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第20話 招待された2

 中央のテーブルに並べて、奥に戻ったのを確認して振り返る邪王リコ。


「どうぞおすわりください」


 邪王リコ、隣にファルタリア、サリア。対面して俺とルージュが座った。

 目の前に置かれている飲み物を飲んだら、果物を絞った果汁で濃厚で美味しかった。


 邪王リコ曰く、果物の飲み物は畑で採れた果物。

 部屋の明かりは、等間隔で壁に掛けてある魔石に魔力を練り込んで光らせている。

 自分の寝室を始め客室もある。そして今は風呂を造っている最中。

 あー、気に入ったな、我が家の風呂が。

 出来上がったら入りに来て欲しい。一緒に入りたい、と願い出た。

 俺は一人で入るのもいいけど、邪王リコはみんなと入った事が楽しかったのだろう。

 魔物は一緒にいても、案外孤独なんだな。

 ――俺は遠慮しておこう。

 まだ言わないけど、その時は何か用事でも作って言い訳しよう。


 邪王リコとファルタリアを始め、サリアとルージュもこのダンジョンの事や部屋の事など聞いたり驚いたりと談笑した。

 そして料理が振る舞われた。

 またもやデスナイトが、器用に料理を載せた皿を何枚も載せ運んでくる。

 魔族の食べる料理とは何か。

 塩で味付けしたステーキと野菜。俺の作る料理と同じような作り方だった。

 でもシンプルで美味しかったよ。焼き加減も抜群だったし、侮れないな魔族の料理。

 リコはここに居るからデスナイトが作っているのか?


「リコちゃん、美味しいですよ。あむ」

「いい味してるがや。あむ」

「素朴だけど、絶妙な味加減で美味しいです。あむ」

「ありがとうございます。えへっ」


 好評だったので満面の笑顔になった邪王リコ。


「もしかして、デスナイトが作っているのか?」

「はい」


 あの巨体で、あのごつい手で作っているのか。

 んー、何となく――想像したくはなかったな。

 食事も終わる頃に二体のファイアドッグが居間に入って来る。

 そして両脇から邪王リコに頭を、グイグイ、と押し付ける。


「はいはい、まっててね」


 椅子から降りて奥から肉の塊を二つ持って来て、壁際に置いてあった二つの皿に載せた。


「はいどうぞ」


 言うや否やがっつくファイアドッグ。

 こうして見ればごく普通の大き目の犬にしか見えないんだけどな。

 あ、そうだ忘れていた。覇王の事聞かないと。

 俺は邪王リコに、タレーヌの丘のダンジョンで、初めて邪王リコにあった場所で覇王にあった事を話した。


「リコはその覇王を知っているか?」


 少し間をおいて答える邪王リコ。


「お、おねーちゃん、です」

「やはり姉か、そんな気はしたけど。目的は何だ?」

「せかいせいふくです」

「昔のリコの目的は何だった?」

「せかいせいふくでした」


 邪王リコ曰く、当初は血の繋がりの無い魔王が世界征服を実行するはずだった。

 しかし、何者かに阻止され、魔王も倒されたので邪王の自分が代わりに始めた。

 でも自分も失敗したから、今度は姉の覇王が出てきた。

 だから自分は用済みだ。

 でも邪王として復讐は果たさないと、と思い、レムルの森に来て戦った。

 負けてばかりだったけど、三人と戦っているうちに、全力で戦える、全力で遊べる、それが徐々に楽しくなってきて、もっと遊んでほしくなった。

 世界征服には共同では行わない。喧嘩になるし姉の覇王が厳しく怖い。

 失敗した自分には興味はない。

 そして、ここに移り住んだ事は多分知らない。

 調べられたら索敵能力が高いからすぐに見つかる。

 でも、今は世界征服の最中だから忙しくて来ないだろう。


「覇王がドラゴンを呼んだのか?」

「はい、よんだだけだとおもうけど、なにするかしらないです」

「覇王にも名前はあるんだろ?」

「はい。おねーちゃんのなは、ゼグ・レムーダバッツァです」


 名前を聞いた、お人好しのファルタリアが割り込んでくる。


「レムーダちゃん、んー、あ、レムちゃんですね。レムちゃんに決まりです」


 みんな黙ったまま頷いているし、ゼグ・レムーダバッツァ改め覇王レムに決まりのようだ。


 邪王リコが続ける。

 覇王レムは自分よりも強い、強いけど自分とくらべ単身では四人には到底勝てない。

 逃げるように逃走したのはそれが身を持って知ったからだろう。

 自分よりも解析能力が高く、その上したたか。

 覇王レムは魔石に魔剣を突き刺して効率よく魔力を練り込む。

 次は自分と同じように魔物の群れを形成し、使役してまた現れるのではないか。

 あれ? その魔剣って勝手に貰って来て倉庫に眠っているあの剣か?


「その魔剣がないとどうなる?」

「え? ねりこめないのでなにもできないです」


 あ、なら返すのはよそう。持って来て正解、黙っていれば問題なしだ。

 だがしかし、ファルタリアは読めなかった。


「あら、リコちゃん。その魔剣はラサキさんが持っているのよ」

「え? ほんと?」

「ええ、そうよ。レムちゃんが忘れて行っちゃったから貰ってきたの」

「たいへんです、いまごろさがしています」


 俺を見るファルタリア。


「ラサキさん、困っているみたいだから、返してあげませんか?」

「ハァ? 何言っているんだ? 返したらまた魔物の群れが襲って来るんだぞ? 知ってて言っているのか?」

「簡単です。また倒せばいいんですよ。エヘヘ」

「俺は嫌だよ、ゴメンだ」

「ええぇ? 可哀そうですよぉ」

「あたいも面倒がや」

「ボクはラサキさんに合わせます。でもどちらかと言うと嫌かな」

「うちにはもうかんけいないです」

「ほら、リコもそう言っているんだから、覇王レムはほおっておけよ」

「ううぅ、そうですか、わかりました」


 項垂れるファルタリア。

 しかしお前もお前だよ、覇王レムの肩もつっておかしいだろ。

 何が、可愛そう、だよ、また魔物の群れが襲ってきたら、被害が出るのは眼に見えているだろ。

 ファルタリアに小一時間ほど説明、説得、説教したくなったけど、あの性格は今さら直せないな、無駄な時間を使いたくないから止めておくよ。


 魔石に魔力が練り込めなければ、覇王レム、だけなら何とかなるだろう。

 そう言えば邪王リコは以前、魔界から来た、って言っていたよな。


「なあリコ、この先、姉のレムが世界征服を失敗したらどうなる? 止めるのか?」


 俺を見て眼を下にそらし、少し間を開ける邪王リコ。


「――おかあさん」

「え?」

「おかあさん。げんおうがくる――たぶん」


 邪王リコ曰く、母親は源王。真祖の魔王で、魔界では真魔王とも呼ばれている。

 約二百年前の戦争が始まる前に世代交代してメデゥーサが魔王になり、権利を譲った。

 この時点では、万が一魔王が倒されれば元に戻るがこの二百年君臨した。

 その間、源王が子供を授かり、覇王、邪王と順に後継者が出来た。

 そして今に至る。

 魔王が倒され、権限が母、源王に戻り源王の指示で邪王リコに白羽の矢が立つ。

 そして魔王に続き失敗し、姉の覇王リコが出向いた。

 覇王が失敗すれば最終的に母、源王が出て来るだろう。

 邪王リコは言う。母、源王は強い。初めて魔界を統一したくらいだから。


「源王の強さはどのくらいなんだ?」


 邪王リコは、昔一度だけフレイムドラゴンと戦う源王を見た。


 え?

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