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第15話 戦地

 ジリ貧で押されている戦場に来た。

 俺は剣を肩に担ぎ、ファルタリアはバトルアックスを手に持って、兵士たちに近寄った。


「よっ、何とか持ちこたえたみたいだな。後は任せてもらおうか。兵士たちを引かせてくれ」

「来たぞー! 全員撤退―っ!」


 兵士たちが、後はお願いします、とすれ違って後方に走って行く。


「うーん、来たぞー、って俺は何なんだ? 何だかなー」

「いいじゃないですか、ラサキさん。私は、そんなラサキさんが好きですよ」

「まあいいよ。ファルタリアも今日はあまり遊ぶなよ」

「はーい、でも少しは鍛錬したいです」

「ファルタリアに任せるよ」

「はぁーい! 任されましたよー」

「ほどほどにな。さて、俺も見合った仕事はしよう」


 ファルタリアは勢いよく走って、デスナイトに向かって行った。

 俺も地面を蹴り出し、一っ跳びでデスナイトの前に降り立つ。


「よっ、フェーニ、ミケリ、お疲れ様。交代しよう」

「フゥ、ラサキさん、待っていました」

「ハァ、待っていたニャー」


 フェーニとミケリを筆頭に、足止めしていた兵士たちも一斉に下がった。

 さて、少し強めに行って見ようか。

 デスナイトが、常人では太刀打ちできない素早さで、上段右斜め上から剣を振りかぶり、叩きつけるように切りつけてくる。

 真面に受けて力強く弾き返せば、デスナイトの剣が吹き飛んだ。

 刹那、デスナイトのすぐ横を素早く通り過ぎれば、腕と足を切断する。

 バランスを崩し、倒れるデスナイトの首を切り飛ばし終了。

 見ていた兵士は、眼を見開いていたけど、剣筋は見えたのかな。

 ああ、見えなかったのね。何が起こった、とか、見えなかった、とか聞こえて来た。

 走って来たフェーニとミケリ。


「さすがラサキさんです。剣さばきも一段と速くなったみたいですね」

「凄いですニャ。見習いたいですニャ」

「二人の課題は腕力だけど、それでも十分だよ」

「それじゃダメです。ファルタリアさんに追いつかなければ」

「ムウ、鍛錬不足ニャ」


 それでも二人の頭を、大雑把に撫でてあげたよ。

 向き直りファルタリアを見れば、真剣な表情をした、楽しそうに戦っているファルタリアがいた。

 離れた周囲から見ている兵士たちは、手に汗握り応援している。応援はいいけど、もっと観察しろよ、鍛錬に生かせよ、そんな事では伸びないぞ。

 唯一、見ながら研究しているのは横にいるフェーニとミケリだった。

 うーん、二人は覚える事はないだろ、現に足止めは出来ているんだし。むしろ体力、いや、腕力かな、を鍛えるくらいで十分だよ。

 でも真剣に見ているから、あえて言うのは止めておこうかな。

 真剣そのもののファルタリア。

 先日俺に、見破られたんで、さらに演技力が上手くなっているね。しかし手を抜いているのがわかる。

 それは、ファルタリアと鍛錬し、手合せしていたレベルに届いていないから。隣に居る二人にも、違和感を感じたようだ。


「何だかいつもより弱くないですか?」

「変ニャ。もっと強いニャ」

「ああ、よく分かったね。あれは鍛錬しているんだよ」

「デスナイトで鍛錬ですか。あー、その手があったか」

「そうニャ。今度は鍛錬するニャ」


 いや、そこは違うからね、ちゃんとしようね。

 まあ周囲の兵士から見れば、凄まじい攻防を繰り返しているように見えるのだろう。

 ファルタリアは、兵士たちの声援を余所に、楽しんでいた。

 俺達が見ている事に気づき、長引かせたらよくないと知ったのか、デスナイトの一瞬の隙を突き切り飛ばし倒して終了。

 歓声が沸き上がっている中、手を振り愛想を振りまきながら、俺達に向かって走ってくるファルタリア。


「終わりましたぁ」

「ああ、お疲れ様」


 フェーニとミケリは、中隊を率いているので、一足先に離れ、中隊をまとめ引き上げていた。


「さて、仕事も片付いたし俺達も戻ろうか」


 引き揚げる途中、サリア達と合流しアルドレン帝国に帰った。

 ファルタリアが、腹が減った、と言うので皿食を食べながら、今後どうするか話し合おうか。

 皿食屋に向かえば、いつものようにコーマが現れる。


「美味しい皿食がいいな。ウフフ」


 腕を組んで街道を歩いていると、途中、豪華な両開きの扉を構えた、高級な料理店が見える。

 あ、思い出した。


「よし、あの店にしようか」

「私はいいわよ」


 三人とも肯定したので入った。ら――。

 食べている人は全員が正装している。反して装備している俺達は目立っていた。

 中央のテーブル席に座っていた、小太りの如何にも、侯爵だぞ、と言わんばかりの男が俺達を睨む。


「なんだあいつらは。よくもまあこの店に入ってこられたものだな。おい! 店員!早くつまみ出せ!」


 まあ確かに、コーマ以外は装備したままだよ。サリアとルージュは短剣に皮の鎧。

 俺も剣と皮の鎧。さらにファルタリアは背中に場違いなバトルアックス背負っているし。

 でも、そんな事は気にしない。

 配膳専門らしきメイドが俺を見て、慌てて厨房に入って行くと、すぐに店主らしき紳士が出てきた。


「これはこれは、ラサキご一行様。ようこそ当店へお越しくださいました。お話は伺っております。どうぞ奥の部屋へ」


 不満そうな人たちを横目に、店主に案内され奥の部屋に通された。

 おお、個室だよ。反して不安そうなファルタリア。


「大丈夫なのですか? 場違いじゃないですか?」


 ルージュも口をつぐんだまま挙動不審になっている。けど、コーマとサリアは、何食わぬ顔で、威風堂々と立っている。


「個室に通されたんだから、大丈夫だろ。話も通っているみたいだしさ。気にするな」

「でも何故この店にしたのですか?」

「なあファルタリア。シーガイの町に行った時、一番美味しかった食べ物はなんだった? 覚えているか?」


 耳がピコピコ動き、一つ手を叩くファルタリア。


「あ! もしかして、魔物の触手ですか? ここの店にあるのですか?」


 思いだし同調するサリア。


「あー、食べたいがや。食べるがや」


 失礼します、とメイドが入って来ると、品書きを渡される。見定めていたら……あ、あった。横で立って待っているメイドに話しかける。


「この触手料理と書かれているのは、シーガイの町で獲れた物かな?」

「はい、左様でございます。入荷しております」

「じゃ、この触手料理をこのテーブルに載るだけ頼もうか、調理方法は店にお任せする」

「畏まりました」


 サーラさんや、バルガンさんは元気かな。約束したから、期会があったら行かないと。

 料理が来るまでは、今日の魔物との事など談笑して待つ。

 扉が開き、次から次と、触手料理がテーブルに載せられてくると、待っていました、とばかりに食べ始める。

 みんな、美味しい、を連発しながら食べている。あー、これだよこれ、待っていました。中には、シーガイの町を思い出す料理もあった。

 特に初めてのルージュは感動していたよ。


「この料理、凄く美味しいです。食べた事が無い食感と味付けで最高です」

「まだまだ来るから沢山食べなよ」

「は、はい。あむ」


 怒涛の如く食べまくるから、メイドが大変だったけど堪能しました。あー美味かった。

 食後のお茶を飲みながら、これからの事を話そう。


「樹海に入って見ようと思う」


 お茶をすするファルタリアとサリア。


「邪王ですか?」

「多分入口があるがや」

「ああ、早く片付けるには一番手っ取り早いだろ」

「了解しました」

「行くがや」

「ボクはラサキさんにお任せします」

「頑張ってね。ウフフ」

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