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第27話 手合せが終わる

 そこには、対峙して腰が引けている四人がいた。

 おいおい、お宅ら本当に何処から来たんだ? それよりお宅ら本当に勇者なのか? 国が勝手に決めつけたんじゃないのか?

 疑問もあったけど聞いても仕方がないから、チャッチャ、と始めようか。


「じゃあ始めますよ、ラーンさん、準備はいいですか?」

「い、いつでもいいぞ。ラ、ラサキ、援護はしっかり頼む」


 援護? 何言っているんだよ。手合せする前からそんなんじゃ、四人だけでは負け決定です、と言っているのと同じなのに。


「危ない、と感じたら補助はしますけど、全力で手合せしないと保証できませんよ、いいですか?」

「わ、わかった、やってみるから、頼む」


 頼む、では無く、始めてくれ、じゃないのか? 助けられたい感が、沸々、と伝わってくるようだよ。

 ファルタリア達も、各自補助する位置に着いた事を確認する。

 邪王リコは信頼のあるファルタリアと一緒で楽しそうだ。

 よし、気にしないで行こうか。


「では。初め!」


 デスナイトと四人の手合せ、と言う戦いが始まった。

 勇者一行は、先頭にラーンベルガーとバルバロッカ。

 その後ろに並んで後衛のリリースマロンが魔法を唱え、ラベルラガーデが弓を引く体勢だ。

 様子見としているが、対するデスナイトは気にも留めず、盾を前にして躊躇なく、何の迷いも無く、気にする事無く突き進んでくる。

 さすが魔物の頂点。

 すかさずリリースマロンの雷の攻撃魔法と、ラベルラガーデの魔法を練り込んだ光る矢が勢いよく放たれた。

 だがしかし、悲しいかな、やはりデスナイトの前では無効化される。


「え? そんな」

「何だと? 俺の矢が効かない?」


 二人の動揺もお構いなしに、デスナイトは身の丈に似合わず素早くラーンベルガーに剣を振りかぶる。

 一撃目を、あえて力量を見るように剣で受けたラーンベルガー。

 魔剣の反動も衝撃波も無効化されているようだね、残念。


「くっ、強いぞ。気を引き締めろ!」


 反応したバルバロッカが、その横に回り込みガントレットで力一杯殴りつけ攻撃するが、鈍い金属音と共に盾で防がれた。


「ぐっ、あの巨体に似合わず何と言う素早さだ!」


 しかしバルバロッカの攻撃も力強く、殴りつけた反動でデスナイトが数歩後退する。

 刹那、ラーンベルガーが反撃し、渾身の一撃で切りかかったようだ。


「でやーっ! どうだーっ!」


 確かに速い攻撃だったけど、俺達にして見れば、容易く避けられるくらいだった。

 案の定デスナイトも、剣で受けていた。でも、盾が間に合わなかったくらいだから一応速いのかな。

 リリースマロンとラベルラガーデも、詠唱し終えたのか、さっきより強い魔法攻撃と魔法を練った矢を放つ、が、やはり無効化されダメージを与えられなかった。

 しかし、ここで偉いと思ったのは、落ち込む様子も無くすぐに前衛の二人に掛ける回復魔法、強化魔法、防御魔法などに変更していた点だ。

 へぇー、個人個人で臨機応変に対処できるんだな。そこは見習わないといけない部分だよ。

 この配置分担変更で、勇者側が少しだけ有利に事を運べる。と思ったら――そうでもなかった。

 ラーンベルガーとバルバロッカの身体強化、加速強化、腕力強化された怒涛の攻撃を、デスナイトは盾と剣をうまく使い分け難なく受けきった。

 すぐに反撃するデスナイトは、バルバロッカに体重を載せた盾で体当たりし吹き飛ばした。

 振り返りラーンベルガーに横一線、剣で攻撃したが、間一髪剣で受け流す事は出来たが、反動で飛ばされ受け身も取れずに転がった。

 見逃さないデスナイトは、さらに踏み込んでラーンベルガーに襲いかかった。

 起き上がろうとしたラーンベルガーに避けられない剣の一撃が振り降ろされた。

 が、ラーンベルガーの手前で硬質な音と共に弾かれた。力強い剣の反動で後ずさりするデスナイト。

 よく見れば魔法障壁で守られていた。

 これは、リリースマロンとラベルラガーデの強力な合成防御魔法を張ったのかしっかり受けきっていた。

 なるほど、二人がかりなら対処出来るのか。これならまだ勝敗は決まらないな。


 そんな攻防は一進一退だったけれど、徐々に、ジリ貧で押され始める勇者一行。

 あ、そろそろ補助しないと危ないかな、と思って三人を見渡した。

 は? ファルタリアと邪王リコは遊んでいるし、サリアは後ろを向いて、ワシワシ、しているし、辛うじてルージュだけが手合せを観戦していた。

 ――つまらなそうに欠伸しながらだけれど……。

 何だよ、ファルタリアは勇者達の強さを見定めるんじゃなかったのか?

 邪王リコも、デスナイトが負けない、と確信したようでファルタリアとじゃれ合って、無関心で全く見ていないし。

 これじゃ、補助にならないだろ。勇者が負けちゃうぞ?

 あ、そんな事考えていたらジリ貧だったけど、一進一退を保っていたラーンベルガーとバルバロッカがわずかに隙を見せた。

 見逃さないデスナイトは、盾で振り払うように二人を弾き飛ばし、後ろで詠唱しているリリースマロンとラベルラガーデに襲いかかった。

 対応できない二人は、無防備に近いままデスナイトの横一線で振られた剣で、容易く切り裂かれるだろう。

 しかし、二人の手前でデスナイトの剣が弾かれた。

 二人の前に膜のような強力な障壁があり、何度も切りかかったが弾かれた。

 この障壁は、知っていたようにルージュの防御魔法に助けられていた。

 体勢を整えたラーンベルガーとバルバロッカは後ろから攻撃するけど、察知したのか振り返るデスナイトは、二人の攻撃を盾と剣で受けきった。

 その身体能力に驚愕し放心状態の二人。いや、四人とも戦意喪失していた。

 ――あ、終わりだな。

 諦めたように無防備に立ち尽くしているし。


「リコ! 終わりだ!」

「はーい、ストーップ」


 一言でデスナイトの攻撃が止まり、殺気のない対戦前の状態になった。

 聞き分けの良いデスナイトだった。


「デナタンいちごう、おわりだよー」


 邪王リコの可愛い一言で畑に戻って行くデスナイト。また畑仕事が待っているのか。

 ある種のブラックみたいだな。でも疲労が無いからいいのか――リコを慕っているようだからさ。

 手合せが終わった事を確信した勇者一行は力尽きたのか、へたり、と座り込んでいた。四人とも下を見たまま沈黙している。

 この手合せで反省しているのかな。負けたのだから、もう国に帰って欲しいな。

 なんて思っていたら顔を上げるラーンベルガー。

 疲労しきったラーンベルガーが俺を見る。


「ラサキはあのデスナイトを倒せるのだろ?」

「はい、倒せます」

「やはりな。ラサキなら同時に二体、いや三体くらいは倒せるのか?」


 もういいや、面倒臭くなった。


「いえ、二〇体くらいは倒せますよ」

「げぇぇ! に、二〇体だって?」


 他の三人も驚愕している――けど。


「俺だけではなく、ファルタリア、サリア、ルージュも同等の強さです」

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