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第11話 戦地

 フェーニとミケリは、指示して待機させていた中隊と合流し、先に行きます、と魔物に向かって行った。

 体調も戻っている二人なら、倒せなくとも、やられはしないだろう。

 さて、どうしたものかな。


「サリア、あの魔物は魔法攻撃が効かないらしいけど勝てるか?」


 横にいる仁王立ちのサリア。


「フン。魔法は効くがや。ルージュ行くがや」

「はい、了解しました」


 ルージュを引き連れ歩いて行くサリア。

 二人を見て、居ても立っても居られないのか、ワクワクしているのか、毛並みの良い尻尾を大きく揺らしているファルタリア。


「では私も行ってきます」

「ああ、無理するなよ」

「はぁーい」


 あ、楽しそうだな。魔王を倒せる程だ、好きにさせておこう。

 二人を見ていたらすぐに、サリアとルージュの立っている場所から魔方陣が展開され、攻撃魔法が放たれた。

 いつもと変わらないけど、少しだけ長く大きいファイヤランスとアイスランスが勢いよく射出した。

 単発なファイヤランスだけど、一体一体、確実にワイバーンに突き刺さり倒していくサリア。

 単発なアイスランスだけど、一体一体、確実にグリフォンに突き刺さり倒していくルージュ。

 何だ、普通に、当たり前に、効いているし。何の抵抗も無く殲滅に成功。

 見ていた兵士たちは、驚愕の表情だったけどすぐに歓声に変わって二人を囲んだ。

 しかしまだ、反対側のデスナイトは健在だ。

 向かったファルタリアも戦いに参戦しているけど倒せていない。それだけ強いのか? 魔王より強いのか? 魔王が弱すぎじゃないのか?

 ――答えはすぐに出た。

 行って見ればフェーニとミケリは兎も角、廻りの兵士が邪魔で思うように戦えないのが現実であり、実状であり、状況だった。

 でもデスナイト、国を落とすと言われるだけあって強いな。

 フェーニとミケリも、高速の素早い攻撃をしているけど、全く効いていないようだ。厳しい表情になっているし、いかんせん力が、腕力が足りないな。

 もう一体のデスナイトは好き勝手に暴れている。周囲には兵士たちが群がっているけど、簡単に蹴散らされている。


 感謝されていたサリアとルージュが帰って来た。

 魔法の話も聞きたいけど、それは後でにしよう。


「サリア、ルージュ、デスナイトの周りに群がっている、邪魔くさい兵士たちを退かせないか?」

「殲滅かや? 出来るがや」

「はい、爆裂しますか?」

「違う違う。無傷だよ無傷で。怖いな二人共」

「面倒がや。ルージュに任せるがや」

「はい、了解しました」


 両手を前に出し一言。


「爆風!」


 と同時に強烈な暴風が、デスナイトを中心に吹き荒れた。デスナイトの周囲に群がって戦っていた兵士たちは、無力にも数十m吹き飛ばされた。

 デスナイトは察知したのか身をかがめ、盾で身を防いでいる。さすがだな。

 ファルタリアもすでに身を低くして対処している。

 フェーニとミケリは対処したようだけど……身が軽いから耐えられず吹き飛ばされていた。これは仕方がないな。


「ラサキさん、終わりました。こんな感じでどうでしょうか」

「おお、いいよ。さすがルージュだ。じゃ、今度は俺の番だな、行ってくる」


 と一歩蹴りだし、デスナイトの前に飛ぶ。

 ファルタリアも、思う存分にバトちゃ、いやバトルアックスを振り回せるだろう。

 目の前にしてみれば、デカいな。デスナイトに見下ろされているし、眼球ないし、すぐに剣を振り降ろしてくるし。


「せっかちだな」


 剣で受け流し、切りかかれば盾で受けた。盾も頑丈に出来ているし。数回剣を交えて見たら、確かに剣圧も強いし力も凄かった。

 何よりこの巨体で修敏な、機敏な、軽やかな、動きって反則だろ、これじゃ、太刀打ちできないよ。

 ――普通ならね。

 頃合いを見て、デスナイトが剣を振り上げた二の腕を、一歩踏み込み切り飛ばした。盾で防ごうとしたけど俺の方が少しだけ早かったかな。

 すかさず振り返り、足を切り飛ばせば倒れてくる。そこで首を狙い横一線、切り飛ばし倒した。


「ま、こんな物かな」


 剣を肩に担ぎ、ファルタリアの方を見れば、バトルアックスを振りかぶり、デスナイトが盾で防いでも力技で豪快に叩きつければ、あのデスナイトが転がっている。

 すぐに追随すればいいものを、立ち上がるまで待っているし。

 そしてまた、立ち上がったデスナイトの振り降ろした剣を、豪快に受けて剣を交えている。

 真剣な表情だけど、絶対に楽しんでいるな。

 飛ばされた兵士たちは、近寄れず遠巻きに見ている。

 きりがいい頃合いなのか、楽しんだのか、デスナイトが振り降ろした剣を、見切ったようにギリギリで避け踏み込んだ。

 うなりを上げているようにバトルアックスが、デスナイトを袈裟懸けに切り飛ばす。

 さすがに真っ二つとはいかないものの、一撃で倒すファルタリア。歓声が上がる中、手で額を拭い俺に気が付く。


「お疲れ様でしたー」

「ああ、お疲れ様。何遊んでいるんだよ」

「わかりました? 一応真剣に戦っているように演じたのですけど。エヘヘ」

「俺には手を抜いていたのが良く分かったよ」

「ラサキさん以外で鍛錬できる事なんて中々無いですから」

「いいよ別に。二人の所に戻ろうか」

「はい」


 俺とファルタリアは、剣とバトルアックスを肩に担ぎ、二人並んで歩いて行く。

 横目に見れば、大きな尻尾を揺らし、威風堂々と歩くファルタリア。


「フーン、様になって格好いい姿だな」


 振り返り喜ぶファルタリア。


「ええぇ? そうですかそうですか。デレていいのですよ。もっと言ってください。私の胸に飛び込んで来てください。受け止めますよ」


 バトルアックスを片手に、両手を広げている嬉しそうなファルタリア。

 余計な事、言うもんじゃないな。


「嫁なんだからいいだろ」

「え? ええまあそうですけど、新鮮さも大事ですよ。エヘヘ」


 魔物を撃退したことで、喜んでいる兵士たちがいるけど、威圧を掛けていたので、俺には寄ってこなかった。

 ファルタリアには感じていないだろうけどね。

 囲まれていたサリア達も鬱陶しかったのか、恐怖を感じる程の威圧を掛けて近寄らせないでいた。


 ルージュの横にいるサリアは、眼線が丁度重なるのだろう。急にワシワシ始めているし。

 人が見ているのだから、止めておけばいい物を。


「終わったかや?」

「ああ、終わったよ、二人共ご苦労様」

「ラサキさん、ファルタリアさんお疲れ様です」

「はい、ルージュもお疲れ様です」


 フェーニとミケリは中隊を引き連れていたので、見かけただけで、笑顔で手を振って野営地に帰って行った。

 何故か後ろに連なっている兵士たちからも、手を振られた。多分俺に、ではなく、以外の三人にだ。

 帰り際にサリアに聞いてみた。


「魔法が通用したけど何でだ?」

「フン、誰も知らないがや。正確に言えば、低位魔法の無効化がや」

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