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第 6話 ヴェルデル王国

 樹海の中から、魔王メデゥーサに向かって攻撃し始めているファルタリア。応戦するメデゥーサだが、サリアの言った通り魔王は弱かった。

 いや、前言撤回、ファルタリアが異常に強すぎた。

 耐性を持っている上に、半予知化で戦うファルタリアは、石化もせず攻撃も受けず、多少の攻防はあったものの、難なく切り刻んで終了。

 って事は、ファルタリアは魔王になれるのか? んー、想像したけど……似合わないな。

 倒した後、樹海の奥に行き、助走をつけて地面を蹴り上げ、「たーっ」と、一っ跳びで帰って来る。

 が、またも着地失敗で、派手に転げて来た。何も無かったようにすぐに立ち上がり、笑顔で駆け寄ってくる。

 本当に頑丈だよ。


「終わりましたー。エヘヘ」

「鼻血が出ているがや」

「大丈夫ですよ」

「腕で拭くな。あー、横に伸びた」


 居たたまれなくなったルージュが、布を渡すと「ありがとう」と、受け取り、鼻を拭きながら話し出す。


「あのー、ラサキさん」

「どうした?」

「はい、蛇の魔王と戦っている時。話しをしました」


 ファルタリア曰く、魔王はこの十数年魔物を使役して両国が戦うこの時を待っていた。幸先は良かったが、結果全滅させられた。

 自分だけになったので、自ら出向き駆逐しようと出てきたら、目の前に自分より強い者がいた。

 倒される寸前。


「我の無念は、邪王が晴らしてくれるだろう。それまで恐怖して待っているがよい」


 魔王よりも邪王は数段強い、と言っていた。


「サリア、知っているか?」

「知らないがや。あたいは、魔王しか知らないがや。あたいは誰とも敵対もしないから、魔王にもそれ以外にも興味も無いがや」

「とりあえず今回は、終わったようだし、それにフェーニとミケリにも、無事間に合ったし、戻ろうか」


 途中、野営地に戻るフェーニとミケリは、別れ際、抱きついて来たけど、覚悟したように離れた。

 テントに向かう途中、後ろ髪が引かれる思いなのか、何度も俺達に振り返っていた。

 仕方ないだろ、二人は戦争に参戦しているんだし中隊長と副隊長なんだからさ。

 二人と別れ、ヴェルデル王国に入ろうと、四人仲良く歩いて行けば、そうは上手くいかなかった。

 ヴェルデル王国の検問所を目の前にして、数人の騎士に囲まれた。


「先ほどの戦いは誠に素晴らしかった。代表して感謝する」

「いや、仲間を助けに来ただけだから、気にしないで下さい。では失礼します」

「いやいやいや、あの戦いを見せられては、はい、そうですか、と通すわけにはいかないだろう」

「では、どうするおつもりで? 場合によっては俺も……」

「ま、ちょ、待ってもらいたい。貴殿たちを相手に出来る者など、ヴェルデル王国、いや、アルドレン帝国にもいない。誠にすまないが、国王にお目通りしてもらえないだろうか」


 ――面倒だけどな。

 振り返り、後ろに並んでいる三人に話しかける。


「どうする?」


 間髪入れずに、笑顔のファルタリアが返答する。


「美味しい皿食が食べたいですぅ」


 おい、違うだろ。ちーがーうーだーろー! この、ハゲ―! じゃなく馬鹿ー! と言いたかったけど押しとどめた。

 しかし、その言葉に反応する騎士。


「おお、勿論その後は、どの皿食屋でも食べ放題を約束しよう」


 え? 食い意地が勝ったのか? ……ま、仕方がない。これも活躍したご褒美だ。

 そして、騎士を前にして進み、王国に入る。

 城内に入り案内されると、煌びやかな広間に通され入れば、奥の壇上には国王と指揮官らしき髭の男が座っていた。

 豪華な絨毯が敷かれている正面中央に立つ。

 指揮官の横にいた騎士から、書面の様な紙を手渡され眼を通す指揮官。読み終わったのか国王に耳打ちすると、頷く。

 指揮官がこちらを見渡す。


「ああ、ラサキ殿とファルタリア殿、そしてサリア殿とルージュ殿。この度の魔物討伐による戦果、よくやってくれた。国王に代わって礼を言う」

「いいえ、気になさらないで下さい」

「そなた達は、あれだけの力を持っていながら、我が国からの参戦要請は無かったのか?」

「はい、ありません。冒険者登録をしてはいましたが、依頼などは一切受けていませんでしたから。そして、戦争にも興味ありません」

「隊に入る気はないか? いい待遇を約束するが」

「毛頭ありません。只一つ言っておきます。俺達が入れば必ず勝ちます。それも一日足らずで理不尽な程に。

相手が兵士であれば数百万人いたとしても確実に勝てます。今日の魔物の殲滅をご覧になったでしょう。

仮に私達が相手国に入れば、ヴェルデル王国も一日足らずで陥落させることが確実に出来ます。

どちらにも加担したくありません。なので、ご遠慮します」

「破格の金額を用意している。この上ない話しなのだが」

「いいえ、自給自足で生活する事が楽しいです。そして肉を売って得た資金は、十分持っているので、これ以上は望みません」

「そこを何とか曲げてだな。どうしたら承諾してもらえるのだろうか。望みがあれば聞こう」

「はぁぁ。だからこの城の中にいる兵士、騎士なら、十数分で殲滅させる自信があります。さっきも言った様に、戦場の戦いをご覧になったならお分かりでしょう。で、どうしますか? これほど言って聞いていただけないのであれば、一戦交えてみますか?」


 騎士達が剣を抜き構えるが、国王が手を払うと鞘に収めた。指揮官に小声で話す。


「ああ、失礼した。残念、大変残念だが致し方が無い。これ以上は何も言わないと約束しよう」

「この後俺達は、国内を見て回りたいだけなんです」

「そうか、ゆっくりして行かれるが良い。気が変わったらいつでも尋ねられよ、歓迎しよう」


 諦め、項垂れる指揮官。

 話しが終わると同時に、指揮官の横から派手な衣装を身に纏った女性が入って来る。

 身長一五〇センチ程の、金髪両サイド縦ロールにクリッとした茶色の瞳、さらに巨大な破壊力のある二つの瓜。

 あれはルージュと同格かそれ以上。

 横をチラリとみれば、さっそくサリアが巨大な瓜を凝視しながら、ワシワシさせている。

 またか。え? おいおいファルタリアもつられて、ワシワシするなよ。お前はそれで十分だろ、それ以上を求めなくていいよ。

 ルージュは、我関せず、と平然としている。そうだよな、うん。


「ラサキ、久しぶりね」

「誰だ? お前」


 一瞬、場の雰囲気が冷たく変わったけど気にしない。


「し、失礼ね。以前街道で、ラサキの店の前で会ったでしょ」


 俺は少し考える。そして思い出した。


「あー! あの時の、高飛車わがまま娘か!」


 今度は場が、肯定しているような雰囲気だった。


「な、何よそれ。あれ以来、と、とても、す、素直よ」


 あ、場の雰囲気が否定しているような……。何だか色々と……大変なのがわかったような気がする。


「それに、サリエン・ギイ・ヴェルデルと言う名前も忘れたの?」

「で、何?」

「な、何って。私と再会したのよ、出来たのよ。もっと感激しなさいよ」

「え?」

「え? じゃないわよ。本当は私に会えて嬉しくて仕方がないのでしょ? 素直じゃないんだから。仕方がないわね」

「さ、帰ろう」

「ま、待って、待って! えー? 私の事何とも思わないのー? これだけ美しい美貌を持っている私が、貴方に話をしているのよ。あーっ! だから待ちなさいよ、待ちなさいってば! ラサキーッ!」


 特に誰にも何も言われなかったので、広間を出て城を後にした。

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