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第14話 手合せ3

「炎の化身よ、我が盟約に従い撃ち放て、ファイヤボール!」

「障壁がや」


 放たれた三つの小さなファイヤボールがサリアの前で消える。


「氷の化身よ、我が盟約に従い撃ち放て、アイスランス!」

「しょうへきがや」


 五本の小さなアイスランスが放たれ、サリアの前で溶け込むように消える。


「古の獄炎の覇者よ、盟約に従い我に力を、フレイム!」

「しょーへきがや」


 赤い炎がサリアを包み込む前に消える。


「雷帝よ盟約に従い撃ち放て、ライトニング!」

「……がや」


 放たれた稲妻が、サリアの前で吸い込まれるように消える。


「ハァハァ、やるわね、ならこれならどお? 地獄の黒炎よイーフリートの名の盟約に従い行使せよ、湧き上がれ、ヘルフレイム!」

「……ハァ」


 サリアが赤黒い獄炎に包まれた。

 俺達はあれくらいなら無効化で何ともないけれど、相手に感づかれてはいけないからルージュのシールド魔法を掛けてもらって観戦している。

 サリアを包んでいた赤黒い獄炎が消えれば、仁王立ちのまま黒こげになって煙が上がっているサリアがいた。


「やった、アハハ、私の勝ちよ」

「こんなものがや」


 言うや否や、黒こげになっているサリアの表面が崩れ落ち、何も無かったように全く無傷のサリアが仁王立ちしている。非常に冷たい目をして……。


「終わりかや?」

「へ? はい?」


 余程自信があった魔法攻撃だったのか、慌てふためくリリースマロン。


「ま、まだよ! これからよ! そ、それより防御ばかりで攻撃して来ないなんて、防御能力だけが特化しているのかしら?」


 サリアは睨んだまま片手を前に向ける。


「ファイヤランスがや」


 いつもながらの炎の槍が、比較にならない程の勢いで飛びリリースマロンを襲う。


「シールド! キャーッ!」


 当たれば爆風と共にファイヤランスとシールドは掻き消され、リリースマロンはその爆風で吹き飛ばされた。

 やはりサリアの魔法攻撃の全てを防ぎきれない。

 魔法防御力の格の違いか。

 リリースマロンは、半身をお越しサリアを見る。


「な、何で?」

「アイスランスがや」


 これもいつもながらの氷柱が放たれ轟音にも似た風切音と共に飛んで行く。

 詠唱しながら立ち上がったリリースマロン。


「シ、シールド! ンギャーッ!」


 氷柱が勢い良く魔法障壁に突き刺さり、またもや魔法攻撃の全てを防ぎきれずに、更に豪快に吹き飛ばされ転がるリリースマロン。

 サリアは魔法攻撃を止め、冷たい表情で様子を見ている。


「終わりかや? どうすかや?」

「ハァハァ、ま、まだこれからよ」


 リリースマロンは立ち上がり、あらゆる攻撃魔法を詠唱し、サリアに放ち続ける。

 サリアは余裕でそのすべてを真面に受け、時折アイスランスを放ってリリースマロンを吹き飛ばす。

 そして――。


「い、古の、ご、ごく……」


 我を忘れて魔法攻撃をつづけ、とうとう魔力の枯渇で意識を失い倒れ込むリリースマロン。


「弱い魔法がや。デスナイトも倒せないがや。あー、ワイバーンも無理がや」


 サリアはラーンベルガー一行に眼を向けるが、何の声も掛からない。


「なら止めを刺すかや?」


 慈悲も無い冷酷な表情で、片手を横たわっているリリースマロンに向ける。

 あ、死ぬな。

 気が付いたラーンベルガ―が慌てる。


「ま、待てっ! 勝者サリアだ! 勝者サリア―ッ!」

「フン……がや」


 慌ててリリースマロンに駆け寄るラーンベルガ―は、すぐに他の二人に回復させているようだ。

 振り返り、綺麗な白髪を揺らしながら歩いて帰って来たサリア。

 その表情はいつもの綺麗な笑顔に変わっている。

 サリアを怒らせたら危ない、いけない、と感じた事は黙っていよう。


「ラサキ、これでいいかや? ……ん」


 そっ、と両手を首に回してきて口づけしてくる。

 んー、まあ、後ろの二人も気にしていないようだし、これもご褒美だよ、ちゃっかり二度目だけどね。

 って言うか、ルージュを見れば、サリアの魔法を見て、自分の魔法の攻防を考えているのか座り込んで地面に何やら書いているし、ブツブツ、と独り言を言っているし。

 タユンの破壊的谷間が上から見えているし……。

 ファルタリアもしゃがみこんで、バトちゃんご苦労様、とか言いながらバトルアックスを手入れし始めているし。

 大きな尻尾が地面で転がるように振られているし。

 自分の事以外にも興味持とうよ、もっとさ。でも言わないでおくよ、もう好きにしなさい。

 リリースマロンは、バルバロッカとラベルラガーデが回復させていたので少し時間を待った。


 最後は勇者ラーンベルガーと俺が前に進み対峙する。

 ラーンベルガ―を見れば――大丈夫か? 汗掻いているぞ? すぐに負けてあげた方がいいのかな。

 でも余計な事すると後がなぁ。

 ――よし、手合せだし、しっかり上手くやろうか。


「改めて自己紹介だ。俺は剣士、セイバー。ラーンベルガー」

「俺はラサキ。剣士です。魔法はありません」

「強いねラサキの仲間は。ここまで強いとは思わなかったよ」

「みんな辛勝ですよ。次にやったら勝てないと思いますよ」

「よく言うよ。でも、ここまでされたら俺も掛け値なしの本気を出させてもらうよ」

「お手柔らかにお願いします」


 剣を構えると、ラーンベルガ―が俺の剣を見る。


「それでいいのか? 刃こぼれが酷いけど」


 やはり言われるよな。でも、手入れも面倒だったからさ。

 一応あの覇王の置いて行った剣を使わせてもらおうとも思ったけど、まだ俺の物に決まった訳じゃないから止めておいた。

ラーンベルガーには嘘でもついておこう。


「昔からこれなんで気にしないで下さい」

「そうか、なら始めよう」


 ラーンベルガ―も両手で剣を持ち中段で構えている。

 しかし向こうからはまだ仕掛けてこない。

 じりじり、と時間が立つのも面倒だな、俺が行こう。

 腰を低くして地面を蹴り、穴が開くほどの力で突進し、ラーンベルガ―に下からの一撃を放てば剣で受けた。

 ただごく普通に受けられただけ。

 刹那、俺は自身の打ち込んだ力と同じ力で、逆に吹き飛んで地面に着地する。

 ――何だ?


「ラサキ、俺の剣には勝てないよ」


 確認する為、もう一度突進し、フェイントを掛けて袈裟懸けに力強く振りかぶれば、ラーンベルガ―の動体視力も良く、真面に剣で受ける。

 刹那、またもや俺が吹き飛ばされ着地する。体への衝撃もあるみたいだけど、無効化しているのだろう。


「その剣の力。ですか」

「その通り、俺の魔剣は受けた衝撃をそのまま同じ力に載せて跳ね返せるのさ」


 フーン、面白い剣だな、魔剣か。ならこれはどうだろう。

 構えているラーンベルガ―の正面に向かって一足飛びに近寄り、常人では無い速さで連撃すれば、弾かれず、ラーンベルガ―も受けきっている。

 へぇ、これを受け続けられるのは、三人の他で初めてだよ、さすが勇者と言われるだけの事はあるね。

 あれ? 何で俺が上から眼線なんだ? 何で上から目線で分析なんかしているんだ? いけない、いけない、もっと冷静になろう。

 これもサリアに聞いてしまったからなのかもしれない。

 ――でも少し楽しいかな。

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