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第16話 帰宅

 アルドレン帝国側の宿の岩風呂とは比較してはいけない。

 この宿の風呂はこの宿でとてもいいよ。

 帝国が良すぎたんだ、文句はないよ、この風呂でも贅沢なのは知っているから。

 風呂に入ればいつもの配置でいつものように、ちんこの歌、の輪唱が始まる。

 今ではルージュも完コピしているし、二人に負けず劣らず堂々と歌っているし。

 もしこの場に誰かいて見られたとしたら、お馬鹿の集まりか下ネタ好きの淫嫁に見られてしまうのだろうか。

 ――俺が黙っておけばいい事なのだけれど。

 コーマは無関心で、嬉しそうに俺の隣で引っ付いている。これはいつもの事。

 ちんこの歌の輪唱が終われば個人個人で温まるので、俺はファルタリアの大きく膨らんだ尻尾を掴み腿に載せ、これでもかとモフる。

 赤ら顔で嬉しそうな表情を浮かべるファルタリア。


「あん……」


 その夜、お勤めの順番だったサリアを、今日のご褒美として十二分に可愛がって就寝。


 翌日になり、今度こそレムルの森に帰る。そんな思いで眼が覚め上半身を起こす。

 もう慣れている、とはいえ、俺以外全員が全裸のこの状況。

 俺だけが感じる、考える。世の中の嫁や嫁候補はみんな全裸で寝るのか?

 それならいいけど、それならいいのだけれど、いまだに信じられない。

 こんな事聞くに聞けないし、聞ける訳がない。

 それに誰に聞けって言うんだよ――いないじゃん。

 嫁なんだからいいけれど、嫁になっているのだからいいのだけれど、既に嫁なのだから――やめよう、朝から疲れが出た。

 もう考えるのはよそう、気にするな、小心者だぞ、しっかりしろ、俺。

 そんな俺の手に、指を絡めて握って来るコーマ。


「おはよう、ラサキ」

「ああ、おはよう」

「前々から言っているけど、ラサキの好きなように、思うように、気にしないでやればいいのよ。ウフフ」

「俺もコーマに感謝している、ありがとう。……ん」


 久しぶりに――いや、初めてか? 数度目か? 早々無い俺からコーマに口づけした。


「嬉しい……んー」


 口づけ返しだ。まあ、今が幸せなんだ、とつくづく思った。


「さ、身支度して帰ろうか」



 今、ファルタリアとサリア、それにルージュが大量の血抜きした肉を、レムルの森に移り住んだ住民に安く売りさばいている。

 肉を満載した台の前には順番待ちしている数十人の人々。


 俺達が我が家に帰ったのは二日前。

 帰った事を知った住民の代表が来て、肉の在庫が尽きそうなので欲しい。

 ついでに野菜類も欲しい、とせがまれ早朝から狩りに行って今に至る。

 コーマは今一人、家で寝ている。我が家のベッドがお気に入りのようだ。

 肉を安く売っているからって、全部俺達、いや、ファルタリア達任せって良くないぞ。

 無いならシャルテンの町に買いに行けばいいのに。

 そう思ったけど、特にやる事はないし、暇しているよりはマシだから了承した。


 ファルタリアは肉担当。満載した台の前で売っている。

 様になっているし、商に合っているし、元々商売好きなのかな。


「お肉は沢山ありますからねー、順番ですよー」


 サリアは野菜担当。肉の横の台には野菜がテンコ盛りだ。

 無表情だけど野菜はどっさり、やる事はしっかりしているね。


「野菜も十分あるがやー、ちゃんと並ぶがや」


 ルージュは果物担当。更に隣の台には、熟した果物が鈴なりだ。

 沢山の注文に、きびきびして要領よく動いている、さすがだな。


「果物はこっちですよー、押さないで下さいねー」


 あれよあれよと言う間に売りさばき、住民達も、ホクホク、と持って帰った。

 しかし、俺達が出かけている合間に家も増え、街並みもしっかり形成され、住民の数も増えて、見方によっては完全な村にまで発展している。

 もう建てられる場所も無いんじゃないのか? これ以上大きくして収集つくのか?

 そこまで俺は責任持てないぞ?

 まあ、代表とも確約しているし、面倒事を持ちこまなければいいのだけれど。


 数日後やはり代表が来て、用地を広げてほしい、と懇願された。

 広げる事は良いけれど、今まで確約した事を責任もって守れるのか?

 俺の思いも余所に、今では自治会も作り代表の下に数人の理事がいて切り盛りしている、との事。

 信じないわけでは無いけれど、念には念を入れ、汚職や揉め事が起きても治まらず、事態が収拾しなかったら魔物除けの魔法を解く、と強めに脅しに近い事を言ったけど、代表は自信満々だった。

 なら信じよう、頑張ってほしいものだ。

 けど、そんなにこの森に住みたいのかね。そんなに居心地がいいのか? 確かに肉や野菜は格段に安くしているけど――。

 シャルテンの町だって魔物も落ち着いたのか、ドラゴンがいなくなったと同時に現れなくなった。

 事のついでとばかりに代表が教えてくれた。

 更に、俺達がいない時、盗賊が通りすがり入口から覗き込んでいた。

 威嚇、威圧してくる盗賊達に、代表者が恐る恐る話を持ちかけ、俺達が領主だと告げたら露骨に嫌な顔をした。

 俺達を知っていたようで何も言わず立ち去った。

 その後も別の盗賊が二回来て、同じ話をしたら、同じように嫌な顔をして立ち去った。

 それ以来、来ない。正確に言えば見向きもしないで通り過ぎているのは見かけた。

 そこで、どう広げようか検討したところだったので、街道の反対側の森に造る事にした。


 整った道筋を決め、まずファルタリアに木々を切ってもらう。

 粗方の位置を決めれば、楽しそうに、豪快に、爽快にバトルアックスを振り回し、太い木々を草でも刈るかの如く切り倒していく。


「やーっ、たーっ、とーっ、ラサキさーん、楽しいですよぉ、これも鍛錬ですねぇ」


 純粋に楽しそうだ、いや、楽しんでいるね。

 そして倒した木をブン投げて一画に山積みにした。家づくりの材料になるからね。

 次にルージュに切り株を魔法で取り除いてもらい、端に山積みにして置く。

 これも棚材や椅子、テーブルなどになるし。


「ラサキさん、これでいいでしょうか」

「いいね、ありがとう、ルージュ」


 最後に、荒れ地をサリアに整地魔法を掛けてもらい終了。


「終わったがや、こんなものがや」

「十分だよ、サリア」


 だだっ広い平地と化した。これで街並み造りは綺麗に出来る事だろう。

 そんな様子を反対側から見物していた代表を始めとする住民達が驚愕している一方で、神でも崇めるようにお祈りしている人もいたよ。

 いやいやいや、祈られても困るし、あ、俺じゃなく三人か。

 働いていたのは三人だし、俺は指示していただけだしさ。

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