第19話 アルドレン帝国2
事も済んで帰る間際、デュシナールに、ギルドを通して両国の国王宛に、経過報告、事後報告があるので両者立ち合いでお願いしたい旨を頼んだ。
まだ日も高く時間もあるので散策したけど、王国と同じだったから新鮮味に欠け、少し飽きが来ていた。
それでも、みんなと仲良く散策する事は楽しいので、順番に腕を組みながら歩いて時間を潰した。
時も経過し、頃合いを見て向かった先は、お気に入りの高級食堂。店に入れば、もう顔馴染みのようにいつもの部屋に案内され、全員がお気に入りとなっている触手の料理を堪能した。
ギルドから両国に連絡が言っても、国王の日程も入っている。なのですぐに決まる事でもなく数日を費やしている。
その間、俺達は急ぐ事も無いから、食べて風呂に入り、寝る。一度フェーニとミケリに会いに行って、約束していた皿食を楽しんだ。
その時ダンジョンの出来事を話したら、前のめりに食いついて来て、ファルタリアやサリア、そしてルージュから聞いた攻防を、一つも聞き漏らさないで覚えようとする姿勢で真剣に聞いていた。
宴も酣になった頃、フェーニとミケリから、ヴェルデル王国に戻ってくるように言われたけど、やんわりやんわり断った。
それはそうだろう。宿屋の質も違うし、触手の料理は外せないし、この差は帝国で過ごした方がいいからね。
さすがにこの事は、二人には話さなかったけど、過ごしやすい事だけを伝えた。
そうでもしないと、何でだろう、と疑問に思うかもしれないからさ。
そして夜。部屋の居間で、みんなでテーブルを囲みお茶を飲んでいる時、扉が叩かれアルドレン帝国の騎士が来た。
「ラサキ殿、経過報告の件、承諾しました。つきましては、アルドレン国王とヴェルデル国王が明日、先日と同じ王国内で会見したいとの事です」
「ああ、了解した」
「では失礼します」
騎士を見送り、扉が閉まるのを確認して振り返る。
「そう言う事だから、この宿は今晩が最後だな」
「ラサキ、お風呂行くよ」
「ラサキさん、入りましょう」
「入るがや。アハハー」
あ、そっちか。
「ボクも一緒に……入りたいです」
ルージュだけ少し寂しそうだった。
確かにレムルの森に帰れば、別々の風呂になる事を思っているのだろう。今回の事が特別だったから仕方がないな。
ただ、明日の会見次第では、ヴェルデル王国で宿泊する事もあるから、この先どうなるのかわからない。とすれば、まだ風呂に入るよな……。
「ラサキ、何しているの? 早く!」
「あ、ああ、うん」
扉越しに顔を出したコーマに怒られた。
風呂に行けば、漂って浮いているサリアを筆頭に、ちんこの歌、を輪唱している真っ最中だった。
ファルタリアは当たり前だけど、覚えて嬉しいのか、ルージュも楽しそうに輪唱していた。
あーやっぱりこうなったか……そうか、やっぱりか。恥ずかしげもなく堂々と、か……。
風呂に浸かればコーマがくっ付く。
「仕方がないでしょ。ウフフ」
「ま、仲良くしてくれればいいさ」
歌が終わった。
「ファルタリア、わかっているな」
「は、はい。お気の済むまで、どうぞ」
オズオズ、と大きくなっている尻尾を俺の腿に載せる。
よーしよし、覚悟しろよ。存分にモフッてやるから。フフフ。
「あん……」
でも恥ずかしそうだけど、赤ら顔で嬉しそうにモフられているし。まあいいさ、気にする事無く存分にモフりました。
サリアを見て思い出した。今になって思えば、何でサリアは浮かんで漂っているのだろうか。
気に入っている、気持ちいい、脱力感で浮くのが好き、などなど、どれかに当てはまるかな。
聞いてみたいけど、誰も気にも留めていないようだから、あえて聞くのは止めておこう。
各自好き勝手にしているのだから、余計なお世話だし、言われる筋合いもないしさ。
ファルタリアとコーマは、温まったのか先に出る。
その時コーマは俺を横目に見て、ウフフ、と意味深な笑みを浮かべて出て行った。
――何だ?
もう少し温まろうとしたら、奥にいたルージュが、タユンタユン、させながら、オズオズと近寄ってきて、失礼します、と隣に密着してきた。
はい、今回はしっかり見てしまいました。
しかし、斜め上から見える巨大なタユンは、凄いな、デカいな、素晴らしいな。
これは誰もが求める男のロマンかもしれない。いや、俺だけか。
ルージュは俺に向き直り、濡れた紫の髪が色っぽく、潤んだ瞳で見つめてくる。
「ラサキさん、お願いがあります。ボクもファルタリアさんのように、していただきたいのです」
強調してくるルージュの顔と、迫ってくる巨大な破壊兵器。
「あ、いや、だからそれはまだ」
「嫌です。そんなにボクの贅肉が嫌いですか?」
あ、涙眼のルージュ。あー、どうするかな。あー、参ったな。
「ラサキさんっ! お願いしますっ!」
「は、はい!」
「あ、あん」
ルージュの恫喝にも似た懇願に負け、咄嗟に手が出ました。
破壊兵器に完敗です。両手でしっかり堪能させていただきました。
サリアが向こうを漂っている中、俺の両手はルージュのとても柔らかい破壊兵器を、ワッシワッシ、させていただきました。
手を離せば、俺よりもルージュの方がご満悦のようで紅潮し、潤んだ瞳が妖艶だった。
「ラサキさんが、この贅肉を嫌っていなかったので嬉しいです。ありがとうございます」
「こ、こちらこそありがとう」
「ラサキさんが良ければ。ファルタリアさんと同じ頻度で堪能していただければ嬉しいです」
「あ、う、うん。検討します」
納得したのか温まったルージュは、お先に失礼します、と出て行った。
迫って来たルージュに圧倒されたけど、手に余る、余りすぎる、巨大で凶悪な双丘だった。……凄かった。
これは見てしまったら、堪能してしまったら、誰もがその魅力に落ちるだろう。
まだ手の感触が残っているので余韻に浸って温まるとしよう。
「ラサキ、どうしたかや?」
最後まで漂っていたサリアが起き上がり、仁王立ちで俺に向いた。長く美しい白髪から流れ落ちる雫が、サリアの可愛さをより一層引き立たせている。
目の前に立っているし、眼をそむけてもサリアに悪いから普通に見て話す。
「いや何でも無いよ。温まったから出ようと思ったところさ」
「胸、揉むかや?」
仁王立ちのまま俺の目の前で、ワシワシ、させているサリア。
だから人前でやるなよ。
「さ、出るよ」
風呂を出た。
まだルージュは体を丁寧に拭いていた。変形させながらも丁寧に拭いている。俺は見ていない、堪能したばかりだから見ていない。決して。
その横を通るサリアは、チャッチャ、と拭いて、威風堂々と全裸で出て行った。
就寝時、各自思い思いにホールドが決まり、納得すれば、スウスウ、と眠りに就く。
俺も眠りに就こうとしたらコーマが、良かったね、と一言言って眠った。
知っているのに知らない振りしていたのか。いつもコーマに踊らされている……、いいけどさ。これはこれで楽しいと感じ眠りに就いた。
――おやすみ――
翌日、朝食を終えて宿を出れば、コーマが、後でね、と消え、正面に迎えに来たヴェルデル王国の馬車が止まっていた。
その横には、俺達を待つ騎士が一人立っている。




