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第 3話 帝国2

 タレーヌの丘を歩きだし、先方に見えるアルドレン帝国に向かう。

 辺りは草花が生え始めていたけれど、所々にはドラゴンの吐いたブレスの後らしき範囲が見受けられた。

 このどこかでフェーニとミケリも消滅してしまったのだろう。

 二人の冥福を祈るため、立ち止まり丘に向かって手を胸に当て黙とうした。

 隣にいた三人も、俺に合わせて同じように黙とうした。

 昔を思い出したのかしばらく沈黙が続いたけど、徐々に気を取り直し会話も戻って来た。


 少し歩けば遠巻きに、窪地から這い出て闊歩している黒褐色の鱗を持つドラゴンが見えた。


「ラサキさん、あれがドラゴンですか。確かに強そうですね」

「強いがや、誰も敵わないがや」

「へぇ、あれがアースドラゴンか、確かに強そうだな」

「他の二体は寝ているのか見当たりませんね。ボク、ちょっと見たかったかも」


 距離もあったので、アースドラゴンは俺達を見たけど、興味も無いような素振りで反対方向に闊歩していた。

 丘の中間地点で、ある物、に眼が止まる。ドラゴンの気がこちらに向いていないのを確認し、距離も十分あったので立ち止まる。

 察知しすぐに気が付くファルタリア達。


「で、ラサキさんのちんこがですね……あれ? ラサキさん、どうしましたか?」

「何か見つけたかや?」

「何をするのですか?」

「ああ、ちょっと待ってて」


 ドラゴンを気にしつつ、ある物が落ちている場所まで足に力を籠め、一足飛びで陥没した手前まで行き、すぐに気になった物を拾い踵を返し一足飛びで戻った。

 その間、三秒程。

 さすがアースドラゴンは俺を察知して振り返ったけど、殺気も無いので構える素振りも無く向き直った。フゥ、凄いな、侮れないな。


「お待たせ」

「ラサキさん、お待たせって、数秒ですよ、待っていませんよ。でも何ですか? その黒く平べったい物は」

「あ! 分かったがや、鱗がや」

「ド、ドラゴンの鱗ですか? ボク、初めて見ます」

「俺も初めてだよ。多分そうじゃないかと、気になったから拾ってきた。後で試したい事もあるしね」


 アースドラゴンの鱗だろうか、黒褐色でかなり固く感じる、けど反して非常に軽かった。

 その鱗を小脇に抱え、そしてアルドレン帝国に向かって歩き出す。

 ファルタリアは思い出したように話の続きを二人に話し出す。


「で、さっきのラサキさんのちんこですけど――」

「そうがやそうがや――あたいも」

「なるほどなるほど――ボクも」


 俺は聞いていない、聞こうとしない、聞く耳持たない。

 ファルタリアとサリアは、昔からこうだから仕方がないと思っていたけど、ルージュもそんな仲間に入るなよ。

 少し、ほんの少しだけ悲しくなった事は黙っておこう。


 夕方には検問所の前についた、けど城門は当たり前だけど閉ざされている。

 扉を叩いても何の反応も無いので、同じように高い塀を飛び越えて検問所に行った。

 一応入国した事くらいは伝えてい置かないとさ。

 不法侵入と言われたりしたら気分も良くないし、犯罪者扱いされるとも限らないからね。


「おお、ラサキ殿ではないか。え? い、一体どこから」

「ああ、ゴメン。塀を乗り越えて入った」

「え? あの高い塀を?」

「ああ、はい、プレート」

「い、いやいや、その必要は無いですよ、ど、どうぞお通り下さい。あ、いえ、もう入っていますから、そのままどうぞ」

「悪いね」


 片手を振りながら俺達一行は検問所を後にした。

 折角だから先に宿を確保しよう。で、お決まりの宿に行けば、お気に入りの部屋が空いていました。

 広いし豪華だし高そうだから誰も泊まらないのかもね。

 部屋に通されれば装備を外し、支度が出来たら俺を筆頭に順に宿の外に出て待つ。

 すぐに出てきたファルタリアも、懐かしむように見回しながら、毛並みの良い尻尾を嬉しそうに揺らしている。


「お腹がすきましたぁ。早く行きましょう」


 サリアもルージュも同意見だ。そしてコーマが現れ腕を組んでくる。


「ウフフ、楽しみね」

「よし、行こうか」


 サリアは透き通った綺麗な長い白髪を揺らしながら歩く。


「久しぶりがや。死ぬ気で食べるがや。アハハー」

「あまり無理するなよ」


 軽装になったルージュも、見回しながら歩いているだけなのに破壊兵器がタユンと……いや、見ていない、決して。


「今回はボクも頑張ります。ハハ」

「そこまで決意しなくていいから」

「ウフフ」


 店に入れば久しぶりだけど、店長をはじめ店員たちも覚えていてくれたよ。嬉しいな、さすがいい店だ。

 そしていつもの部屋に通された。

 魔物の触手料理をテーブル一杯に頼み楽しい夕食が始まった。

 待っていました、とばかりにかぶり付くファルタリアを筆頭に、皆も、負けじ、と食べ始める。

 ――味わって食べなさいね。

 今回は酒も注文して飲んだ。触手の料理を堪能しつつ酒をあおる。いやーいいね、美味い、美味いな、最高だよ。

 酒のつまみにピッタリだ。侮っていたよ、フフフ触手め。

 嬉しそうに、美味しそうに、楽しそうに食べている四人を見る。


「折角来たのだから何日か滞在するか?」

「賛成です、そうしましょう。あむ」

「もぐもぐ、あたいも賛成がや」

「ボクもいいと思います。あむ」

「ラサキに任せるわ、ウフフ。あむ」


 談笑しながら食べ、楽しいひと時を過ごした。

 食べ終わり一息ついて、店の勘定をしたら今回も無料だったので、話を聞いたら功績を踏まえ半永久的に待遇される、との事。

 さすがアルドレン帝国、太っ腹だよ。ここは、ありがたくご馳走になっておこう。

 でもこれでまた、金が減らない。宿でも、無料だ、と言っていたし――。

 少し罪悪感があったけど、ありがたく受け入れるしかないな。

 持って来た百数十枚の金貨は、また無駄になりそうだ。滞在中に消費できたらいいな。

 店からの帰り道、ファルタリアが耳を、ピコピコ、させて満足そうに大きくなったお腹をさする。


「フゥ、食べましたねぇ。少し食べ過ぎたようです。エヘヘ」


 量ではファルタリアに負けたものの、それでもたくさん食べ、お腹が、ポコン、と出ているサリア。


「ゲフッ、少し無理したがや、もう食べられないがや。フゥ」


 ルージュも食べ過ぎたようだけど、タユンが勝っているので、大きくなっているお腹はあまり目立たない。


「久しぶりに食べ過ぎました。でも美味しかったー。ハハ」


 美しい銀髪を揺らしながら腕を組んで歩く笑顔のコーマ。さすが神、変わらないスタイルを保ち至って普通だ。


「ウフフ、美味しかった」


 宿に帰れば楽しみな風呂だ。あの豪勢な、獅子の口からお湯が出る広い風呂。

 仲良く入れば、サッ、と体を洗って、サリアが真っ先に入り漂い、ルージュは少し離れ温まる。

 俺の左にファルタリア、右にコーマが定位置に座り温まる。

 ――そしてサリアを筆頭に。


「フーン、フフーン、ちーんこ、ちんこ、ラーサキさんのちんこ」

「ちーんこ、ちんこ」

「ちんこ、フーン」

「ラーサキさんのちんこはでっかいちんこ」

「ラーサキさんのちんこは」

「でっかいちんこ」


 三人で輪唱すると、俺のちんこの大安売りに聞こえるし――もう気にしないよ、好きなだけ輪唱してくれ。


「ウフフ、ラサキ、楽しいね」

「俺だけ疲れるよ」


 輪唱後、俺はファルタリアの大きくなった尻尾を、存分にモフッた事は言うまでも無い。

 そして就寝した。

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