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第23話 日常

 俺って……強いのか、最強なのか、それともへタレなのか、自問自答してみたけど……答えは出なかった。けど、これだけは言える。

 結論。コーマと二人の時は、コーマの流れに任せる。――以上。

 隣に座っている、お肌艶々で美しく、飛び切り笑顔のコーマ。


「お勤め行ってくる。じゃあね」

「ああ、いってらっしゃい」


 俺の頬に両手をあてて、口づけしながら消えて行った。


 日も昇り始めた気持ちの良い朝、庭に出て椅子に座り、我が家に帰って来た事を実感していたら、森の奥からレズリアーナさんを筆頭に、妖精たちが飛んで来た。

 笑顔のレズリアーナさんと妖精たちは、テーブルに降りて挨拶してきた。


「ラサキさん、おはようございます」

「おはよう、レズリアーナさんと皆さん、久しぶりだね。でもタイミングがいいな」

「はい。森の奥でお会いしたサリアさんから、帰って来た、と聞いたので、頃合いを見て来ました」


 俺の肩に飛び移って、髪の毛を触りながら、楽しそうに話している。すると――。


「では失礼します」


 羽をバタつかせ、飛び上がると正面に浮かび、おもむろに口づけをしてくる。

 まあ、その、なんだ。口づけと言っても、妖精は小さいので、俺の下唇に吸い付いて、チューチュー、と吸って来るだけなんだけどね。

 でも、体の中から何かが吸い取られる感じはする。で、テーブルに座っていた妖精達も順番に、上唇や下唇に吸い付き満足したらしい。

 一体俺の何が抜けているのだろうか、少し気になったけど死ぬ訳でもないし、妖精達も喜んでいるし、今さら気にしても仕方がない。

 全員がテーブルに立ち俺に向く。


「突然でゴメンなさい、ラサキさん。以前、私達が行った森の修復の時、ラサキさんを媒体とした妖力がとても美味しく、忘れられなくて……すみません」


 深々とお辞儀をするレズリアーナさんと妖精達。


「いや、これくらいだったらいつでもどうぞ。先日の恩返しと思えばお安い事だ」

「ありがとうございます。益々頑張ります。え? そう、はい。廻りの子たちも頑張ると言っています」

「こちらこそ」

「ではまた」


 森に振り返り、優雅に飛んで行った。

 レズリアーナさんご一行に手を振って見送れば、横の小道から、果物が一杯に入った籠を抱えて、サリアが歩いて来るのが見えた。

 その後ろには、大きな猪を、肩に担ぎ上げた涼しい表情のファルタリアが続いている。

 さらにその後ろに、決して大きくはないけど、猪を肩に、ファルタリアと同じように抱えたルージュが、腰を曲げながら険しい表情で歩いて来た。


「ラサキー! 果物と野菜がやー! アハハー」

「ラサキさーん、これで今日は安心ですよー」

「ハァハァ、ボクも、ハァハァ、獲りました、ハァハァ」


 ルージュ、偉いよ。やっぱり仕事も何でも一途なんだな。陰ながら応援したい気分だ、頑張れよ。

 その時、不規則に、自由に、奔放に、揺れ動く巨大な二つは見ていない、決して。


「ご苦労様、これで数日は持つよ。ありがとう」


 捕えた猪はすでに、しっかり、きっちり、確実に血抜きが施され、すぐにでも料理が出来る状態だった。

 家に持ち帰り、さばいて干し肉用と生肉に分ける。

 三人も腹を空かせているだろうし、さて、料理を作ろうか。

 獲れたばかりで新鮮だし、久しぶりのレムルの森で獲れた肉だし、素の味で行こうか。

 厚く三センチ程に切って、塩、香辛料を一つまみ振り、軽く焼いて出来上がり。

 取り敢えず四人で、六枚、三枚、二枚、一枚の一二枚を作った。


「出来たぞー。取りにきなー」


 各自の皿に盛ってあるステーキを取りに来て、居間のテーブルに置く。

 そして、肉の旨味を味わいながら、王国や帝国の肉料理の差など談笑しながら美味しく食べた。

 今日は一度、シャルテンの町に出向き、ギルドに行く必要があったので支度準備して出かける。


 数刻後、シャルテンの町に着きギルドに向かった。

 町に入れば三人に、好きな事していいよ、と自由行動にした。その用事は俺だけで十分だからさ。

 ギルドの入れば誰もいない。それもそうだ、冒険者のほとんどは休戦と言えどヴェルデル国に出向いているからね。

 暇そうに、頬杖をついていたレニが俺を見て、カウンター越しに立ちあがり、笑顔を見せた。


「ラサキさーん、お久しぶりですねー」

「やあレニ、相変わらず可愛いね」

「え? ええぇ? きゅ、急にそんな事言われても……」

「あ、いや、レニ。クネクネモジモジしなくていいから。あ、ゴメン、売り買い言葉だよ」

「そ、そんなぁ」


 悲しい表情になっているけど、気にしても仕方がない。


「レムルの森に関する連絡は来ているのか?」

「は、はい。――コホン。ヴェルデル王国から伝達がありました」


 後ろの書類の山を掻き分け、見つけたのか数枚の紙を持ってっ来る。


「これがレムルの森とその周辺の領土の権利書です。全てラサキさん名義になっています。どうぞお受け取りください」

「さすが王国、早いね、ありがとう、レニ」

「それと、ラサキさんの活躍も連絡が来ています。凄いですね英雄の領域ですよ」

「あー、たまたまだよ。運が良かったからさ。あ、そうだ、ヴェルデル王国って、国内の住民は戦争の事や、外の事を知らされないのか?」


 急に眼が泳ぎ、隠しながらも少し狼狽えるレニ。


「王国の強い指示です。詳しくは私にも伝えられていないので、わかりかねます」

「無理に聞こうとしている訳じゃないよ、気になったらから聞いただけだよ。特に意味も無いしさ、ありがとう」

「いえ、すみません」


 話も聞いたし、レムルの森の権利も貰えたから言う事無しだ。これからは今以上に好き勝手にできるよ。

 その後ギルドを出て、三人を探そうとしたけど、何処にいるのかさっぱり見当もつかない。皿食でも食べて待つか。

 んー、あ、そろそろコーマが来るかな。あ、やっぱりだ。

 後ろからしがみ付いて、頭をグリグリさせてくるコーマ。


「ラサキ、ただいまー」

「お帰り、コーマ」

「ウフフ、読めているのかな」

「読める訳ないだろ、何となく思った。感じただけだよ」

「嬉しいな、ラサキ。ウフフ、好きよ」

「皿食でも、食べに行こうか」

「うん、行こう」


 腕にしがみ付くように歩くコーマ。長く綺麗な銀髪を揺らし、美しい笑顔のコーマを横目に見て、俺は幸せ者だ、とつくづく感じた。

 久しぶりに二人きりで、コーマと初めて会った時の事など談笑しながら皿食を食べた。


「お肉、美味しかったね。ウフフ」

「ああ、そうだね。コーマも満足してくれて良かったよ」


 町中を腕を組んで歩けば、前方からファルタリア達が歩いてくる姿が見えた。

 両手に大きいレイクフィッシュの塩焼きを持って、バリバリ食べているファルタリア。

 焼肉と野菜を挟んだ大きなパンを両手で持って、口を大きく開けて頬張るサリア。

 蒸かしたジャガイモのスティックを一本ずつ摘み、アムアムと食べているルージュ。

 ん? ルージュだけダイエットか? 必要ないだろ、ダイナマイトだし、くびれもあるのだし。

 気になるお年頃なのかな。

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