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第 1話 神と出会う

一人称です。

よろしくお願いします。

 目をさまし、天井を見る。

 小鳥のさえずりが聞こえ、窓から日差しが入り始める清々しい朝。


「あー、またか。全く」

「……」

「おい、コーマ。 おーい、コーマさん」

「んー、もう朝か。おはよう、ラサキ」


 掛けてある毛布を剥げば、俺の胸を枕に、一六歳程の綺麗で可愛い女性が寝ている。

 身長一五〇センチで、長くサラリとした銀髪、クリッとした赤眼、透き通るような白い肌に細身の体型。反して、たわわな胸が自己主張している。

 その女性の名はコーマ。


「また服を脱いでいるぞ。いつも、全裸になるなと言っているだろ、何でかな」

「途中で脱いだの。何も身に纏わない方が気持ちいいでしょ」

「俺が良くないよ。 毎回言っているが、俺も男だからさ」

「お、ようやく私に欲情したか? ウリウリ」

「や、やめろ。 胸を押し付けて来るな。」

「ウフフ、ぎゅーっ」


 俺は手の平で、コーマの頭を軽く二度叩く。


「気持ちはいいけど止めなさいって」

「ラサキも上半身裸じゃない。何が違うの?」

「コーマは女だから節操を持つの、男は半裸でもいいんだよ」

「私ならいつでもいいよ。早く手を出して、フフフ。それに、一度は契りを交わした仲でしょ」

「おいおい、変な言い方するなよ、誤解されるから。口づけだけだろ」

「それでも契りだよ」


 俺はラサキ、一八歳。身長一七五センチで、自分で言うのも何だけど、隣の女性にも好かれているから整った顔立ちだと思う。

 筋肉もしっかり付いている、短髪の黒髪で黒眼のごく普通の男だ。で、一緒にいる女性はコーマ。俺に付きまとっている神だ。


「付きまとっているのではないよ。私とつがいになるんでしょ? 約束よ」

「勝手に心を読むなよ。約束は守るけど、嫁はまだいらない」


 見た目は一六歳程だが、れっきとした大人で七〇〇歳だ。つまらない日常を送ってもしかたがないから、まだ相棒として付き合っているつもりだ。神だから襲われても平気だろうし心配ないからね。

 小高い山の中腹にある、森の草原に立つ俺達の家。

 こうして一日が始まる。


 ◇


 経緯を話そう。

 昔、俺は傭兵をしていた。そこそこの強さだったが、最強では無い。単身で、依頼を受けたパーティに加わり参加するのが仕事だった。報酬は魔石や戦利品ではなく、一仕事の料金で契約する。

 安いが一番妥当で、失敗しても確実に実入りがある。生活水準も、一人で生活するだけの可も無く不可も無く平均だ、普通に生活すればの話だが。

 二五歳を過ぎてから冒険者として技術も向上し稼げるようになった。けどその金は、安酒と女に消えて行った。

 稼いだ夜は、良い酒を飲み女を買い、毎日酒場に入り浸る。馴染みの女と、事を終わらせ寝物語を聞かせる。


「ラサキはいい男なんだから、所帯を持ったほうがいいんじゃない?」

「それだけの稼ぎは無いよ。高いお前と安酒で消えて終わりだ」

「フフフ、贔屓にしてもらっているから、私は嬉しいけどね、好きよ」


 依頼を受けては女を抱き、酒を煽る。ろくでなしの生活だった。

 金さえあれば、いつでも抱ける女。嫌いではないけど、四〇歳になり、する事にも少し飽きが来たかな。それでも好きな酒だけは毎日煽った。

 四〇歳も過ぎ、体力にも限界を感じてきたので、農家の手伝いでもしようと最後の依頼として、引退を考えていた。何組かのパーティの中で、その一組に入る。

 樹海を進んで行けば、魔物の群れに当たり戦闘が始まる。入り乱れての激しい乱戦で、一進一退を繰り返した。

 俺は、一体の魔物を切り飛ばし、呼吸を整え周囲に目を向ければ、戦闘が行われている外れに、場違いな女の子が立っているのが見えた。銀色の綺麗な服を着た、銀髪の一〇歳くらいの可愛い女の子。

 俺は無意識に女の子に駆け寄り眼が合う。女の子は、自分が見えている事に驚いているようだった。

 と、同時に魔物の攻撃が横から来て、咄嗟に、女の子に覆いかぶさるようにかばい、魔物に襲われ人生の幕を閉じた。


 が、生き返った。それも二〇〇年ほど先の世界で。

 実は、女の子は神だったんだ。

 死んだと思った後、何も無い空間でその子と話をした。


「我が見えた事も珍しいが、助けて貰った事も初めてだの。お主の運命は、我が見えなければ死ぬ事も無かったのだが。申し訳ないから、助けてあげようかの。よく見れば、お主は我の好みだしの」

「いいよ、だったらこのまま死なせてくれよ。もう未練はないからさ。最後に人助けならぬ神助けが出来て良かったよ」

「何と欲の無い男だの。ふむ。では、生き返ることが出来たら何か希望はあるか?」

「無理にとは言わないけど、叶うなら、今までいた世界と違う世界がいいな、二〇〇年後とか。それと、楽に生きたいな。今までが、大した事無い生き方だったからな。それと、健康な体は必要だな。それくらいだよ」

「いいだろう。その望み叶えようかの。ただし、我もついて行くがいいかの?」

「うーん、俺は幼女の趣味がないからなぁ。もう少し大人になったら考えてもいいかな」

「お前の好みになればいいのかの? いいだろう。契りを交わそう」


 動けない俺に、口づけをする幼い神。幼いのに凄く深い口づけだ。同時に俺の体から何かが吸い取られる感じがして、意識が無くなった。

 気が付くと、俺は森の中で寝ていた。隣には、一六歳程の女性が綺麗な服を着て、引っ付くように寝ている。

 四〇過ぎの俺にしたら小女趣味……ん? 体が軽い、手足に張りがある。目を覚ます女性が俺を見る。


「気が付いた? 名前は何?」

「俺はラサキ。君は誰だ?」

「神だよ。名はコーマ。よろしくね」

「え? 神? あの時は幼かっただろ?」

「うん、契りの口づけをしたから変わったの。ラサキの好みになったつもりけど、どうかな? ダメだと言われても、もう変えられないけどね」


 銀髪赤眼の女性


「すっごい俺好み、理想そのものだけど。何でだ? 四〇過ぎの俺なんか」

「よく見て、ラサキ。若返らせたのよ、フフフ。一八歳くらいだけど、良かったかな?」

「本当か? だから体が軽く感じたのか。じゃあこの世界も?」

「うん。あれから二〇〇年が経っている」


 俺は辺りを見回した。死んだ時の装備一式と、持って出た荷袋が置いてある。これなら当面は何とかなるか。


「なんで俺に着いて行くんだ? 神なら好きな事も出来るだろ?」

「私も五〇〇年ほど過ごしていたけど、助けて貰った事なんて無くて……初めてだったから嬉しくて……好きになった」

「へ? 何? 誰を?」

「だから、助けてくれたラサキが好きになったの。数千年の中の数十年くらいだから、ラサキと一緒に過ごしたい。つがいになりたい、と思ったの。だめなら夜伽だけでもいいよ」

「ばっ、何を馬鹿な事言ってるんだ。それに、さっきから聞いていれば、夢の中と口調が変わっているだろ。本当にあの時の本人か?」

「うん、婆くさいから止めたの。ラサキの話し方を聞いていたら、仙人みたいだしね。それに、ラサキに合わせないとね、ウフフ。ラサキの希望は叶えたから、約束は守ってね」


 起き上がり、辺りを見回せば、森と草原の境に一軒の家が建っている。

 俺の疑問を聞く前にコーマが教えてくれた。


「私とラサキの家よ。住む場所が無いと不便でしょ。私からの贈り物。簡単な家財道具は揃ってるよ」

「そいつは豪儀だな。そんな能力があるんだったら俺なんかいらないだろ」

「ラサキとじゃなきゃ嫌だ。一人じゃつまらないし、それに、ラサキが私を見つけてくれた事で、使える力になったみたい。ラサキが居なくなったら使えなくなる力かな」

「嬉しいんだか、悲しいんだか、困っているんだか……」

「そんな事よりラサキ、家に入ろうよ」


 丸太で出来た一軒家。部屋もいくつかあり、居間も大きい。俺とコーマが住むには十分すぎるくらいだ。

 近くの川では魚が獲れ、森には動物がいる。食料には困らないだろう。

 こうして、俺と神、コーマとの生活が始まったんだ。


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