第23話 同行した
北の村まで行く事が決まったのだから、仲良くやって行こう。
コーマは何を考えているのか、神の仕事でもしているのかわからないけど、まだ現れていない。
多分面倒臭いのだろうね。
道中、フェーニとミケリはファルタリアと仲良くなっている。ミケリは獣人同士、エルフもそっち側なのかな。
俺とファルタリアは体力があるけど、フェーニ達の事もあるので数回休憩をした。
そんな事もあって、フェーニとミケリの生い立ちも話してくれた。
ファルタリアと同じ境遇で、親も無く施設で育ち、剣の鍛錬をしている時に二人は仲良くなった。
そして二人仲良く冒険者の試験に合格し、二人でパーティを募集したが入れず、細々と生活して今に至る。
フェーニが俺に聞いて来る。
「ラサキさんの生い立ちは、どうだったのですか?」
「俺も親は無いけど、詳しくは話せない。ただ言える事は、俺はフェーニが思っているほどいい人じゃない。だから付きまとわない方がいいよ」
「でも助けていただきました」
「偶然だよ、たまたま居合わせただけだ。一日違えばどうなっていたか」
「その御恩に報いたいと思います」
参ったな。エルフは一直線な性格なのかな。どうしたものか。
ファルタリアは、同行したいのか何も言ってこないし……あ、そうだ。
「そんなに俺と同行したいなら、俺の奴隷になるか?」
驚くフェーニとミケリ。そうそう、嫌だろ、それでいいんだよ。止めるのが正解だよ。
ファルタリアも一緒になって驚いているし。ハァァ、馬鹿だな、気が付かないのか? もう、かまっていられないよ。
「やっぱりラサキさんは子供も対象ですか? 対象なのですね? やはり肉奴隷ですか?」
余計な事言うなよ、俺の気持ちも察してくれよ。何でわざわざ言ったと思っているんだよ。同行させないためだろ。
「うるさい! 黙れ、馬鹿ファルタリア。静かにしていろ」
「ええぇ? そんなに怒らなくても。ううぅ、すみません、ラサキさん」
項垂れたファルタリアは、尻尾も垂れ下がり萎んで行く。
この一部始終を見ていたフェーニが、何を思ったのか決心した表情になる。--え?
「はい! 私とミケリはラサキさんの肉奴隷になります!」
「なりますニャ」
ハァ? 馬鹿じゃないのか? 君達も馬鹿なのか? 諦めるどころか、奴隷になってもいいのか? ミケリも流されるなよ。
ああ、頭が痛くなってきた。
「ちょ、ちょっと待て、フェーニ。よく考えろ、奴隷だぞ。奴隷になるんだぞ。そんなに簡単に決めるんじゃない。むしろ止めておけよ」
「いえ、もう決めました。ラサキさんの肉奴隷に、喜んでなります。毎日ご奉仕します」
「いや、だから……あのね」
赤ら顔で、上目づかいに俺を見るフェーニとミケリ。
「は、初めてなので、優しくしていただけると嬉しいです」
「うれしいですニャ」
そこにファルタリアが割って入る。
「大丈夫ですよ。肉奴隷でもまだ何もしませんよ。そう言う私も肉奴隷だけど、まだ処女ですよ。ウフフ」
「肉奴隷なのですか? ファルタリアさん。私、てっきり奥さんかと思っていました。肉奴隷だったのですね」
「あー、もう! 肉奴隷、肉奴隷、うるさいよ! 俺の肉奴隷は一人だけだ!」
「「「え?」」」
「あ、い、いや、間違った。いないよ。もう奴隷の話は無しだ、終わり!」
「ご一緒したいです」
「しつこいよ、ダメだ」
フェーニは項垂れていたけど、気にしないで一路北の村へ向かった。
一晩野宿して翌日、順調に歩き夕方に村に着いた。
村と言いながらも囲まれた塀は高く、立派な検問所もあったがギルドも兼ねていた。壁に村の事が書いてあった。
レンナ村。八〇〇人程が住んでいる北の辺境の町。主に農業と狩猟で暮らしていて他の町と交流も少ない。
証明書を見せ普通に入れた。フェーニ達も大丈夫だね。検問所で宿屋を聞いて行って見る。
宿屋に入り、部屋を取る。すると、後ろにいるフェーニが俺の服を指でつまみ軽く引っ張る。
「あの、ラサキさん。私達、お金持っていません」
「俺が出すから安心していいよ、ゆっくりしようね」
宿代を払い、部屋に行く。
俺の部屋は三人用一ベッドで、フェーニ達は別の二ベッドの部屋だ。部屋に入ると、コーマがベッドに座っていた。
一休みしたら夕食にしよう。皿食屋は無いけど、宿で皿食が食べられた。
コーマとファルタリアはいつもの如く、二人前と大盛りだね。
肉が主食のステーキと抱き合わせの野菜炒め。うん、香ばしくて美味いな、香辛料も効いている。
俺の倍の早さで、美味しそうに食べる二人を見ると目が合う。
「ラサキ、美味しいね」
「ラサキさん、美味しいですよ」
「いいよ、おかわりだろ。遠慮しないで行ってきなよ」
しっかり食べる二人だね。
美味しく食べて部屋に行き、二人を先に行かせて、フェーニ達の部屋に行く。
扉に指を曲げて軽く叩く。
中から声がしたので扉を開け、ベッドに座っている二人に声を掛ける。
「下で皿食が食べられるから行っておいで、お金は払ってあるから好きなだけ食べてきなよ」
「はい、遠慮なく行って来ます」
「いきますニャ」
二人仲良く下に降りて行った。
部屋に戻りコーマを見る。
「何も言わないのか?」
「何が? 何か言ってほしい?」
「あの二人の事だよ。どうするとかさ」
「私はラサキがいればいいの。ファルタリアもおまけだしね」
「ええぇ? おまけなんですかぁ? せめて二番と言ってほしいです。もしくは本妻と愛人でもいいですよぉ」
馬鹿を通り越して面白いな。気にするだけ無駄だって事が良く分かった。
「ラサキはどうしたいの?」
「正直、連れて行くのは止めておく。何かあっても守れないからな」
別の問題もあるな。まだ子供だし、助けた手前、はい、さよなら、って言うのも可哀そうか。
「少しの間だけこの宿屋に泊って、彼女達がやっていけるかどうか見てみようと思う。いいかな」
「私はいいよ、ラサキの好きにして」
なんて聞き分けのいい女なんだよ、惚れ直したよ。
「ありがとう、知っている」
訳が分からないファルタリア。
「何なんですか? 何なんですか? 二人は通じ合っているのですか? そうですか、そうですか、でも私も中に入りたいです!」
コーマがファルタリアに向く。
「頑張れば入れるよ」
「はい! 頑張ります!」
コーマと熱い口づけを交わし、満足したのか離れるコーマ。
待ってました、とばかりに、ファルタリアも吸い付いて来る。
ファルタリアは、コーマを意識しているのか節操があるんだね。自分勝手に吸い付いてこないから、一応褒めておこう。
でも今回はしつこかったな。唇が取れるかと思ったよ。俺も好きだから仕方がないか。
他愛もない話に花が咲き、夜も更けていく。




