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第 5話 戦地4

 ラサキとファルタリアが、目の前に立っていた。

 一言残し行動するラサキは、凄まじい素早さで、魔物の間をすり抜けるように走る。その周囲の魔物は何をされたか分からないうちに倒れ、倒されて行く。

 剣さばき、太刀筋が余りにも高速なため、周囲からはそう見えているだろう。

 ファルタリアは、走りながらバトルアックスを振りかぶり、

 真っ二つ、真っ二つ、真っ二つ、真っ二つ、真っ二つ、真っ二つ、ことごとく。

 半予知化の能力があるので、相手の隙が見えているように全て真っ二つに、豪快に切り飛ばしていく。

 剣も盾も紙切れのように、馬鹿力、いや、怪力と、念入りに手入れをした切れのいいバトルアックス。

 それも二人共、楽しそうに、楽しむように、楽しんでいるように。


 続いて後方から、サリアとルージュが来る。


「こっぴどくやられたがや。アハハー」

「フゥ、二人共お待たせ」


 すぐにサリアが二人を回復させる。ルージュが中隊の兵たちを回復させる。


「う。あ、ありがとうございます。う、う、」

「うぇ。あ、ありがとうございますニャ。うぇ」

「泣くのはまだ早いがや。中隊長、副隊長らしくするがや」

「二人共、しばらく休んでいて。あとはボクとサリアさんに任せて」


 振り返り、両手をかざせば、魔方陣が展開され、攻撃魔法を連射で放つ二人。ファイヤランス、アイスランスの大安売りだった。

 連打している攻撃だが、確実に魔物に突き刺さり倒している正確な攻撃で、全く無駄が無い。

 さらに、負傷しながらも戦っている兵隊を優先して、援護するかのように打倒している。

 たった四人の攻撃で、蹂躙されて行く魔物の群れ。見ていて気持ちがいいほど、見る見るうちに魔物が減って行く。

 そして数刻後、魔物は殲滅していた。



 殲滅を確認して、念のためすぐに構えられるように剣を担ぎ、フェーニ達が座っている場所まで歩く。

 向こうから、尻尾を大きく揺らしファルタリアも、バトルアックスを回転させながら意気揚々と歩いて来た。

 バトルアックスを背中に納め、隣を歩くファルタリア。


「ラサキさーん、こんな感じですかねー」

「ああ、十分だよ。ご苦労様」

「エヘヘ、嬉しいですぅ……んー」


 抱きつき口づけしてくる呑気なファルタリア。

 他の人が見ているだろ恥ずかしいな、ま、今回は仕方がない、ご褒美だ。

 フェーニ達の元に来たら、サリア達が回復したので元気になっている。

 元気な二人は、俺に駆け寄り抱きついて来た。


「助かりました。ありがとうございました」

「助かったニャ。恩人ニャ。旦那様ニャ」


 大雑把に頭を撫でれば、中隊長では無く、いつものフェーニに。副隊長では無くいつものミケリに戻っていた。

 赤ら顔ではにかむ嬉しそうな二人。


「久しぶりだね、二人共。そして、よく頑張ったよ」


 隣のファルタリアも嬉しそうだ。


「危なかったですね。皿食なんて食べていたら、二人共、魔物に倒されていましたよ」

「お前が食べようと言ったんだろ」

「え? あ、はい。エヘヘ」

「エヘヘ、じゃない」

「そうがや、間に合わなかったらファルタリアの責任がや」

「そうです。ボクもそう思います」

「ええぇ? だから我慢したじゃないですかぁ」


 聞きなれた、いつもの会話を聞いていたフェーニとミケリが笑顔になる。


「でも結果、助けていただいた事は事実です」

「こうやって生きているニャ。感謝ニャ」


 今度はルージュが二人に寄り、抱き合う。


「元気そうだね、二人とも」

「ハハハ、さっきまで死にかけていたけどね」

「ニャハハ、うん死んでいたニャ」

「でも良かった」


 周囲を見渡せば、王国帝国の生き残った兵たちが俺達を見ている。それも驚愕の眼差しで見ている。

 何故そんなに簡単に魔物を倒せるのか、と思っている表情だった。

 察知するファルタリアとサリアも周囲を眺める。


「ラサキさん、どうしましょうか。この状況」

「どうするかや? ラサキ。注目の的がや。アハハー」

「気にしないで皿食でも食べに行くか?」

「いいですね、賛成です。さっきの皿食屋がいいですね」

「賛成がや」

「ボクはラサキさんと一緒ならどこでもいいです」


 俺達の会話に戸惑っている二人と中隊の兵たち。


「ラ、ラサキさん。ここは一応……戦場なので」

「規律があるニャ。戦争ニャ」

「ああそうか、悪かった。とりあえず王国に入ろうか」


 全員立ち上がり、野営地に戻ろうとすると、またもや転移門から魔物が湧き出てきた。

 動揺する中隊や、また恐怖に怯える生き残った兵士たち。

 俺は頬を指でかき転移門を、ファルタリアは生暖かい眼で転移門を見ている。


「魔物の群れの中には誰もいないし。さ、帰ろう」

「はい、帰りましょう」


 驚くフェーニとミケリ。そして動揺する周囲の兵士たち。


「え? え? ラサキさん? ファルタリアさん?」

「あ、あれはどうするニャ? お、襲ってくるニャ」

「あ、ゴメンな、言葉足らずだった。サリア、ルージュ、後は任せる」

「特大でいいですよ。エヘヘ」


 仁王立ちになるサリアと構えるルージュ。


「鍛錬の成果を発揮するがや」

「はい、了解しました」


 呼吸を合わせる二人は、魔力を貯めたのか眼で合図する。


「「爆裂っ! 雷撃っ! 爆撃っ! 爆炎っ!」」


 息の合った掛け声。

 二人の前に、小さい魔方陣から大きな魔方陣が、赤青緑、と幾重にも展開される。

 中から射出された、小さな光が魔物の群れの中心に、突き刺さるように落ちる。

 そして――。

 タレーヌの丘に、地響きと轟音が響き渡り、魔物がいる中心で炎、雷と共に大爆裂が起こる。

 その後からやってくる怒涛の爆風で、構えなどもとっていなかった無防備な兵士たちが、転がっていく。

 その規模、タレーヌの丘半分が消滅し、広大に陥没。転移門も砕け散って、樹海の正面の一部も消失した。


 合体魔法の出来のよさに喜ぶルージュ。


「やったー。やりましたね、サリアさん」


 仁王立ちで、塵でも落とすように両手を叩くサリア。


「ま、こんなもんがや」


 俺たち以外の見ていた兵たちは、あまりの理不尽さにひっくり返って立てず、腰を抜かしている者もいた。

 サリアとルージュがこっちへ向かって歩いて来る中、転移門のあった場所を見る俺とファルタリア。


「これで魔物も出てこないだろう。ん?」

「どうしましたか? ラサキさん。え?」


 転移門があった場所に一体の魔物が立っていた。

 体長は、立っている部分は三mほどで、足は無くとぐろを巻いている。

 ――大蛇か?

 さらに髪の毛が蛇の女性。あ、ここから見ても視認できる、たわわ、な二つが丸出しだったよ。恥ずかしくないのかな。


 俺の横で振りかえるサリアが、眼線を感じたのか、ワシワシ始める。


「あー、あれは魔王がや」

「あれが? 魔王?」

「そうがや。魔王のメデゥーサがや」


 話しを聞いていた中隊の兵たち。


「メデゥーサだって? 全員、眼を見るな! 石化するぞ」


 フェーニが指揮をとる。


「命令だ。総隊野営地へ引け。私も後から行く!」

「命令ニャ!」


 駆け出す中隊。


「フェーニとミケリ、ルージュはここに残れ。サリアもな」


 仁王立ちで、ワシワシさせているサリア。まだするか?


「まあ、ラサキとファルタリアなら簡単に倒せるがや」

「じゃ、ファルタリアに任せるよ」

「はーい、任されましたぁ。では、行ってきまーす」


 背中からバトルアックスを取り出し、魔王に向かって走り出すファルタリア。次第に速くなりスピードに乗る。

 そして陥没した丘を一っ跳びして、メデゥーサの手前で着地。

 するはずが、失敗して転げ回って樹海の奥に消えて行った。


「ハァァ、何やっているんだ」

「大丈夫がや。問題ないがや」


 サリアも、ワシワシさせていうな。

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