「七色の旅団」
「七色の旅団」
2月12日 金曜日
夜19時、とある雑居ビルの一階、居酒屋「カエデ亭」
この「カエデ亭」は、鉄板焼きの店で、
シンゴが「七色の旅団」時代から、足しげく通っている店だ。
その「カエデ亭」の奥にあるテーブル席で、
男女4人が、酒と料理を楽しみながら、話し合っている。
「みんな、急な招集にだったのに、来てくれてありがとう」
シンゴが礼を言うと、彼の隣に座っている、寝不足顔の女性が話し始める、
「部長、さすがに今回は急過ぎだよ…」
そう言って苦笑いする女性、
彼女は〖カメザキ ミユ〗といい、
「七色の旅団」のナンバーツーで、「副長」の愛称で呼ばれている、
趣味はゲームで、それが高じて実況動画等で評価を得ており、
また金持ちのご令嬢でもあり、
カエデ亭が入っている雑居ビルは、彼女の父親の所有で、
2階には彼女の趣味スペースがある。
「いや、本当にごめん…」
とシンゴは副長に、申し訳なさそうな顔で頭を下げる、
そのやり取りが終わるのを見計らって、
シンゴの正面に座っている男が、からかうように話し始める、
「にしても…部長、大の大人が、バレンタインデーを忘れられるような、冒険を楽しみたいなんて、医者に相談したほうがいいんじゃないか?」
そう言って笑う、この恰幅のいい男は、
〖カミヤ リュウジ〗といい、
「七色の旅団」内では、シンゴとの付き合いが一番長く、
気が合いすぎるためか、逆に衝突することも多い、
また、かなりのミリオタ(ミリタリーオタ)であり、
愛称は戦闘機メッサーシュミットBf‐109Gと、
そのガタイの良さから、「タフ(頑丈)」と呼ばれている。
「そうだなタフ、貴様の様な脳筋野郎に、相談する位なら、医者に診てもらった方がよかったかもしれん」
シンゴにそう言われ、顔を真っ赤にしてタフは立ち上がるが、
シンゴは構わず話を続ける
「それはそうと副長、昨晩話したゲームのこと、何か思い出したか?」
シンゴはタフを完全に無視して話を続ける、
それを見てタフがシンゴに掴み掛ろうとすると、
横に座るスーツ姿の優男が立ち上がり、タフをなだめる、
この優男は〖ホンドウ タケヤ〗といい、
優しい性格で、「七色の旅団」内の中和剤的な男だ、
趣味はカメラで、学生時代から色々な雑誌に投稿しており、
愛称はミノルタから取って、「ミノ」と呼ばれている。
「まぁまぁ、落ち着けよタフ、結構面白そうじゃないか」
ミノが、そう言ってニコリとすると、タフは複雑な顔をする
「面白そうって、お前なぁ…」
タフはそう言って、脱力し席に着くと、
それを横目に副長はシンゴの質問に答える
「ああ、部長の言ってたゲームって、TRPGの事じゃないかな?」
副長がそう返答すると、
「TRPG?」
シンゴ、タフ、ミノの三人が同時に言う、副長は頷くと答える
「うん、TRPGとは、テーブルトークロールプレイングゲームの事だよ」
その返答を聞いて、タフが質問する
「TRPGの、RPGってのは、家庭用ゲーム機とかでよくある、モンスター倒して、レベル上げて、強敵倒して…みたいなゲームだろ?」
タフの質問を聞き、副長は頷き説明する
「そうそう、そのロールプレイングゲームを、ゲーム機ではなく、ボードゲームの様に、テーブルでやるんだよ」
その説明を聞き、ミノが質問する
「それって、テレビゲームみたいに、コンピューターが勝手にやってくれてた、ストーリーの進行や管理はどうするんだ?」
その質問を聞き、副長はミノを見て答える
「どうするって、そのゲームの進行や管理も、人間でやるんだよ、審判みたいな感じでね」
そこまでのやり取りを聞いて、シンゴが口を開く
「うーん、俺が思い出したゲームは、そのTRPGだとは思うが、どういうゲームなのか、いまいちイメージ湧かないなぁ…」
そう言うシンゴ見て、副長は苦笑いする
「まぁ、テレビゲームに慣れた人間は、TRPGなんてイメージ湧かないよな…」
副長がそう言うと、シンゴも苦笑いし、続けて質問する
「まぁ…とにかく、そのTRPGってのは、「バレンタインデーを忘れられるような、冒険を楽しむ」ことができるのか?」
副長はコクリと頷く、
「期待してくれ部長、十分に楽しめると思う」
そう副長は答えると同時に、店のドアが開き、新たな客が入ってきた。