を口に当てて恨めしそうにしている。
はいはいどうぞ、と両手を広げれば、いやっほー、と抱きつき吸い付いて来た。
その後は、久しぶりに尻尾をモフらせてもらったよ、あー癒された。
フェーニ達も、皿食を食べた事を確認して宿を出る。ギルドで聞いた広場にやって来た。
ここは一般開放している広場で、鍛錬や稽古に使っているらしい。俺は、フェーニ達に、稽古と称して強さを見る提案をした。
「ファルタリア、相手を頼む」
構えるファルタリアを前にして、俺に向くフェーニ。
「あの、ラサキさん。一ついいですか?」
「ん? なんだ? フェーニ」
「私達は二人一組で戦うのですけど……」
「なるほど、それは後にしよう。まずは個人の力量を見たい」
「はい、わかりました」
まずフェーニが構える。
剣の長さは、身長に見合った俺より短い剣。自分の力量を把握しているのかな。
フェーニは、ファルタリアの胸を借りるように踏み込んで一撃を撃って来たが、バトルアックスで軽く受ける。
続けて何度も撃ちこんでくるフェーニ。体の割には力もあり、体も柔らかく、四方八方から撃ちこんでいる。子供ながらもいい動きだ。
次にミケリ。
フェーニと同じ年だけど、やや幼く見える内気なミケリ。でも、打ち込みは素早く、フェーニに負けず劣らず良い動きだった。
キャットピープルの力なのか、変幻自在に柔軟に撃ち込んでいるし、フェーニより力もある。
強くなっているファルタリアは、全て受けきっていた。
反撃をさせなかったのは、バトルアックスで怪力の一撃を受けたら、子供の体じゃ吹き飛ぶどころか、大怪我してしまうからね。
「いい動きだったよ。次は、フェーニが言っていた二人攻撃を見てみよう」
「はい、連携は慣れています」
「なれてますニャ」
「ファルタリア。受けきれなかったら反撃していいよ。ただし、加減はするようにね」
「了解です、ラサキさん。フェーニ、ミケリ、かかって来なさい」
並んでいる二人。
「行きまーす」「きまーすニャ」
フェーニがファルタリアに撃ち込み、受けるファルタリア。後方に戻ると、素早くミケリが力強く打ち込む。
受けるファルタリアを見ながら、素早い速度で回り込むフェーニ。前後から交互に撃ちこんでくるけど、ファルタリアは軽く受け流す。
だがしかし、ここからが凄かった。
交互に攻撃する速度が速くなり、体が小さく軽量な事を利用して、上から下から左右から、二人の息が合った縦横無尽な連続攻撃に、ファルタリアもたじろぎ追いつめられる。
「あ、え、はや、くっ――えいっ!」
受け身一方だったファルタリアは、これ以上受けきれない、と体が反応し二人に反撃した。
瞬時に反応した二人は剣で受けたけど、予想通り吹き飛んだ。派手に転が二人に恐縮するファルタリア。
「あ、ゴメンなさい。大丈夫?」
肩で息をしながら立ち上がる二人。
「ハァハァ、大丈夫です。ハァハァ」
「ハァハァ、だいじょうぶニャ。ハァハァ」
「ハァハァ、これが私達の攻撃方法です。ハァハァ」
ファルタリアが俺に振り返る。
「フゥ、すみません、ラサキさん、つい」
「いいよ、二人の攻撃がそれだけ凄かったって事だ。十分やっていけそうだね、並みの冒険者では勝てないくらい強いと思う」
「では、一緒に同行出来ますか?」
「それとこれは話が違う」
「そんなぁ」
フェーニの話を余所にする。
「今日から暫くファルタリアと鍛錬しろ。そしてもっと強くなれ。連携もいいけど、単独の強さも向上できればさらにいい連携になるよ」
「毎日ですか?」
「嫌か? フェーニ」
「いえ、是非お願いします」
「おねがいしますニャ」
並んでいる二人の頭を大雑把に撫でると、嬉しそうにはにかんでいる。
「じゃ、ファルタリアよろしく頼むよ」
「はい、了解しました。さ、始めるわよ、構えて」
「「はい」」
数週間を予定して鍛錬が始まった。
鍛錬の日々と並行して、ギルドの依頼を見に行って見た。山の村なのか、魔物退治が多かったな。
蓄えは十分あるので受けなくてもいいが、暇だ。コーマと一緒に過ごすのも手だけど、体が鈍ってしまいそうだ。
レンナ村から東に行った場所にガゴの樹海がある。
依頼を受けた訳ではないが、ガゴの魔物の討伐と言う依頼を見て個人的に言ってみる事にした。
道の無い草原を、一緒に歩く嬉しそうなコーマと久しぶりに腕を組んでいる。
「ラサキ、楽しいね」
さらに頭を俺の肩に寄せて歩く。
「こうして歩くのも久しぶりだね。ウフフ」
「魔物除けはしているのか?」
「今はしていない。だって、力を試す魔物退治でしょ」
そう言っても草原では魔物は出てこなかった。
--先にはガゴの樹海が見えて来た。
草原と樹海の境がはっきりわかるよ、ここから先がガゴの樹海だ。
一緒に歩いている、今のコーマは、俺以外からは見えないし、気配も感じないと言う。
ああ、森で初めてコーマに会った時と同じか。近くから観戦するのか。
「うん、見てる。ラサキ、頑張ってね。ウフフ」
「行ってくる」




