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第12話 食べた後、お願いした

 翌日、目が覚め密着しているコーマを眺める。慣れて来たのか、コーマも美人で可愛いし、これはこれで気持ちがいいものだな。

 視線を感じるので扉を見る。その扉は少しだけ開いていて、ファルタリアの顔が半分だけ覗いている。

 目が覚めたコーマが、ファルタリアに見せつけるように、いやらしい笑みで俺に抱きついて見せた。

 ファルタリアが悲しい表情で人差し指を口に当てる。


「いいなぁぁぁ、早く私もそのベッドに入りたいですぅぅ」

「まだダメよ、ウフフ」

「ううぅ、頑張ります」


 その後、軽く食事を食べ、三人でシャルテンの町に出かけた。

 ファルタリアのバトルアックスは背中に斜めに背負う形で引っかけられている。購入した時に一緒について来た鞘で、装備の仕方も聞いていたようで問題なく装着している。

 なるほど、両手が使えるから便利だな。

 腕を組んで歩く俺とコーマ。ファルタリアが指を口に当て恨めしそうに話しかける。


「あのー、私も腕を組みたいな。と思いました。宜しいでしょうか」


 コーマは、我関せず気にしていないし俺に任せている。ファルタリアも可愛いから俺も嫌じゃない。


「いいよ、どうぞ。でも、町中はダメだよ」

「はいっ! では失礼します」


 嬉しそうに飛びついてくるファルタリア。

 両手に花だ。可愛い女の子に両腕を塞がれて嬉しいけど、誰かが見たらスケベ野郎に見えるだろうな。

 道中、魔物が出ないので、辺りを見回すファルタリアが疑問に思っているようだ。


「こんなこと初めてです、少なくとも一度は現れるのに」

「これもコーマの力だよ。俺も魔物を見たのは、ファルタリアが戦っている時が初めてだった。その後は見たことが無いな」

「凄いですね、コーマさん」


 満更でもなさそうな顔しているコーマ。うん、ドヤ顔だった。

 今回も順調に進み、町が見えて来たので離れ、並んで歩くファルタリア。

 検問所の前で並び、俺が証明書を取り出す。


「ラサキさん、コーマさんの証明書はいらないのですか?」


 言い忘れていた俺は、小声でファルタリアの耳元にささやく。


「ああ、コーマは本人の意思で、名目上奴隷にしているんだ。他の人は奴隷には直接手が出せないからね」


 コーマが首飾りを指さして見せる。


「これが契約の首輪よ。肉奴隷の契約、ウフフ」

「に、肉奴隷と言うのは、も、もしかして」

「そうよ、毎晩ラサキの慰み者になっているの。いえ、毎晩ご奉仕しているの、ウフフ」


 また余計な事を吹き込んで。参ったな。


「だ、だから建前だよ、形だけだ。誤解するなよ、ファルタリア」


 順番が来たので、証明書を見せて俺とコーマは何も無く通り過ぎる。後ろのファルタリアが、俺を指さし門番に話す。


「私もあの人の肉奴隷です!」


 はぁ? 何言っているんだ? 馬鹿じゃないのか? 天然を通り越して、馬鹿になったのか? 首輪も無いのに。


「ファルタリア! 何を言っているんだ、証明書があるだろ」

「ええ? でも、私もラサキさんの肉奴隷がいいですぅ」

「ダメだ。門番の人もお前を知っているみたいで呆れているぞ。早く出せ」

「ううぅ、仕方がありません」


 面倒掛けないでくれよ。今後、上手くやっていけるのか?

 渋々証明書を見せ、やっと通過できた。

 その足でギルドに行き、依頼を見に行く。ファルタリアが目を輝かせて掲示板を見ている。


「ラサキさん、依頼が沢山ありますね。どれにしますか?」

「――受けたい依頼が無いな」

「ええぇ? オーガの群れの討伐はどうですか? それともヒュドラ退治とか。あ、ドラゴン探しも面白そうですね」

「やらない。全部却下だ。無理に俺に付き合わなくとも、ファルタリアが単身で受けて見ればいいよ」

「そんなぁ……」


 最強でもないのに魔物関係なんてやらないよ。危ないし、面倒だからね。

 一通り見ていたら気になる依頼があった。


≪猪や鹿の肉の手配≫


 受付に行き、レニに聞いてみる。


「なあ、レニ。肉の手配の依頼があるけど、自分で売ってもいいのか?」

「はい。魔物に関係がありませんので、依頼を受けても、ご自身でお売りになっても問題ありません」


 いい事を聞いたよ。しばらくこれで行こう。ギルドを出て、商店に行き荷車を買い、木材を購入した。痛い出費だけど仕方がないな。

 腕を組んでいるコーマが、しびれを切らした。


「ラサキ、皿食」

「ああ、そうだな。食べに行くか」


 皿食屋まで来るとファルタリアも知っている。


「私、いつもこのお店で食べていました。美味しいですよねここの皿食」


 嬉しそうに店に入るコーマとファルタリア。

 二人前を注文するコーマ。二人前何て頼めません。と言いながら大盛りを注文するファルタリア。よく食べるな。太らなければいいんだけどね。


「ラサキ、大丈夫よ、安心して」

「コーマさん? な、何がですか?」


 また読んだな。意味不明な言葉にファルタリアが疑問に思っているし。

 店は繁盛していて結構混んでいたけど、美味しく食べた。こういう雰囲気も活気があっていいな。

 皿食屋を出て、用も済んだので町を出ようと荷車を曳く。隣を歩くファルタリアが、町を案内して教えてくれた。


「そしてあそこに見える建物が、私が剣術を教えてもらった施設です」


 施設の脇で数人の子供が何やら騒いでいる。

 一人の子をいじめているようだ。見た事のある女の子……あ、俺が倒した冒険者の子供だ。青く長い髪が印象的な可愛い女の子。


「ファルタリア、あの子を助けてやってくれ」

「はい、行って来ます」


 駆け寄って行くファルタリア。


「こらー! いじめはダメですよー!」

「やべっ、逃げろ―」


 ファルタリアを見た子供達が塵尻に逃げる。


「大丈夫? 怪我は無い? 私はファルタリア」

「ありがとうございます、大丈夫です。私はネリセルです」

「よろしく、ネリセル。どうしていじめられているの?」

「私、不器用で剣術が上達しないんです。廻りの人よりどんどん遅れて、補習を受けても上手くいきませんでした。今日は最後の1人になってしまったので、からかわれていたんです」

「そうかー、大変なんだね。私もこの学校をでたけど、始めはネリセルと同じだったよ。頑張って」

「そうなんですか。はい、ありがとうございましたー」


 手を振って、笑顔の戻ったエリセルが帰って行く。

 遠巻きに見ている俺の所に戻ってくるファルタリア。


「終わりましたー」


 ファルタリアから事情を聞いて考えが浮かんだ。


「ファルタリア。俺はしばらくギルドの依頼を受けない」

「はい、ギルドで言っていましたね。私は単独では受けませんから、我慢します」

「なら、強制ではないがお願いがある」

「ラサキさんのお願いでしたら、喜んで受けますよ。何でしょうか」


 俺は、ネリセルとの経緯を話し、剣の指導をお願いした。二つ返事で受けたけど、疑問も出たようだ。


「でもいいのですか? ネリセルにとってラサキさんは敵ですよね」

「いいんだよ、強く鍛えてくれ。本人が望めば、だけどね。俺がファルタリアに教えたようにやれば上達するよ」

「了解しました。喜んでお受けします。任せてください」

「報酬はどうする?」

「入りませんよ。ただ私、無一文なのでこの町にいる時の食費があると助かります」


 俺は、残りの金貨五枚を渡した。ほぼ全財産だけどその事は言わない。

 そんな事を言ったら受け取らないだろうからね。食料には事欠かないから大丈夫だし、蓄えもある。これから稼ごう。

 仲良く腕を組み家に帰った。


 翌日、街道までファルタリアを見送って、購入した木材を使って街道沿いに小屋を建てた。

 そこで露店を開き肉や野菜、果物を売るつもりだ。昔何度か作った事もあったので、手慣れたものだよ。

 コーマも俺の周囲を見て回り、面白がっていたな。

 夕方には、屋根付きの小屋の出来上がりだ。我ながらいい出来だよ。

 明日からの開店が楽しみだ。

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