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第29話 資金

「俺とコーマは、持ち歩くだけで十二分に持っているし、金貨を入れてある棚にも使い切れない程あるからいらないよ」


 ファルタリアはお金に無頓着なんだから、使いすぎてもいいように、遠慮しないで貰っておけばいいのに。


「私は一度、無一文になりました。けど、それ以来いつもラサキさんに出していただいたので、今では貯まる一方です。私の棚も、金貨と白金貨がぎっしりです」

「武器を買い替えたらどうだ? 以前バルディッシュを気に入っていただろ。問題なく買えるし、買って来ればいいよ」

「ええぇ? 嫌です。今はバドちゃん一筋なので」

「そこなのか? わかったよ、好きにしなさい」


 樹海を出て、お金を使う事自体が初めてだったサリア。


「あたいも、減らないがや。持って来た箱にも入りきらないがや。重くなるからいらないがや」


 ルージュも申し訳なさそうだ。


「ボクは昔、貧乏でお金は大事に、大切に、大切にしないといけない、とずっと思っていました。でも、ボクの言い訳を聞いてください」


ずっと無一文だった。使った事も無かったけど、ギナレスの町から生活が変わって来た。フェーニとミケリと一緒に討伐に出かけ、褒賞を貰って最低限のお金を持ち、残りは家族の生活を豊かにしたい、と渡していた。

それだけで十分豊かになって、両親から感謝された。

その後の討伐も順調で、そして有名になった。褒賞も格段に多くなり、両親にも多く渡したがいつの日か、もういらない、と拒否された。

いつの間にか、家族が普通に一生生活できるほど貯まっていたから。それでも無理に渡し続けた。その意味は、いつかはギナレスの町を出立する予定があるから。

両親は、好きに生きるように、ラサキさんと仲良く、幸せなら戻ってこなくていい。と言われたので最後に貯めていたお金を両親に手渡し、出立した。

手元には少ししか残らなかったけど、生きるには十分だし、フェーニとミケリがいるから心配なかった。

そしてレムルの森に到着し再会。心なしか不安だったお金も貯まり始める。使おうと思っても、いつも出して貰っているので全く減らない。でも貧乏性は治らないので、勿体ないと節約し、魔石やドロップは持てるだけ持って帰った。

気が付けば、お金が有り余っていた。勿体ないと思ったけど、いけないと思ったけど、怒られると思ったけど、もうこれ以上いらない、と感じている。

自分用の棚も、飾り物など一切無く、金貨が溢れている状態になっている。


「すみません。こう言ってはいけないのですけど、少し苦痛になってきているので、勘弁して頂けたら嬉しいです」


 三人は、いらない、と言う。

 だから持ってくるなよ。こうなるんだったら拒否して来いよ、全く。


「お金は大切にしないとな。捨てる、何て事をしたら愚の骨頂だし、罰当たりだ」


 ファルタリアの眼が輝き、笑顔になる。


「ではラサキさんが収めてください。この家で私達に作っていただける料理の資金にしてください」

「いらない」

「ええぇ? そんなぁ」

「嘘だよ。まあ今回は、ありがたく頂いておくよ」

「ラサキさん、私の事、苛めています? やっぱり私の事、好き好きですね。デレていいのでえすよ、みんなの前でもデレていいのですよ。エヘヘ」

「じゃ、報酬を移動させよう」

「ええぇ? ラサキさん、私の話を聞いてくださいよぉ」


 ファルタリアの懇願する言葉に聞く耳持たない。

 けど、これで三人とも納得してくれた。テーブルに載せられた報酬は持ち運び、貯まりに貯まっている金貨、銀貨、白金貨がある棚に、何とか収められて終了。


「さて、夕食を作るか」

「ボクもお手伝いします」

「ああ、ありがとう」

「ボクは、ラサキさんの横に居られて幸せです」

「あまり無理はするなよ、ルージュ」

「はい」


 ファルタリアは、バトルアックスの手入れを始め、サリアは一人静かに、部屋に入って行った。

 こういう時はいつも、ワシワシしている、とファルタリアが教えてくれた。別に聞きたくはなかったけど――そうか、頑張れよ。

 そしてコーマは椅子に座り、外を眺めながらお茶を飲んでいた。

 出来た夕食を囲んで楽しく食べ、風呂に入る。――いつものように仲良く。

 そうそう、風呂に入る前に、仁王立ちで腕を腰に当てるサリアに言われた。


「今日は、あたいがや。あ、た、い、がや」

「あ、ああ、了解」


 その夜は、サリアをキッチリと可愛がりました。


 翌日の朝食時。

 ファルタリアが思い立ったように、有り余っている資金を、どこかの施設に寄付しようと言い出したけど却下した。

 施設は町から援助を受けているのだし、余計な事をしてはいけない。

 そんな事したら、他の町や村の施設にもしないと不公平だし、今俺達が持っている資金では、全然足りないくらいだ。

 更にどこぞやの団体に寄付なんてしたら、すぐに噂が広まって、他の団体やら何やらから申し入れが殺到するよ。

 ――断るだけでも面倒だ。

 資金が有り余る、なんて罰が当たるな。これからは、レムルの森をどうしたら、いい森に出来るのか。その為の資金としよう。

 なら、金庫と称して、お金の倉庫をもう一部屋造ろうか。

 で、時間もあるのですぐに取り掛かり、三畳ほどの倉庫が出来上がった。

 皆手伝ってくれたから、早かったな。

 両側には貨幣を並べやすく、沢山入るように縦横に仕切りをした。

 さっそく入れて見たら、縦一列に四〇センチ程に積むように並べ、横五〇列程に納まった。


「よし、いい感じで整頓されたな。ん?」


 振りかえると三人が、袋詰めした金貨を持ちこんで来た。え? 三人とも入れるのか?

 で、ワイワイ、ワーワー、チャリンチャリン、キャーキャーと賑やかに楽しそうに並べていたよ。


 並べ終わったファルタリアは、額の汗を腕で拭う。


「フゥ、これで私の棚も綺麗になりました」

「あたいもがや。奥が見えるようになったがや」

「ボクの棚もスッキリしました」


 金庫は、これだけでほぼ埋まってしまった。こうなるならもっと大きくすればよかったな。

 この資金はいつでも勝手に持ち出していいよ、と言ったけど、手持ちの袋に十分入っているのでいらない、と言ってきた。

 結局四人で分けてあった資金は、一つにまとまって終了。


「まあ、武器や防具を購入したり、必要な時はいつでもどうぞ」


 開放的な金庫が出来たので、念のために、サリアに不可視化の魔法を掛けてもらった。

 俺たち以外には、壁に見えて触っても壁があるという。

 ――便利な魔法だ。


 これで、資金管理、と言う金の放置も上手く何とかなった。


 そして数週間がたった。

 集落もほぼ完成し、安定した生活を始めているようだ。

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