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第19話 旅行に出立した

 天気も良く、晴れ渡った空の下

 シャルテンの町を後にして、俺達三人は北東に伸びる街道を並んで歩いている。腕を組まれると、歩き辛いし道中も長いから止めている。

 コーマには、疲れるだろうから消えていてもいいよ、と言ったけど、それじゃつまらないから一緒に歩きたい、と一緒に歩いている楽しそうなコーマ。

 一路エランテの町に向かって進んでいる。馬車でも良かったのだけど、若返った自分の足で歩いて見たいし時間もあるから歩いて行くことにした。

 町から出て、しばらくは平たんな道だったけど、半日ほど歩いたら徐々に上り坂になった。

 俺は強化されているから何ともない。コーマも疲れないと言っただけあって俺と同じだな。ファルタリアが心配だったけど取り越し苦労だったよ。

 速度も落ちる事無く元気に歩いている。


「ファルタリア、疲れていないか?」

「え? 大丈夫ですよ。以前は山の中とかも駆け回っていましたので。心配してくれたのですか? 嬉しいです。エヘヘ」


 獣人はタフだな。これなら休憩無しで行けるかもしれない。

 暗くなってきても速度は変えず、俺達は星空の下歩いている。コーマは勿論、俺も見えるし、ファルタリアも獣人だから夜目が効いて問題ない。

 夜通し歩き、やっと坂を上りきった頂上付近に着く頃には日が昇り始めている。

 見晴らしのいい場所に出て、コーマが北東を指差す。


「ラサキ、町が見えて来た」


 ずっと坂を上っていたので標高も高くなっている。コーマの指差した眼下に町が見えた。ファルタリアも見つけたようだ。


「朝日が当たって、町が綺麗ですね。早く行きましょう」

「ああ、そうだね。でも、まだ遠いよ」


 坂道を、足取りも軽く下って行く。

 下り坂の街道を暫く進むと、やがて景色は森に変わる。さらに歩くと緑力とした木々が濃くなっていく。森の中も、草が鬱蒼と茂っているので奥が見えない。

 そんな時、コーマが森の中を見る。


「ラサキ、魔物に追われている」


 俺は森を見るけど見えない。ファルタリアも同様のようだ。


「コーマ、何処にいる?」


 コーマが指を差す。


「あそこから出てくる。もうすぐ」

「ファルタリア、いつでも動けるように構えろ」


 俺は剣を抜き、ファルタリアは、バトルアックスを手に取り構える。すでにコーマも消えている。

 先に、二人の人影が転がって出て来た。その後ろから、剣を持ったゴブリン五体と、棍棒を持ったオーガ三体が、出て来て二人に襲いかかる。

 転がっている二人は、体勢が整えられる前に襲われ、身構える事しか出来ない。ゴブリンの剣とオーガの棍棒が二人を襲う。が、運が良かったね。

 構えていた俺とファルタリアが、瞬時に駆け寄りファルタリアが、剣を振りかぶろうとしていたゴブリンを一刀両断。宙に舞うゴブリンの上半身。

 俺が、オーガの振り降ろした棍棒を剣で受け、その反動を利用し横一線で振り切るように切り倒した。

 反応できないゴブリン二体を俺が切り倒せば、ファルタリアも、オーガの攻撃を軽々とバトルアックスで受け、オーガを棍棒ごと真っ二つにして切り倒す。

 ファルタリアの倍はあるオーガを簡単に倒すとは凄いな。ファルタリアも確実に強くなっている……馬鹿だけどね。


「ヘクチッ! 誰かが変な事考えているみたいですね。ヘクチッ!」


 うわ、感じるのかよ、話を逸らそう。


「それはクシャミか?」

「そうですけど、何か変ですか? それともそんな私を可愛いと思いました?」

「いや、何でもない」


 そんな事しているうちに、残りのゴブリン二体とオーガは、勝てないと踏んだのか森の中に逃げて行った。

 俺は二人に近寄る。


「大丈夫か? 怪我は無いか?」


 立ち上がる二人。一人は身長一二〇cm程で長い緑色の髪、緑色の眼の可愛い女の子で耳が尖っている。

 もう一人は、身長一一〇cm程で茶色の髪が肩まで伸び、黒い眼。頭には髪の間から三角の耳があり、細い尻尾がある可愛い獣人だった。


「はい、助けていただいて、ありがとうございます」

「ありがとですニャ」


 隣に来たファルタリアが俺に教えてくれる。


「エルフとキャットピープルの子供です」

「始めて見るよ、可愛いな」


 俺の言葉に、両手を口に押え驚愕の表情になるファルタリア。


「ええぇ? ラサキさんは子供も対象ですかぁ! そう言う趣味ですかぁ?」

「違うよ。子供だから可愛いと言ったんだ。変な誤解するな」


 俺とファルタリアの会話に口を挿むエルフと獣人。


「子供じゃありません、冒険者です」

「冒険者ニャ」


 そうか、試験に合格すれば一〇歳から登録出来るんだっけ。じゃ、そこそこ強いのかな。


「ゴメンよ、悪かったね。俺達が年上だからそう見えただけだからさ」

「わかっていただければいいんです。助けていただいた恩人ですし」

「気にするな。通りがかりだし、何も聞かない。気を付けて行けよ」


 二人の名前も聞かず、俺とファルタリアはエランテの町に向かった。その二人はというと、一定の間を置いて付いて来る。

 途中で森の中に入るのかと思えば、ずっと付かず離れずついて来る。話をしても面倒なので、ファルタリアに休憩と称して街道の端に座った。

 想定していなかったのか、挙動不審になる二人。戸惑いながらも止まっている。


「何か用でもあるのかな。俺達はエランテの町に行くんだけど」


 エルフの子が話しかけて来る。


「あ、やっぱり。エランテの町は初めてですか?」

「ああ、初めてだよ。それがどうかしたのかな」

「私たちは、エランテの町で冒険者になりました。もし、町の中で私達を見かけても決して声を掛けないでください。ギルドに知られると困りますので」

「訳ありだな。いいよ、声を掛けないし、無視するよ」

「ありがとうございます」

「ありがとニャ」


 安心したのか、俺達を抜いて走り去って行った。

 エランテの町は、問題でもあるのか? ま、二人の事を話さなければいい事だ。


「ファルタリア、聞いただろ。彼女たちの事は話すなよ」

「はい、決して話しません」


 エランテの町が見えて来た。高い塀で囲まれた町だ。シャルテンの町より物々しいかな。でも、検問所には数組の商人らしき人が並んでいるくらいだから、特におかしな所はなさそうだ。

 コーマはまだ消えている。いつもと違って何か変なのかな。

 俺とファルタリアは何事も無く町の中に入れた。エランテの街並みは、シャルテンの町と変わりなく、何の変哲もない町だった。何が違うのだろう。

 とりあえず、俺とファルタリアは疲れていたので、宿屋を探した。すぐに見つかり、宿屋に入った時には、コーマも現れていた。

 受付らしき場所で宿泊を頼んだ。


「三人部屋を頼む」

「三ベッドと一ベッドがありますけど、どちらを希望されますか?」

「「一ベッドよ!」」


 おお、コーマとファルタリアの声がハモったよ。俺はどっちでもいいけどさ。

 二階の大きいベッドの部屋に通された。二〇〇年前の宿屋と違って、綺麗でいい部屋だな。窓からは街並みが見える。やっぱり、シャルテンと変わらないよ。

 それよりも、夜通し歩いた事と、戦闘で疲れが溜まっている。

 俺は、先にベッドに倒れ、そのまま翌日の朝まで爆睡した。

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