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第25話 伝達

 翌日は、初めてだった事もあったので、ルージュと朝まで寄り添いあって寝ていた。

 眼を覚まし、これからの事を考えようとしたら。背中から俺をホールドしてくるコーマ。


「ウフフ、おはよう、ラサキ」


 まあ、驚く事では無い。


「ああ、コーマ、おはよう」


 嬉しそうに背中に頭をグリグリさせるコーマ。


「良かったね。ウフフ」

「ありがたく受け入れるよ。コーマ、ありがとう」


 ルージュは、可愛がられて疲労困憊しているのか、可愛い寝息を立てたまま熟睡しているので、起こさないように静かに部屋を出る。

 一緒にコーマも部屋を出て、ファルタリア達の寝ている寝室に入った。

 起こさないようにベッドに入り、一寝入りすると三人から、おはよう、の口づけを受け立ち上がる。


「さて、昨晩はやられたけど、それとこれは別だから、君達大喰らいの料理を作って来るよ」


 そして出来上がり料理を並べたけど――朝食時に一悶着? があった。

 食べている時なのに、ファルタリアがルージュに、昨晩の事を食いつくように根掘り葉掘り聞いて来る。

 赤くなりながらも、嫁として自分の先輩なので事細かく答えるルージュ。

 ファルタリアも嬉しそうに、股間を押さえながら自分の時の事を思い出しながら話だし、サリアもちんこの大きさを手で表現しだし、頷くコーマ。

 ルージュは、そんな三人に感化され、そうです、ボクの時も、なんて言い出す始末。恥ずかしいから止めろよ。

 俺が赤面するだろ。

 今後は止めてほしい、と切に願います。

 こうして嫁が一人増えた。画策していた三人も歓迎しているから、これも良しとしておこう。ルージュ、よろしくな。

 え? ルージュの何処が好きかって? タユンではないよ、決して。

 見惚れる程の破壊兵器だけど、違う。可愛い所とか、優しい所とか、気が利く所とか、だよ。

 ダイナマイトでもないよ、絶対に。うん。


 そして、嫁になったルージュを交え数日が経った。

 手持ちの資金は、必要な事にしか使っていないので、大金では無いけど、俺達には有り余るほどある。

 けど、シャルテンの町に行くときの日課は未だに継続中。

 今日は、シャルテンの町に肉野菜を売りに行く日だ。やる気満々のルージュも、狩りで成果を上げ、荷車もいつになく山盛りだった。

 今日の荷車を曳いているのは俺とルージュ。嫁になって、たっての願いをファルタリアに聞いてもらい、交代してご満悦のルージュ。


「ラサキさん。ボクは幸せです」

「それは良かったよ、俺もだよ。でもあまりさ、力を込めてくっ付かないようにね。荷車を曳くのが大変になるからさ」

「あ、すみません。気を付けます」

「いいさ、何事も少しずつだからね」

「は、はい、嬉しいです。ハハ」


 そんな中、荷車の後ろを並んで歩く二人。


「早く決まって良かったですね」

「ルージュもいい嫁がや、ライバルがや」

「そう言えばサリアさん。そうやって、ワシワシ、すると大きくなるのですか?」

「フ、フン。そうがや」

「私もやろうかな」

「ば、馬鹿にしているかや? それだけあれば、十分がや。半分欲しいがや」


 二人で、ワシワシ、している図は、――絵になっていなかった。

 それに比べ、いや、比べてはいけない。みんないい嫁だし、比べるなんてしたらいけない。

 比べないけど、隣で俺に引っ付いて曳いて歩くルージュの、巨大な破壊兵器は、どうだ! と、言わんばかりに、タユンタユン、して自己主張していた。

 あ、そうそう、コーマは今、お勤め、に出かけて今はいない。

 町に入りギルドの横で店を広げ売り出せば、いつの間にか人だかりが出来て、あれよあれよと言う間に売り切れた。

 そこにレニが現れる。


「ラ、ラサキさん」

「やあ、レニ。顔色悪いぞ。どうした?」

「話しづらいのですけど……フェ、フェーニさんとミ、ミケリさんが亡くなりました」

「そう。――え?」


 レニの言葉に、片付けていた三人も手を止め振り返る。


「魔物、いえ魔獣に殺されたらしいです。中隊も全滅。と」


 ファルタリアとサリアは棒立ちで驚き、言葉が出ないようだ。

 ルージュは両手を口に当てて驚いている。


「フェ、フェーニとミ、ミケリが……うそ……信じられない」


 そして動揺し、驚愕し、狼狽え始める三人を見て、振り返り冷静に答えた。


「――そうか。教えてくれてありがとう、レニ」


 静かに答え、淡々と店を片づけ、そして閉める。

 三人は俺を見て、さらに驚く。


「何しているのですか? ラ、ラサキさん? フェーニとミケリが殺されたのですよ?」

「ラサキ、どうするかや? かたき討ちかや?」

「ボクはラサキさんに従います」


 すぐにファルタリアが食って掛かる。


「ラサキさん! 何をしているのですか? デマかもしれません! 王国に行きましょう!」

「行くがや! 本当なら弔いがや!」


 ルージュは落ち着きを取り戻すように話す。


「ラサキさん、どうしますか?」

「ん? 知らないよ。でも気分はとても良くないから、今日の皿食は止めて帰ろう」


 ファルタリアとサリアが驚愕の表情で、信じられない、と言う感じだ。一方ルージュは、完全に冷静を取り戻している。

 俺は無表情で三人に振り向く。


「なあ。フェーニとミケリは自身の意志で戦場に出向いたんだ。嫁の約束はしたけど、その前に二人も、その意志を貫いたんだ。結果はとても残念だけどさ、誰もが生き死にが掛かる戦争なんだし、死んでも何も文句はないだろ」


 俺は戦争には全く興味が無い。俺とその仲間が楽しく生活出来れば、他の事なんて知った事では無い。

 フェーニとミケリに関しても、昔一度、エランテの町で命を救った。そして、この戦争でも間一髪で助けた。それは大切な仲間だから。

 でも、四六時中なんて見ていられないし、ましてやすぐに駆けつけられない場所にいる。前回は予兆があったから幸運だったんだよ。

 それに、二人を助けた後、ヴェルデル王国の野営地で、今回は奇跡に近かった、次は無いかもよ、と伝え、二人も了承していたよ。

 だから今となっては、二人の生き様をどうこう言っても仕方がないんだ。

 自分の意志で戦い、勝ち抜いて中隊長と副隊長になり、名声を上げた。

 けど、あれだけ強かった二人でも負ける事もある。それが死に繋がっただけの事。

 弱肉強食の世界は、今も昔も同じだよ。


「だからフェーニとミケリは、自身で決心し、戦い、そして負けた。それだけだ。ただ、終わった事は仕方がないけど、知っていれば、間に合う状況であれば、全力で助けに行ったさ」


 しかし腑に落ちない点がある。

 あれだけ強かった二人が、負けても身の危険が迫れば逃げられるはず、そうやすやすと殺される事なんてあるのか? また大群だったのか?


「なあ、レニ。どんな魔獣だったんだ? 詳細は知っているのか?」

「はい、伝達事項では――ドラゴン。と」

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