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第14話 変なのが来た

 ファルタリアの打ち込みの隙をついて、今度は俺が撃ちこんでみる。

 一撃目は受けきったファルタリアだったが、二撃目は後方に吹き飛んでいった。派手に転がるファルタリア。鼻血は出ていないようだね。


「ものすごく強い打ち込みですね。ハァハァ、手が痺れています。ハァハァ」

「大丈夫か?」

「ハァハァ、はい。私、ハァハァ、弱くなりました?」


 いつの間にか外の椅子に座っているコーマが割って入る。


「ファルタリアも強くなっているわ。以前の比じゃないわよ。でも、ラサキを最強にしたからそう感じるだけ、安心して」

「それであればいいのですけど……」


 自信が揺らいでいるようだけど、強いよ。


「ファルタリアは強くなっているよ、俺も確信している。以前の俺だったら完全に俺の負けだ。ただ、コーマの力が大きかったね。神だからさ、気にするな」

「そうですね、そうします。コーマさんの力は凄いですね」


 何気にドヤ顔のコーマ。嬉しそうだな。その後も数回手合せを繰り返し終了した。


 午後は塩漬け用の獣を狩りに行き、獲っては血抜きをして家に運び、塩をまぶして保存、と繰り返し作業をした。

 夕方には十分な量が蓄えられ、これで暫くは塩漬け用はいらないだろう。

 その夜、肉野菜の煮込み料理を作って出した。

 コーマもファルタリアも、美味しい美味しいと言ってくれた。作った俺も、いつもながら嬉しいよ。

 でも、ファルタリアは、少しずつ料理を覚えると言っていたけど、食べるばかりで全くその気無しだな。

 一言、言っておこうと思ったけど、ネリセルの事を任せているから勘弁しておくよ。


 数日後、ファルタリアを見送って何時ものように店を開く。すぐにコーマが、シャルテンの町と反対の街道を見る。


「ラサキ、変なのが来る。三〇人くらい」


 俺もその方向を見れば、土煙が見えた。馬に乗って武装している集団。


「多分、盗賊だな」

「じゃ、頑張ってね……ん」


 俺の首に手を回し、口づけをして消えて行くコーマ。

 見るからに、盗賊の見本みたいな集団が露店の前に止まる。

 先頭の数人が、剣を抜き馬から降りてくる。


「おい、この肉を全部貰うぞ」

「金貨一〇〇枚だ」

「付けとけ」

「じゃ、売らない」

「殺されてえか? ん?」


 剣を突きだす盗賊。さらに数人が馬から降りて肉に手を出そうとする。

 俺は、瞬きする暇も無く一瞬で剣を抜き、剣を突きだす盗賊と、肉に手を出そうとする盗賊の腕を切断した。

 血を流し悲鳴を上げる盗賊。さらに、剣を抜こうとする盗賊も、瞬時に対応し構える間もなく次々に切り裂いて行く。

 その一瞬で一〇人程が地べたに転がる。手を切断した二人以外は動かない。殺すつもりで切ったから、死んでいるだろう。

 俺は馬に乗っている盗賊を睨む。


「動くなよ、まだやるか? 盗賊。全員始末してもいいんだよ。どうする?」


 俺の指示を無視し、馬を走らせ逃げようとした盗賊に、瞬時に回り込み、飛びかかるように切り伏せ、盗賊の首が飛ぶ。

 馬は、首が無くなって血しぶきを上げ、手綱を握っている死体を乗せたまま走って行った。跳躍力も格段に上がっているよ、人間業じゃないな、俺は人間止めたのか? 

 その光景に、恐ろしくなり動かなくなる盗賊達。そうだろうね、俺も自分が怖くなってきたよ。


「だから動くなと言ったんだ。で、どうする?」


 後ろにいた厳つい親玉が、やっと出てきた。


「いや、悪かった。勘弁してくれ、引き上げる」

「いいだろう。その代り、今持っている金品全部置いて行け。隠し持っていたり、嫌ならこの場で全員抹殺するよ」


 剣を突きだし、ゆっくりと盗賊達に向ける。

 不服そうな顔をしていたけど、馬を下り、全員が出した。


「剣は勘弁してくれ、魔物に襲われたらどうしようもない」

「ああよし、許してやる。その前に、死体の金品も取り出しておけ。二度とするなよ。それと、死体は全部連れて行けよ」


 盗賊達は、空いている馬に死体を乗せて立ち去って行った。

 後ろから抱きついて来るコーマ。


「これじゃ、ラサキが盗賊ね。ウフフ」

「コーマが強くしてくれたお陰だよ、助かった」


 置いて行った金品を見てみる。金貨二〇〇数十枚と、身に着けていた装飾の飾りが多数。


「結構持っていたね、これはありがたく使わせてもらおう」


 高そうな腕輪を手に取るコーマ。


「ラサキ、これ貰っていい?」

「いいよ、好きな物身につけなよ」

「ん、これだけでいい。ありがと」

「もともと俺の物じゃないよ、お礼なんていらないさ。あとでファルタリアにもあげよう」


 その後、地面に残った血の海を掃除した。お客が来たら驚くからね。

 夜、帰って来たファルタリアに経緯を話し、装飾品を見せた。


「頂いていいのですか?」

「好きなだけ取っていいよ。余った残りはギルドで換金するから」

「では失礼して」


 綺麗な首輪と腕輪を選んで、嬉しそうに眺めて身に着けた。


「うん、似合っているよ。綺麗だ」

「本当ですか? 嬉しいです、エヘヘ」


 抱きついて来るファルタリア。好きにさせておこう。ん? コーマの顔が笑っていない。暗いぞ、どうかしたか?


「ラサキ……私には言ってない。ファルタリアだけ……」


 あ、そうか、不味いな。

 ファルタリアに抱きつかれながら、言い訳がましくコーマに話す。


「い、いや、コーマも勿論似合っているよ。も、元々コーマは可愛いからさ」


 コーマがふて腐れている事に気が付いたファルタリアが離れる。でも、先に褒めてもらって緩んだ笑顔のファルタリア。可愛いけど、少し馬鹿面だぞ。

 コーマが近寄ってくる。


「じゃ、ラサキが口づけして」

「ああ、いいよ」


 コーマをそっと抱きしめ、優しい口づけをする。そう言えば、俺からするのは初めてだな。

 指を銜えて見ているファルタリア。


「いいなぁぁぁ、私もして欲しいなぁぁぁ。私の見てる前で、ズルいです」


 口づけを終え、離れる満足したコーマ。


「私なら構わないわよ、遅かれ早かれするんでしょ」

「いいのですか? いやっほぉーっ!」


 飛び跳ねて喜ぶファルタリア。


「おいおい、俺の意見は?」


 俺の話も聞かず、近づき顔を寄せてくる赤ら顔のファルタリア。


「よろしくお願いします……ん」


 はい、降参です、しました。

 まあ、可愛いし、ファルタリアも俺の好みだし、好きなのかな。気が済んだファルタリアが、恍惚の表情で離れる。可愛いな、うん。

 コーマは、気にする事無くテーブルで果物食べているし。


「私、初めての口づけです。嬉しいです、エヘヘ。やったー!」


 嬉しさのあまり、床で転がり回るファルタリア。ハァ? 何しているんだよ、お前やっぱり馬鹿なのか?


「ファルタリア、服が汚れるから止めろ」

「すみません、嬉しくて興奮してしまいました」

「まだベッドはダメよ、ファルタリア」

「ううぅ、頑張ります」

「ラサキ、お腹すいた」

「あ、ああ。今作るよ」


 俺は忙しなく夕食を作った。色々あった一日だな。

 夕食後、ファルタリアの尻尾をモフッた。

 そして就寝前、部屋に入る時にコーマが言ってくる。


「ラサキ、今夜は外に出ない事。ファルタリアもよ」

「どうした、コーマ」

「出ませんよ。私、寝たら朝まで起きませんから」


 コーマが窓の外を見る。


「今夜は、家の周囲に魔物が徘徊するからよ」

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