第18話 日常になった
見ていたファルタリアが、ファイアドッグに何の恐れも無く手を出してみる。
――そして撫でる。
「へぇー、大人しいですね、言う事も聞くみたいだし、こうしてみると可愛いかな」
「ファルタリア、噛まれるなよ」
「大丈夫ですよ、平気です。ラサキさんも触って見たらどうですか?」
既にサリアとルージュは、興味深そうに撫でている。
眼を細め撫でられているファイアドッグ。
おかしくないか? 魔物だぞ、それ。
「いや、俺は遠慮しておく」
邪王リコの家? にはまた今度改めて来る事を話し別れた。
居住する許可を、条件付きとはいえ承諾したのだからもう何も言わない、多分。
あの邪王の事だから、急に何するか分からないからしばらく様子見だ。
次に会ったら、覇王の事でも聞いてみよう。
家に帰ればコーマが抱きついて来た。
「ラサキー、お帰り―、んー」
「ん、ただいま、コーマ」
コーマとイチャこいている中、三人は何の文句も言わず、装備を外し、掃除したりやる事をこなす。
昔、ファルタリアと一人の時はコーマと言い合ったりした事はあったけど、三人になってからはコーマが面倒なのか神の力を使っているのか言い合いはない。
でも、喧嘩とか口論とか嫌悪とか疑惑とか不穏とかなんて全くなく、いつも仲はいい。
神のコーマの存在は大きいようだ。
そして今日はお勤めの順番はコーマだから嬉しそうだ。
「ラサキー、んー、今晩が楽しみー。今からでもいいよ、ウフフ。ギュー」
「ちょ、ちょっと待ったコーマ。今晩まで待とうよ。晩御飯作らないと」
振りかえるファルタリアは、細い眼で見ている。
「何しているんですか? イチャイチャはあっちでやってください。私もしたくなりますよぉ」
抱きつかれたままの俺。
「ほら、ファルタリアも言ってるし」
「ウフフ」
「あたいもがや」
「ボ、ボクもです」
「じゃあ、順番でイチャイチャしましょうか。エヘヘ」
「晩御飯作らないとダメだろ」
「後でいいがや」
「そうですね。ハハ」
「だって、ウフフ」
で、何だか順番でイチャこきました。
――どっと疲れが出たような気がした。
そして生姜焼きとステーキ、それに野菜炒めを作り、妖精の果物もテーブルに並べれば、夕食が始まる。
リコの事や、それに伴う今後の事などの話をしながら美味しく食べた。
その晩は、コーマを激しく可愛がって満足したようだ。
翌日は、ファルタリア達も狩りに行かず、一緒に寝ている。
コーマも満足した表情で、スウスウ、と寝息を立てて眠っている。
起こさないように起き上がり、サリアの頭を股間から静かに下ろし、部屋を出て一つ大きな伸びをする。
「んー。さて、朝食をつくろうか」
目玉焼きと玉子焼き、それとパンに挟めるように薄く切った肉を香辛料で焼く。
野菜も一緒に挟めるように手ごろの大きさに切れば、後は各自の自由に、好きなように、食べてもらう。
パンが沢山入ったバスケットをテーブルの中央に置いて、その周りに料理を運び順に載せる。
その匂いに釣られるように、みんながこぞって起きて来た。見れば服を着ていた。よしよし。
「ラサキ、おはよう」
スタスタ、とテーブルにつくコーマ。
「ラサキさん、おはようございます。うーん」
大きく伸びをするファルタリア。
「おはようがや。ファー」
手を口に当てて欠伸をするサリア。
「おはようございます、気持ちの良い朝ですね」
一番爽やかそうなルージュ。
「おはよう。温かいうちに召し上がれ」
朝食を食べながら談笑し、相変わらず賑やかな食卓。これも楽しいひと時だ。
皆が食べ終えルージュと片付けする頃、扉を叩く音が聞こえた。
コーマは、しばらく寝るね、と一言言い残し部屋に入った。
ファルタリアが扉を開けば、さっそく遊びに来たのか邪王リコが立っていた。
「あらリコちゃん、おはよう。朝からどうしたの?」
「おはようございます、ファルおねーちゃん。やさいもってきた」
「ラ、ラサキさん? ちょっと来てください」
「どうした? リコが来たんだろ? 中に入れればいいのに」
扉越しにリコと外を見れば、リコの後ろには、野菜が沢山載っている荷車を曳いた状態のデスナイトが立っていた。
おいおい、この場を住民が見たら大騒ぎだろ、洒落にならないぞ。
ん? その荷車は俺達のだろ。ちゃっかり使っているし。
そんな思いも余所に、邪王リコはデスナイトに振り返る。
「そこにおいてかえっていいよ」
デスナイトは荷車から離れ、踵を返して一路来た道を帰って行った。
――誰にも見られていませんように。
これは後で代表にも伝えておこう。
俺の家の周りで何が起こっても気にするな、全て魔法の類だ、と。
邪王リコを部屋に入れ椅子に座らせる。
サリアが飲み物をリコに差し出せば、お礼を言って一気に飲み干した。
「フゥ、おいしいです」
「リコ、朝飯食べたか?」
「まだたべていません」
「簡単な物だけど食べるか?」
「ほんとうですか? たべたいです」
同じ料理だから、パッ、と作ってテーブルに載せた。
隣に座っているファルタリアが食べ方を教え、挟んであげていた。
邪王リコは、両手でパンを持ち、美味しい美味しい、とかぶり付いて食べている。
こうして見れば可愛い子どもなんだけどな。ファルタリアもこういう時だけ大人風を吹かしているし。
「ほらほら、リコちゃん。口の廻りが粉だらけですよ。はい、拭きますよー」
食べながら邪王リコが、外の野菜は畑で採れすぎたのでみんなで食べてほしい、と言ってきた。
荷車に載せてある野菜は、もいでしまってあるから保存がきかない。
なので、食べられるだけ貰って、残りはファルタリア達に売って来てもらおう。
その売り上げは邪王リコに返して、いつか、いつの日か、遠い未来かもしれないけど、買い物の購入資金にでも充ててもらおう。
「はい、わかりました。おねがいします」
承諾も得たので今後はそうしよう。
美味しそうに食べていた邪王リコも満足そうだった。
一息ついたところで野菜を倉庫にしまった後、邪王リコと三人は遊びに出かけて行った。
遊び、と言っても言い方を変えた手合せで鍛錬場に行っただけなんだけどさ。
邪王リコの、遊び、と言う戦い、三人が言う、鍛錬には三人しか付き合えない。
勇者一行でも無理だろう、いや、絶対無理だ。
以前の邪王リコと三人の鍛錬と比べても力の差は歴然としている。
四人がかりでも無理だな。やれば確実な、死、が待っているよ。
一瞬、邪王リコの遊び相手に、と考えた俺が浅はかだった。
ファルタリアと邪王リコが手を繋ぎ、仲良く歩く四人を見送っていたら背中に視線を感じ、振り返れば部屋の扉を少し開き、妖艶な笑みを浮かべて手招きするコーマ。
昨晩あれだけ可愛がったんだけどな、と思いつつも部屋に入ればベッドでイチャこく。
「ラサキ、好きよ。ウフフ」
「ああ、俺もだよ」
そして第二回戦が始まり、昼までイチャこかれました。




