「エッセンス」
「エッセンス」
シンゴ達は「地下大空洞・深層」を1時間40分探索し、
各キャラクターのステータスは、次の通りとなった。
シーフ LV20 腕力16・体力9・知力4・運10、スキルポイントは25
ナイト LV18 腕力16・体力16・知力2・運3、スキルポイントは22
ロード LV18 腕力4・体力4・知力4・運25、スキルポイントは21
クレリック LV18 腕力4・体力3・知力15・運15、スキルポイントは25
ウィザード LV17 腕力2・体力2・知力17・運15、スキルポイントは26
レベル上げを終え、シンゴ達はタウンに戻り、最後の補給を済ませ、
いよいよ救出作戦に出発、というところだ
「よし、このまま一気に7階に降りて、副長と合流だ」
シンゴはそう言って、副長を見るが、副長は目を閉じ何も言わない、
ユキはそんな二人を見て、一瞬間をおいて【GMミヨシ】に伝える
「【GM】さん、リターンで5階のセーフティゾーンに行きます」
それを聞いて【GMミヨシ】が頷く、時計の針は17時00分を指し、救出作戦は開始された。
シンゴ達は2度の戦闘を経て、先の探索で見つけておいた、
B7縦14横13の真上に、一番近い6階の崩落個所に到着する。
「よしみんな、行くぞ」
シンゴがそう言ってダイスを振ろうとするが、
そこまで何も言わなかった副長が口を開く。
「待ってくれ部長、本当にいいのか?、失敗すれば確実に全滅だぞ?」
それを聞いてシンゴが答える
「だろうね、「獅子の泉」のパーティが挑んで、副長を一人残し帰還不能に陥った場所だ、俺達みたいに昨日今日始めたパーティでは、救出成功の望み薄いかもな」
あっけらかんと答えるシンゴを見て、副長は困惑して質問する
「なっ…、わかっているなら何故救出にくるんだ?、そもそも私が取り残された時の冒険は、実況動画や公式の大会でもないんだ、なかったことにしてやり直すことだってできるんだぞ?」
副長がそう提案すると、シンゴは答える
「そうか、ならタウンに戻ろう」
シンゴが軽く返答すると、ユキは驚く
「先輩、ここまできて帰るんですか?」
ユキが焦って言うと、シンゴは答える
「だってさ副長が、やり直したっていいって言うんだ、それならやり直した副長とタウンで合流しよう、きっとめちゃくちゃ強いぞ副長のキャラクター」
シンゴが何の気なしにそう言うと、副長は声を荒げる
「何も事情を知らないで、勝手なことを言うな!」
シンゴは怒る副長を、なだめるように言う
「そうなんだよ副長、その事情についてわからないんだ、なぜいままでやり直さなかったんだ?事情を話してくれないか?」
シンゴがそう言うと、副長はうつむいて少し考えた後、話し始める
「私は大学に入る前からゲームが好きで、大学に入ったら当然ゲームに関係するサークルに入りたいと思っていたんだ、
そして、体験でサークルを色々回っているうちに、TRPGのサークル「獅子の泉」を見つけたんだ…」
副長は一瞬間をおいて続ける
「その時に私は、経験ついでに一回はやってもいいかなと、軽い気持ちでTRPGを先輩達とプレイしたんだが…」
副長は笑顔になる
「ところが、ついでどころか、その雰囲気にどっぷりさ、冒険の中で起きる事を、いちいち仲間達と共有し実感する…、それが新鮮でリアルで楽しくてな…、ずっと続けばいいと思ってたんだが…」
副長の顔が曇り、口ごもるのを見て、シンゴが続ける
「新入生が入らなければ当然サークルは解散する…」
それを聞いて副長は苦笑いする
「そうなんだ、次世代ゲーム機にオンラインゲームの時代さ、TRPGのサークルなんて誰も集まらなかったんだ、私も先輩達も勧誘を頑張ったんだけどな…」
そこまで言って、副長の顔が険しくなる
「そして「獅子の泉」の解散の日、当時アップデートされたばかりの「地下大空洞・深層」にチャレンジしたんだ…」
副長はさらに続ける
「クリアーできなかったんだ…、先輩たちは何とか私だけでも帰還できるようにと、頑張ってくれたけど、結局はB7縦14横13で、私だけを残しパーティは壊滅してしまったんだ」
ミノは呟く
「なるほどな…、自分だけではなく、先輩たちの「思い」もその冒険にはあるんだろう、やり直せないって気持ちもわかるな…」
副長は、ミノを見てほほ笑む
「まぁ私の感傷だよ、ハハハ、なんか話したらスッキリしたよ、やり直すのもありかもしれないな」
副長が無理やりに笑うのを見て、ユキはシンゴを見る
「そんなこと言わないでください副長さん、先輩も何とか言ってくださいよ…」
タフ、ミノ、ハッちゃんもシンゴを見る
「副長、今の話を聞いて気付いたんだが、、副長と共に、重要な物を救出することになりそうだな」
シンゴが何か考えながらそう答えると、副長は不思議そうな顔をする
「重要な物?」
副長がそう聞くと、シンゴはまず質問をする
「副長、「獅子の泉」の先輩達は、何とか副長だけは帰還させようと、頑張ったと言ってたよな?」
それを聞いて副長はコクリと頷く、シンゴはそれを見て話す
「それって、「獅子の泉」というサークルの、最後のエッセンスとして、副長を何とか守りたかったんじゃないか?」
それを聞いて副長は考え始める、それを見てシンゴはさらに続ける、
「そして、「獅子の泉」の先輩達が出したであろう、この救援要請は、
副長が救出されることで、「獅子の泉」の最後のエッセンスも救われるという、
「思い」あっての事なんじゃないか?」
副長はそれを聞いて、顎に手を当てる
「そうか、私が救出されることで、解散によって一度は失われた「獅子の泉」も救われるってことか…」
ユキは副長を見る
「これでは副長さんの一存で、やり直せませんね」
ユキにそう問いかけられ、副長は笑顔になり答える
「まぁ100%そうじゃないにしても、今の部長の解釈が、私が一番のめり込めるシチュエーションなのは間違いないね」
それを聞いてシンゴはニヤリと笑い、副長を見る
「お、いつもの副長が戻ってきたな」
シンゴにそう言われ、副長は苦笑いする
「全く…しょうがない人だ、とにかく…、まぁ救出されてあげるよ」
副長はそう言ってシンゴを見ると、シンゴは頭を掻いて、
「ああ、任せてくれよ副長」
シンゴはそう笑顔で答えると、ダイスを振り、
パーティは崩落個所から地下7階へ降りた。




