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第27話 憶測

 昨日はファルタリアの番だったけど、ルージュの初めてを譲った。なら今晩はサリアか? 

 でも今日の出来事があった直後に、あり、なのか? ――あ、ありのようだね。

 画策していた三人だったから、順番をスライドさせたようでファルタリアだった。

 ファルタリアは、急に緩くなった笑みを浮かべる。

 おいおい、今朝がた大変な事態だったのに不謹慎じゃないのか? あ、それとこれとは関係ないのね。


「私はお先に入りましたから、お待ちしていますね。エヘヘ」

「ああ、風呂ね。行ってくる」


 そして一人風呂で癒される。

 天井を眺めていたら、またフェーニとミケリの事を思い出した。二人の成長を脳裏に浮かべ、また一筋の涙がこぼれた。


「フェーニ、ミケリ、頑張ったね……ゆっくりおやすみ」


 その夜は、自我を忘れるが如くファルタリアを可愛がった。一心不乱に可愛がった。壊れるんじゃないかと思うほど可愛がった。

――頑丈だから大丈夫だろう。


 翌日早朝のファルタリアは、身動きできない、と満足そうにそのまま、スヤスヤ、寝ていた。やはり頑丈だったな。

 俺は三人のいる寝室に戻り、もう一寝入りする。

 日も昇り、気持ちの良い朝。いつもと変わらない朝を迎え、眼を覚ませば、知っていたようにコーマの口づけ、察知したルージュの口づけ、よじ登ってくるサリアの口づけを頂きました。


「さて、朝食を作ろう」


 また一日が始まる。


 いつもと変わらない日々を送る。心なしか落ち込む時もあったけれど、俺も含め全員が、元気を取り戻すのも早かった。

 数日が経った頃、見えるのか確かめるべく、レムルの森の展望台からタレーヌの丘を眺めたけど、黒い空間も無く、土煙も無く、変わったところは何一つ見つからなかった。

 その夜、鹿のステーキ、タレ焼きを作り、食事をしながら今後の事など談笑し、頃合いを見て疑問を話す。


「そう言えば、タレーヌの丘にいるドラゴンはどこから来たのかな」


 ファルタリアは、肉を差したフォークを持ったままで話す。


「私は知らないです。ドラゴンの名前くらいは知っていても、現実に見た事はありません」


 ルージュはナイフで肉を切る手を止める。


「ボクも知りません。伝説の魔物程度の知識しかありません」


 コーマは耳を傾けるだけで、切り分けた肉料理を、美味しそうにパクついている。

 サリアは、口に入っていた肉を飲み込んだ。


「多分がや……何者かが使役、若しくはあの丘に何か細工をしているがや」


 サリア曰く、ドラゴンが三体一緒で行動する事は通常ではありえない。

 本来であれば、徒党を組む事を嫌い、孤独を愛し、単体で生活している。

 そして眠る事、誰にも邪魔されず長く眠る事が唯一の楽しみ。

 北の最果てにある、常に雪に閉ざされた極寒の山に住むフロストドラゴン。

 南の最果てにある、火山地帯の最も高熱の山に住むフレイムドラゴン。

 自由気ままに、高高度の空を飛び肉眼では見えない高さを流浪するアースドラゴン。

 ありえないことが現実に起こっている。その三体が本気を出せば、世界が亡ぶ。

 だけどそれはしない、した事も無い。世界が亡んだら、自分の首を絞める事につながるから。


「あの邪王が使役しているのか?」

「多分それはないがや」


 サリア曰く、多数のデスナイトを使役した邪王は、消耗した魔力の回復と平行に、魔石に魔力を溜めこむ期間が、数年から十数年は必要。

 もし仮に、回復が異常に早かったとして考えても、無理に近いが一体が限度だろう。


「邪王の力はそれくらいがや。これはあたいの見立てがや」


 邪王の前回の魔力量では、一体使役できるかどうか。三体ともなれば、その十倍は必要だろう。

 別の何かの力、膨大な魔力を持つ者がいる。

 サリアは肉を口に放り込む。


「じゃ、ドラゴンは今、何をしているのか?」

「ゴクン。今となって冷静になったがや。レニが言ったがや、闊歩している。と」


 サリアが、ナイフを小さく振りながら、あくまでも憶測、推測、として付け加える。

 ドラゴンは、最も得意な攻撃の中で、広範囲に出鱈目なブレスを吐く。攻撃を向けられれば身を守るために躊躇なく。

 今回は多分、現れたドラゴンに兵士たちが立ち向かった事で、防衛反応が起き、手を出さなければ良かったものを攻撃して、返り討ちに合った。

 全く手が付けられず、後退し逃げだせば、後は追わず、危害を加える事も無くなった。

 だから目標も無く歩き回っているだけになったのではないか。

 サリアは昔、樹海の妖精から教えてもらっていた限りでは、ドラゴンは先に攻撃するなんて聞いたことが無い。

 何らかの力で三体を出現させて、何らかの力で飛べないようにしているのが精一杯なのではないか。

 そもそも、一体で世界を滅ぼすドラゴンが三体同時に出現させた事態が出鱈目だ。

 ドラゴンよりも強い者など聞いたことが無い。使役されているようなのに、自由に闊歩している事態もおかしい。


「あたいも実際には見た事もないがや。全て妖精の知識がや」


 ま、危害を加えなければ攻撃して来ないなら、放置させとけばいいだろ。余計な事して、レムルの森に来られても困るからさ。


 翌日、シャルテンの町に行ってギルドのレニに、その後の状況を聞いた。


「はい。あれ以来。ヴェルデル王国とアルドレン帝国は城門を閉めたままで、ドラゴンに対抗していません。それ以降、ドラゴンは攻撃を止めて、眠っているかタレーヌの丘を闊歩しているだけのようです」


 サリアの言っていた通りだった。ドラゴンも知性は高いのかもしれないな。ならそのままにしておけば、これ以上何も起こらず問題ないだろ。

 だがしかし、問題が起こる。問題はタレーヌの丘では無かった。

 ドラゴン出現の影響なのか、シャルテンの町の周辺に、魔物が多く現れるようになった。

 オーク、オーガを始め、ファイアドッグ、時にはミノタウロスも現れ、町の外に出て木の実や薬草を採っていた住民が襲われた。

 この事態は、ギルドに駐在している冒険者で対処し、何度かの討伐を行ったが、シャルテンの町の住民の不安が広がっていたらしい。


 数日後、我が家に数人の大人の男女が訪ねてきた。冒険者ではなく一般の井出たちだった。

 代表者らしき男は一歩前に出て、シャルテンの町から来たと言う。

 そして、レムルの森に移住したい、と願い出て来た。

 随分変わった人たちだな、と思ったけど、俺の領地だし、悪い人には見えないし、嫌ならすぐに出て行くだろう。

 特に拒否する理由も無いから承諾した。


 翌日から、職人風の人が押し寄せ、街道沿いから一歩入った場所に家を建て始めた。

 それがきっかけで十数軒の申し込みが出たので、乱立されては敵わないから、一軒目の家を基準に規則正しく数本の小道を作るように指示し、その範囲でなら、喧嘩など、揉め事を起こさない事を条件に、許可した。

 面倒事も含め、初めに来た代表の男に任せたら快く引き受けてくれた。

 しかし、数軒では無くここまで大きくなると、好奇心や一時的な理由では無く、何かある、と疑問も生じる。

 一度建築現場に行って、手の空いている人に話を聞いてみよう。

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