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第13話 商売を始めた

出だしの一部、三人称になります

 シャルテンの町に着いたファルタリア。ラサキに言われてギルドと検問所の掲示板に、露店の張り紙を出した。

 その足で剣術の施設に向かう。広場では、子供達と指導をしている人の賑やかな声が聞こえてくる。


「わあ、やってるやってる。みんな元気だな」


 ファルタリアもこの施設の出なので、自由に出入りが出来る。その一角に、指導を受けている子供達を、覗ける場所がある事も知っているのだろう。


「そろそろ終わりかな」


 ネリセルを探すファルタリア。施設の指導も終了したようだ。


「あ、いたいた。こんにちは、ネリセル」


 声を聞いたネリセルが振り返る。


「こんにちは、ファルタリアさん。昨日はありがとうございました。今日はどうしましたか?」


 ネリセルの前に立つファルタリア。


「いいえ。実は昨日の話を聞いて、ネリセルに剣術を教えてあげようと思って来たの」

「え? 私にですか?」

「そうよ。これは強制ではなくネリセルが望めばだけどね。どうする?」

「や、やります。是非お願いします。でも……お金はありません。それに」

「入らないわ。私が教えるだけだからね。それと、何故? とか、どうして私に、などと疑問は持たない事が条件よ」

「――分かりました、ありがとうございます。よろしくお願いします」


 剣術の広場を使って鍛錬が始まった。

 数回立ち合いをしてみるが、ファルタリアにも分かる程ネリセルはまだ力不足のようだ。


「ネリセルは剣に振り回されているのよ。まずは筋力を上げようね。毎日走り込む事。それと、ネリセルの剣より重い私の剣を貸すから、これで素振りを毎朝夕に一〇〇回以上する事。厳しいと思うけど、これくらいやらないと強くなれないのよ」

「はい、やります。絶対に強くなります」


 施設の剣術の他に、ファルタリアとネリセルの、鍛錬と筋力強化訓練の毎日が始まった。


◇一人称に戻ります


 街道沿いの俺の露店では、台の上に大きい葉を敷き、猪や鹿の生肉、塩漬けの肉、野菜、果物が並べられている。


「よし、これでいいだろう、後は客を待つだけだ」


 後ろから抱きついて、背中に頬擦りして来るコーマ。


「楽しそうね、ラサキ」

「そう見えるか? じゃ、楽しいんだろうな。でもコーマ、こんな俺に付き合っていいのか? つまらなくないか?」

「楽しいわよ。本来こんな事出来ないし、ラサキと一緒なら何事も新鮮で楽しいわ」

「ならいいんだけど」


 さっそく馬車に乗った客が来た。通りがかりの護衛をつけた商人だ。


「ふむ、生肉か珍しいな」

「生肉は今朝獲れた新鮮な肉だよ」

「猪と鹿か。一塊ずついただこう」

「金貨二枚」

「うむ、手ごろだな。帰りにまた寄るとしよう」


 護衛の冒険者達も塩漬けの肉を買って行った。今度は、シャルテンの町から来た一〇歳程の子供が数人で買いに来た。魔物が出るからグループで来たのだろう。家の手伝いか、偉いな。


「生肉を一塊ください。あと野菜も」「「「「僕も」」」」

「銀貨二枚だよ」


 品物の金額は、どれも時価だ。金持ちそうな奴や冒険者、商人には高く取り。子供やそれなりの身なりなら安くした。

 だから、安くしている人には、他の人が購入している時は近づくな、高くなっても知らないぞ、と言ってある。

 シャルテンの町から離れているのにも関わらず、獣の新鮮な肉は、貴重なようで徐々に売れ始めた。

 早朝に、コーマと俺とファルタリアで獣を狩り、解体して小屋に持って行く。そこでシャルテンの町に行くファルタリアを見送り、店を開く。

 露店もファルタリアの鍛錬も順調に進み一ヶ月。ファルタリアの狩りの精度も上がり、獣の獲れる量も増え繁盛している。

 森の中は魔物除けをしているので、獣にとっても住みやすい環境になっているのか毎日獲れた。

 ネリセルの鍛錬も、言われた事を続け施設の上位に入るほど健闘している。

 施設の休みに合わせて定休日も設けた。その日はコーマの好きな皿食屋に行く。

 勿論ファルタリアも一緒にシャルテンの町に行って皿食を食べ。商店を見て回り、ギルドにも顔を出して依頼を見て回った。

 自由気ままで楽しい生活が続き、さらに数か月が経った。


 定休日、朝食を食べ終える時に、テーブル越しにファルタリアが話しかけて来た。


「ラサキさん、久しぶりにお手合わせしませんか? 最近、ネリセルに教えてばかりなので。いえ、不満は無いですよ、ネリセルに教える事はそれなりに楽しいです」

「そうだね、たまにはファルタリアに付き合うか。もう、勝てないだろうな。俺がファルタリアに胸を借りるようだよ」


 胸を押さえ、急に赤くなるファルタリア。


「え? ええぇ? わ、私はいつでもいいですよ。ラサキさんがお望みなら、いつ揉んでいただいても」

「違う、胸は揉まない。相変わらず天然だな。ファルタリアに挑むって事だよ」

「なんだ、そうなんですか。期待してしまいました」


 下を向き項垂れるファルタリアを横目に、果物を食べているコーマが話に入ってくる。


「ラサキは強くなったわよ。今では多分、世界最強かな」

「ハァ? なんて言った? 最強? いつ俺が強くなったんだ? 最近は鍛錬もしていないよ」

「私が強くしたの。急に強くするとラサキの体に負担が掛かるから、毎日少しずつ力を与えていたの」

「毎日? もしかして、密着して寝ていたのはその為か?」

「少し違う、ラサキに密着するのは大好きよ。だけど、せっかくだからそのついでに力を与えた。が正解かな」

「何でまたそんな理不尽に強くしたのかな。勇者でもないのに」

「万が一でも、ラサキが居なくなったら嫌だもん。まだ、つがいにもなっていないのに。約束でしょ、ラサキ」

「あ、ああ、そう言う約束だね。勿論守るよ」


 ファルタリアも、両手を胸辺りで握り目が輝いている。


「いいですねぇ、コーマさん。ラサキさんへの愛が感じられます。早く私もその中に入りたいです」


 ……疲れるから気にするのはよそう。

 外に出て、俺は剣を、ファルタリアはバトルアックスを構える。


「ラサキさん、行きまーす」


 言ったと同時に、素早い動きで踏み込み、バトルアックスで振りかぶってくる。一撃二撃と速い打ち込み。重量級なのに、相変わらず軽々と撃ちこんでくる

 。ネリセルとの鍛錬でファルタリアも上達しているようだね。ファルタリアに勝てる奴も少ないだろう。

 だがしかし、剣を交えて感じたが、俺の体が軽い。しかも、ファルタリアの一撃にも弾き飛ばされない。

 さらに、ファルタリアの攻撃が速い事は確認したけど、俺の感覚では以前より遅く感じられてくる。

 これなら剣で受けず、ギリギリで避ける事も余裕だな。

 ここまでの強さなんて、俺にはいらないと思うけど、コーマに感謝しておこう。

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