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第16話 変なのは任せた

冒頭は三人称です

 シャルテンの町で、剣を教えているファルタリアと受けているネリセル。


「上達したね、今日で終わりよ、ネリセル」

「本当ですか? もっと教えてほしいです」

「もう私が教える事は無いの。今では施設でも上位に入っているし、からかわれなくなっているでしょ」

「確かにそうですけど……」

「今後は今までやってきた鍛錬を、自分なりに厳しくして行いなさい」


 感極まって泣き出すネリセル。


「ううぅ、今までありがとうございました、ファルタリアさん。なんてお礼をしていいのか」

「いいのよ、これからも頑張ってね」

「でも。何で私のために」

「それは、言わない約束でしょ」

「……でも」


 納得しない様子のネリセルに、ファルタリアが話す。


「仕方がないな。これはある人に頼まれたの。それ以上は話せないけどね。ネリセルとの鍛錬は楽しかったよ。これからは自分の力でやるの。じゃあね」


言い終わると同時に走り出すファルタリア。対応できないネリセル。


「えぇ? あ、ファ、ありがとうございましたー! あっ」


 ファルタリアに手を振るネリセル。振り向きざまに手を振りかえすファルタリア。その勢いで派手に転び顔面を地面に打ち付け転がる。

 ネリセルの心配も余所に、すぐに起き上がり走り去って行くファルタリア。

 小さくなるまで見送るネリセル。


「厳しかったけど、楽しかったな。これからも頑張るぞ」


 ネリセルが一人立ちするまで、そう遠くは無いだろう。


◇一人称に戻ります。


 シャルテンの町から、俺の露店までの通行量が多くなって、昼間は魔物も出なくなって来ている。

 人が多いと魔物も嫌がるようだね。町の人や俺にとっても好都合だった。

 夕暮れ時、ファルタリアが走って帰って来た。今回は転ばなかったね。


「ラサキさーん、ネリセルの鍛錬が終わりましたー」

「ご苦労様、ファル、んー!」


 話しが終わる前に、俺に飛びついて口づけをしてくるファルタリア。コーマは全く気にしていないよ。それでいいのか? 

 離れるファルタリアに釘を刺す。


「口づけはいいけど、人の話は聞くように」


 うな垂れるファルタリア。


「ううぅ、すみません。以後気をつけます」


 翌日からは、ファルタリアも露店の商売に加わって楽しく過ごした。お陰様で店も繁盛したよ。


 数日後、店を開いていたらコーマが不機嫌になった。


「ラサキ、また変なのが来る」

「またか」

「何ですか、何ですか? 何が来るのですか?」

「ハァ、見てればわかるよ」


 横のつながりとか無いのかね。ゆっくりと近づいて来た、どう見ても見事な盗賊達。一〇数人は歩いて、別の一〇数人は馬に乗っている。

 ファルタリアが、納得したように手と手を叩いて大声を上げる。


「あーっ! 変なのって、盗賊ですか! ねえ、ラサキさん。変なのって、盗賊ですよね」


 やっぱりファルタリアは、お馬鹿決定だな。

 聞こえたのだろう、盗賊達が睨んできたよ。


「何だと? 随分と言ってくれたな。そこの肉全部で勘弁してやるよ」


 他の盗賊達も、いやらしい笑みを浮かべているし。


「俺はあの獣人を貰って行こう。楽しめそうだ」

「え? 私で楽しんでもらえるのですか? 嬉しいです、エヘヘ」


 馬鹿。

 ファルタリア、何か勘違いしていないか? 喜ぶ場面じゃないだろ。


「ファルタリア、こいつらの処分は任せるよ、好きにしろ」


 コーマはとっくに消えているので、俺は椅子に座って見物する事にした。

 任されたファルタリアは、嬉しそうだ。


「任されましたよー、ラサキさん。頑張りまーす、エヘヘ」


 盗賊も呆れていたけど肉に手を出そうとした。


「お金払ってくださいね。払ってもらわないと、ぶった切っちゃいますよー」

「馬鹿か? 肉もお前も貰って行くに決まっているだろ、大人しくしろ。その後で、そこの男も始末してやろう」


 手を出そうとした盗賊に、ファルタリアは瞬時にバトルアックスに手を掛け、一刀両断、横一線に切り飛ばした。

 上下真っ二つになった上半身が、血しぶきを上げながら回転して飛んで行く。驚いている盗賊達。


「お金払わないとダメですって言ったのに。行っても聞きそうにありませんから、ぶった切っちゃいますね。行きまーす」


 いやー、凄いよ、バトルアックスの凄さを思い知らされた。ファルタリアの馬鹿力も加わって、剣で避けても簡単に砕いて、盗賊が悲鳴を上げ真っ二つにされている。

 馬に乗っていても関係なく、馬ごと真っ二つにしているし、こりゃ蹂躙だな。ファルタリアは、こんなに強かったんだな。

 それにしても、ファルタリアは残忍だな、人を切り裂いても何とも思っていないようだ。フォックスピープルだからか、むしろ楽しんでいる感じだね。

 獣人はみんなそうなのか?

 半分以上切り殺され、残党は尻尾を巻いて逃げて行ったよ。残った死体は、金品を取り森の中に転がしておいた。後の処理は、夜の魔物に任せよう。

 バトルアックスを拭いて、背中に戻すファルタリア。


「あー、楽しかった。魔物狩り以来の、久しぶりの戦闘です。ラサキさん、私、強くなっているみたいですよ。エヘヘ」

「ファルタリアは人を殺しても何とも思わないのか?」

「え? 何を言っているのですか? ラサキさん。人を殺すなんて、怖くて出来ませんよ。盗賊は人ではありません、盗賊です」


 あ、そう言う事でしたか。悪者は人では無いって事ですね。

 コーマも現れて、座っている俺の首に両腕を回し抱きついてきた。


「今回は、盗賊ファルタリアね」

「ええぇ? コーマさん。私、盗賊じゃありませんよぉ」


 言い訳をするファルタリアは、冗談が通じないんだな。

 仕切り直しで開店だ。



 数週間後、頼み事があってファルタリアにシャルテンの町に行ってもらった。

 検問所とギルドに貼ってある露店の案内を剥がして、すぐにではないけど、閉店のお知らせ、に貼り換えてもらう為に。

 繁盛は続いたけど数か月後、惜しまれつつも閉店した。

 その夜の事

 食後、居間で寛いで座っている赤ら顔のファルタリア。その隣で、俺が膨らんでいる金色の尻尾をモフッている時に話を切り出す。


「旅行でもしようか」

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