第17話 やはり天然みたいだ
話を切り出したら、さっそくコーマ。
「私はラサキとならどこでもいいわ。楽しみね」
ファルタリアは、モフられながら勘違いする。
「やっと冒険ですね。依頼を受けて討伐とか楽しそうです。是非行きましょう」
「ファルタリア、冒険じゃないよ、旅行だ。蓄えも十分貯まったし無理に依頼は受けない予定だ」
「そうなんですかぁ、残念です」
「だから無理強いはしない。何だったらファルタリアは、この家で暮らしてもいいよ」
涙目になり慌てるファルタリア。
「ええぇ? そんなぁ、冷たいですラサキさん。連れて行ってくださいよぉ。一緒に行きたいです。私の事、嫌いになったのですかぁ?」
「ああいいよ、一緒に行こう」
「嫌いなのですかぁ?」
「え? す、好きだよ」
「良かったぁ、私も好きですよ。エヘヘ」
コーマは話を聞いていないで果物食べているし、一気に疲れたな。
就寝前、コーマは神の務めで、出かける、と言う。
「私、今晩は出かけていないけど、寂しい?」
「あ? あ、ああ、そうだね」
「ウフフ、嘘でも嬉しいな。行って来まーす」
「気を付けてな」
消えて行くコーマ。今晩は、広いベッドもさらに広く使える一人寝だ。
翌日、目が覚める。隣に密着している柔らかく、弾力があって、張りのある体、肌触りのいい毛並み。そして可愛い寝息。
「何で隣にファルタリアが寝ているんだ?」
「あ、お、おはようございます、ラサキさん。エヘヘ」
「エヘヘ、じゃない。それも、コーマと同じで、何で何も着ていない」
「ラサキさんが寂しいのでは? と思い夜中に忍び込みました。いつもコーマさんがそうしていたので、同じようにしてみたのですがお気に触りましたか?」
「い、いや、別にいいよ」
実は、ファルタリアの裸体を見るのはこれが初めてじゃないんだ。
毎日、水浴した後に、コーマが素っ裸で出てくる。コーマは、二人で過ごしていた時からだからいいとして、それに習ってファルタリアも素っ裸で出てくる。
初めての時は驚いたけど、何度言っても聞かないから見慣れてしまったよ。
直に触るのは初めてだけどね。
ファルタリアも可愛いからいいのかな。コーマに、優柔不断だと思われるかな。それより大丈夫か? 怒らないか?
「それでは、今後は私も添い寝が出来るのですね」
「いいわ、許してあげる。私は構わないわよ」
コーマが帰って来た。ん? 怒っていないし、認めているよ。
「コーマ、いいのか? この前まで、まだダメ、と言っていたのに」
「別に。あれは言っただけ。ファルタリアが約束を守らなくても、私には何も出来ないから。干渉できるのはラサキだけって言ったじゃない」
「やったー! コーマさんも公認だー! いやっほーっ!」
「コーマがいいのなら、俺もいいよ」
コーマがファルタリアを睨む。
「ファルタリア、今後は私が何も出来ない事を言い事に、好き勝手にしたら許さないわよ」
俺も肯定する。
「そうだな、ファルタリア。俺も同意見だよ、気を付けるようにね」
「勿論ですよ、守ります。私は第二で十分です。エヘヘ」
第二ってなんだ? もうその気でいるのか?
「それはまだだよ、コーマともまだなんだから」
「ううぅ、頑張ります」
なんだか嬉しそうなコーマ。自分で胸を持ち上げて、俺に向け挑発的な態度になる。
「だったら早く手を出してよ、ラサキ」
「い、いや、まだだよ、コーマ。これから先も長いんだからさ」
ファルタリアが、目を輝かせてコーマを応援する。
「ラサキさん、早くコーマさんと合体してください」
「な、何言っている。ば、馬鹿じゃないのか? 」
人の話に聞く耳持たない、赤ら顔のファルタリア。
「次に私と合体……」
コーマも、納得したようにうなずく。
「ラサキ、それなら私も賛成よ。いつでもいいわ」
「お前らなぁ……ゴメンなさい、まだ勘弁してください」
二人がかりの挑発はきつかったな。もう一押しされたらどうなっていたか。
俺の精神年齢は四〇歳だから、ご期待に添えて、する事をしたってかまわないけれど、せっかく若返ったんだから、もう少し楽しまないとね、我慢、我慢。
これもある種の拷問かも知れないな。
どのくらい家を空けるのか分からないので、部屋の掃除を始めた。コーマには消えてもらっているよ、神にそんな事はさせたくないからね。
ファルタリアは、鼻歌を歌いながら居間の掃除をしている。
「フーン、フフーン、ちーんこ、ちんこ。ラーサキさんのちんこ。フーン、フフーン、ちーんこ」
「な、ば、馬鹿っ! ちんこの歌なんて歌うなっ! 変態だぞ!」
振り返って俺を見るファルタリア。
「え? 大好きなラサキさんの事を歌っているのに……変態なのですか?」
「ファルタリアが体の一部に固執しているからだ」
「あー、ちんこですか? 好きなので。すみません」
「だから! ちんこちんこ、言うな!」
「だって二番なので、早く合体出来ればいいな。と思っていたので、思わず声に出てしまいました。エヘヘ」
「今後、口に出したらファルタリアとは行動しない。わかったな」
「ええぇ? そんなぁ。わかりました、二度と言いません。ううぅ」
うな垂れ、尻尾がしぼんで行くファルタリア。当たり前だろ、女の子が何度も口にしてはダメだろ。何考えているんだ? コーマも同じなのか?
それとも二〇〇年で女の考えが変わったのか? 疲れた……疲れが一気に溜まったよ。
気を取り直し、家の戸締りをして露店をたたみ、簡単な装備でシャルテンの町に向かった。
「ギルドに寄って、それから皿食を食べながら考えよう」
ギルドに入る時、コーマが町の中を振りかえる。
「ラサキ、ファルタリアに早く離れるように言って」
「ファルタリア、奥に隠れろ」
「あ、はい。どうかしましたか?」
すぐに隠れるファルタリア。俺も、コーマの見ている方向を見る。
「ラサキ、お客さんよ」
「誰だ?」
町中から女の子の大声が聞こえた。
「ラサキーッ!」
青く長い髪の可愛い女の子が見えた。
あ、ネリセルだ。睨みながら、まっすぐ俺に向かって来た。コーマはいつのまにか消えている。
「やあネリセル。元気か?」
「何故私の名前を。それより表に出ろっ! 果し合いだっ!」
「面倒だな。チャッチャとやろうか」
騒ぎでギルドマスターのウルバンが出てきた。
「何事だ? 果し合いだと? 本気か?」
ネリセルは即答する。
「はい、本気です」
「ラサキも受けるのか? 受ける権利はラサキにある。嫌なら受けなければいい」
「いや、やろう。それで、ネリセルの気持ちが晴れるのならね」
ウルバンが、ネリセルに確認する。
「果し合い、かたき討ちの場合、殺されても文句は言えないがいいのか?」
「は、はい、やります」
「ラサキはどうする?」
「ああ、いいよ。やろう」
「ではネリセルとラサキの果し合いを正式に認める」
果し合いの場所は、広場を借りて行う事となった。




